運用設計の教科書【改訂新版】 ~現場でもっと困らないITサービスマネジメントの実践ノウハウ
- 技術評論社 (2023年8月28日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (360ページ)
- / ISBN・EAN: 9784297136574
作品紹介・あらすじ
好評の『運用設計の教科書』の増補改訂版です。近年、ますます定着してきたクラウドサービスやアジャイル開発への対応を強化し、利用者の種類による運用設計の考え方の違いなどを追加。さらにNISC(内閣サイバーセキュリティセンター)やCSIRT協議会などのリファレンスを追加しています。その他、姉妹書である『運用改善の教科書』との連携強化、著者自身が本書を活用して研修やコンサルティングを実施した際のフィードバックを各所に反映した、運用設計ノウハウの決定版書籍となります。
感想・レビュー・書評
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運用設計の教科書【改訂新版】
~現場でもっと困らないITサービスマネジメントの実践ノウハウ
著:近藤 誠司
紙版
良書:IT運用管理者のために、実務者の目線で書かれたものだとおもいます。
改訂項目には、クラウド、セキュリテイ、アジャイル開発の追加とありますが、メインはセキュリティでしょう。
ずばり、運用保守を、①1次対応、②2次対応、③保守対応、とわけていて、オーソドックスで、安心感がありました。本書は、②2次対応に中心に、ハイライトされています。
本書は、5部からなっています。
①運用設計とはなにか 運用設計と、運用とは何かの解説
②フェーズから考える運用設計 システム構築と並行して、運用保守の内容をきめていきます
③業務運用 業務フローと、サポートデスクの運用
④基盤運用 いわゆるシステムサイド、パッチによるシステム変更、ジョブネット、監視、ログ、アカウント
⑤運用管理 運用設計、情報統制(インシデント、エスカレーション)、ナレッジ、定期報告です
個人的には、ITILとの対比などにもふれてほしかったとおもいますが、インプットと、アウトプットを明言する、ドキュメントの更新・推移など、エンジニアにとって、分かりやすい内容だとおもいます。
各章で気になったのは、以下です。
■運用設計 運用で守るルールを決めて、必要な作業を取りまとめ、管理するデータを決めていくこと
<運用設計の全体観>
・役割関連図・役割概要表・運用業務と役割分担マトリックス・COBIT成熟度モデル
<運用設計の分類>
・業務運用・基盤運用・運用管理
■運用設計 ウォータフォールでの運用設計のフェーズ
・全体
⇒ドキュメント分類と概要
・要件定義 システムに必要とされる要件を決める
>運用項目一覧
⇒役割体制図、役割分担相関図、役割分担サマリ
⇒要件定義時のヒアリング項目
⇒運用ドキュメント相関図
⇒運用回避、非機能要求グレード
⇒セキュリティ運用項目
⇒リスク管理方法
⇒運用工数算定 作業頻度、作業工数、運用体制
・基本設計 システムの基本的な仕組み、実現方法について決めるフェーズ
>運用設計書
>運用手順書
>運用フロー図
>運用項目一覧
⇒運用項目一覧の役割分担表
⇒優先度設定
・詳細設計 基本設計できめた内容を実際の設定値まで落とし込んで実装・構築を行うフェーズ
>ユーザ利用手順書
>運用手順書
>一覧
>申請書
>報告書
>運用項目一覧(修正)
>運用フロー図(修正)
⇒WBSの作成
・運用テスト 詳細設計で作成したドキュメントが運用上問題ないかのテストを行うフェーズ
>運用テスト計画書
>運用テスト仕様書
>運用手順書テスト仕様書
⇒合否判定と評価内容
⇒網羅性(分岐網羅、命令網羅)
⇒課題分類フロー
⇒課題管理表
・運用引継ぎ 運用テストで合格となったドキュメント一式を運用担当者へ引き継ぐフェーズ
>システム説明会
>運用テスト、運用ドキュメント、運用ルールの引継
>運用支援
⇒ドキュメント修正、運用改善
⇒監視パラメタ、チューニング
⇒運用担当者からの問い合わせ対応、障害発生時のサポート、初回運用立ち合い(初期流動)
■業務運用 発注者と、利用者、アプリ担当者と協力しながら設計を行う
・業務運用の設計 ユースケース、機能要件 ⇒ BPMNフロー図
・アプリ担当者とのレビュー
・発注者とのディスカッションによる、運用方針の決定
・決定事項の発注者との最終合意
・システム利用者管理 項目一覧
・運用項目一覧
・運用体制図(業務運用)
・BPMNフロー図
・システム利用開始フロー図
・設計項目ごとの成果物一覧および引継ぎ先一覧
・サポートデスク運用
>問い合わせ対応 一次回答、エスカレーション管理
>情報発信
>FAQの更新
>問い合わせとりまとめ、報告
⇒運用フロー図
⇒ヒアリングシート
⇒切り分けフロー
・PCライフサイクル管理
>貸出、故障対応、返却、棚卸、キッティング、マスタ更新
>マスタ更新フロー
>検証、代替機管理
■基盤運用 インフラに関する運用
>パッチ管理(定期、緊急)、パッチ適用ルール、フロー
>ジョブ・スクリプト(正常系、異常系、バッチ、自動化の範囲、設定)
>バックアップ・リストア(DR、対象、周期・世代、方法)
>監視設定(対象、http、シナリオ監視、インフラ(死活、SNMP,リソース管理、プロセス監視))
>ログ運用(障害対応、監査対応)
>アカウント運用(権限付与、払い出し、特権)
>保守契約管理(内容確認、利用者登録、EOL対応、ライセンス、利用容量の管理)
■運用管理 運用ルールや判断基準に関する設計
・維持管理とは、最高の状態にすることではなく、最適な状態にすること
・サービスレベルの設定 SLA,SLO,SLI
・セキュリティポリシー(CSIRT)
・継続性(ITサービス継続性方針書)
・DR(バックアップ、コールドサイト、ウォームサイト、ホットサイト)
・運用要員教育
・インシデント(問い合わせ対応、アラート、改善要望)の1か所での対応
・問題管理
・リリース管理
・構成管理
・ナレッジ管理(収集、選別、活用)
・定期報告(報告項目)
目次
1章 運用設計とは
1.1 運用と運用設計
1.2 運用設計の範囲
1.3 運用設計に大事な「3 つの分類」
1.4 本書で説明する運用設計のパターン
2章 フェーズから考える運用設計
2.1 プロジェクトの全体像
2.2 システム化計画
2.3 要件定義
2.4 基本設計
2.5 詳細設計
2.6 運用テスト
2.7 運用引き継ぎ
3章 業務運用のケーススタディ
3.1 業務運用の対象と設計方法
3.2 システム利用者管理運用
3.3 サポートデスク運用
3.4 PC ライフサイクル管理運用
4章 基盤運用のケーススタディ
4.1 基盤運用の対象と設計方法
4.2 パッチ運用
4.3 ジョブ/スクリプト運用
4.4 バックアップ/リストア運用
4.5 監視運用
4.6 ログ管理
4.7 運用アカウント管理
4.8 保守契約管理
5章 運用管理のケーススタディ
5.1 運用管理の対象と設計方法
5.2 運用維持管理(基準決め)
5.3 運用情報統制(情報選別方法、対応の仕組み)
5.4 定期報告(情報共有)
あとがき
参考資料
ISBN:9784297136574
出版社:技術評論社
判型:A5
ページ数:360ページ
定価:2800円(本体)
2019年09月05日初版発行
2023年09月09日第2版発行詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
超初歩的なことで、運用といっても業務運用、基盤運用、運用管理の3つに分類される。
うちでは一括りで担当しているけど、メンバー内で得手不得手があり、なんとなくの主担当は決まってそう。
運用管理についての認識が弱い。
SLOを決める前にSLIを示す必要がありそうだ。
DRやCSIRTに関する知識・浸透も必要だな(個人的に)。
またまだわからないことだらけだとわかった。
104冊目読了。
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改定前の書籍にはお世話になったので、リピート購入という感じで入手しました。
ITリテラシに自信がないにも関わらず、IT関連部署に異動になり、システム運用を担当することになったというレベルでも読み解くことができ、学びにつながると思います。(私自身はITエンジニアなので、根拠のない感想となりますが…)
用語の表現を厳選し、初学者の学びと実践を後押ししてくれる教科書だと思います。
巻末により専門的な学びにつながる資料も紹介されているので、システム運用って何すればよいのかわからないという方は、ここから始めるとよいかもしれません。