親ガチャという病 (宝島社新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784299027603

作品紹介・あらすじ

ネット発の流行語にみる
「息苦しい日本」の正体!

「親ガチャ」という言葉が話題を集めている。

まるでくじを引くかのように、生まれてくる子供は親を選ぶことができない。
人生が上手くいかないのは「ハズレ」を引いたせいだ――。

時に、そんな自虐や冷笑を含んだ思いも込められるというが、
そうした概念が多くの人の共感を集める背景にあるものとはいったい何なのか?

本書では、日本社会の表層に浮上しつつある違和感や陋習(ろうしゅう)、問題点などに着目し、
7つのテーマに沿ってそれぞれ識者が掘り下げる。


第1章 親ガチャという病
生きづらさのなかで固定化されゆく“自己像”
土井隆義(社会学者)

第2章 無敵の人という病
「真犯人」は拡大自殺報道を垂れ流すマスコミ
和田秀樹(精神科医、評論家)

第3章 キャンセルカルチャーという病
被害者への過度な感情移入が議論をシャットアウトする
森達也(映画監督、作家)

第4章 ツイフェミという病
フェミニズムを攻撃や誹謗中傷の「隠れ蓑」にしてほしくない
室井佑月(作家)

第5章 正義バカという病
スケープゴート叩きの裏に潜む「不都合な真実」
池田清彦(生物学者)

第6章 ルッキズムという病
「相手ファースト」で委縮し“素顔”を覆い隠す若者たち
香山リカ(精神科医)

第7章 反出生主義という病
「人生の虚しさ」の大衆化により蔓延している苦しさ
中島義道(哲学者)


「はじめに」より抜粋
生まれた地域や属性、性別などが、その人生に大きな影響を及ぼすことは間違いない。
けれど、「ガチャ」というあまりに無機質な言い方にショックを受ける人も少なくないはずだ。そこには、自らの運命をせせら笑うかのような自虐、諦めのムードが漂う。内に秘めたとてつもない悲しみをごまかしているかのようにさえ感じられる。日本を覆う、閉塞感や生きづらさ。そういったものが一種、病理のように「ことば」として社会に浮上している側面はないだろうか?

本書はそんな思いを出発点とし、令和ニッポンにおいて注目を集めている流行語を軸に、6人の識者にインタビューを試みた。第1章に限っては、「親ガチャ」にかんする論考をまとめ、大きな反響を呼んだウェブ記事「『親ガチャ』という言葉が、現代の若者に刺さりまくった『本質的な理由』」(現代ビジネス、2021年9月7日配信)を執筆した社会学者・土井隆義さんに寄稿して頂いている。

「時代を一言で象徴するキーワード」など、あるはずがない。
しかし、話題を集めている言葉を突破口に、その背景にあるかもしれない何かを手探りで捉えようとする試みに意義を見いだしたい。
本書が照射しようとするものは、日本を覆う「空気」の一片だ。

感想・レビュー・書評

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  • 【書評】『親ガチャという病』 流行語を通して日本の趨勢を知ることができる啓蒙的一冊 : 書籍 : クリスチャントゥデイ
    https://www.christiantoday.co.jp/articles/30810/20220413/oya-gacha-toiu-yamai.htm

    人生がうまくいかないのは誰のせい? 「親ガチャ」の背景 『親ガチャという病』 | BOOKウォッチ
    https://books.j-cast.com/topics/2022/04/08017725.html

    「『親ガチャという病』」の記事一覧 | PRESIDENT Online(プレジデントオンライン)
    https://president.jp/category/c03665

    親ガチャという病│宝島社の公式WEBサイト 宝島チャンネル
    https://tkj.jp/book/?cd=TD027603

  • 時にこういうライトな現代社会批評・対談を読むのは、現状の知識・認識をアップデートできて良いと感じた。

  • 図書館にて。
    何人かの書き手が親ガチャにまつわる文章を書いている。
    もう少しテーマが絞られているのかなと思っていたが、意外と広義の本だった。

  • 親ガチャ・無敵の人・キャンセルカルチャー・ツイフェミ・正義バカ・ルッキズム・反出生主義、といったネットスラングをキーワードとして、その背景にある病的な社会状況について、6名の識者にインタビューした。

    それぞれの言葉の背景について語られていること、なるほどで、こんな日本人で大丈夫なのか。。と暗くなりました。

  • ●スマホを持っていなければ、ひとりでいてもさほど辛くは無いのに、なまじ持っているばかりに一人きりが大変辛くなる。誰かとつながることができる状況にいるはずなのに、誰ともつながってもらえない。この時ほど孤独感が深まる事は無い。
    ●友人の数で、人の価値が図られるかのような錯覚に陥る。友人数などと言うものは、時々の巡り合わせによっても大きく左右されるものである。
    ●ネットがあるからこそ、それを活用して似通った仲間同士で固まり、その同質的な間柄だけで、時間と空間の制約を超えてつながり続ける若者が増えているのも事実です。
    ● イツメンから外されることを恐れ、その関係から外されないように振る舞うことに必死で、互いの内面を吐露し合う事は難しい。
    ●かつての若者たちが、見上げるような急な坂道を登り続けることができたのは、現在の若者たちより努力家だったからではありません。時代の強い追い風が後から吹上げ、後押ししてくれていたからです。
    ●不足しているのは、異質な他者との出会いです。社会設計の工夫次第で、出会いのチャンスを広げていく事はいくらでも可能なはずです。
    ●「拡大自殺」の報道を拡散するマスコミが原因。オーストリアのウィーンでは、地下鉄飛び込みの自殺の報道を自粛することで、激減したと言う。
    ●投薬の影響?抗鬱剤のSSRIが発売されてから急に増えたとする説は確かにある。コロンバイン高校、附属池田小事件、秋葉原通り魔事件。皆服用していた。
    ●日本は形式的には言論の自由があると言いながら、思想の自由度はかなり低い。むしろ中国より日本の方が深刻なんじゃないか。
    ●ツイフェミ。あたかもフェミニズムであれば、誹謗中傷する事は、許されると言うような感覚で、フェミニズムを隠れみのにして欲しくない。
    ●今は、ごくありふれた、日常の中、地べたを這うようなリアリティーの中で、生きることのしんどさが肌感覚で共有されている気がします。実際にコロナ禍では、女性の自殺率が上がりました。

  • 「親ガチャ」についての論は数ある章のなかで1つのみ。
    賛同できるか否かについては置いておいて、いろいろな人の意見をつまみ食いできるという点でのみ見ると良書。

  • それぞれ考えさせられる話だった。
    相手を不快にさせないために、映える写真をアップし、親ガチャと言う言葉でオブラートに包んで深刻な自分の状況を軽く見せる。

    コスパ、タイパという言葉が流行り、効率を追い求めて自分達を追い込んでいる世界で、たぶん私たちは立ちどまり、論破ではなく、対話していくしかないんじゃないか、という気がしてきた。

    世界は繋がっているのに、そこに自分が困っていることを知っている人はいないし、だから助けてくれる人もいない。それは、たぶん、物凄い孤独だと思う。

  • 親ガチャ、という言葉は刺激が強い。けれど、どこか、中空だ。親は選べないけど、こうした私がいるのは、先祖から延々とつないできた命の営みの必然だったりする。問題は、この言葉が一見生まれによる不運さ、を切り取っているようで、強烈に親ガチャで決まるような社会は生きるに値するのか? という問いを内包しているのではないか、ということだ。生まれに着目すれば、次にでてくるのは育ち。育ちとは何か。環境と引き継いだものの影響の及ぼしあい。
     しかし、親ガチャで決まるということは、この間の一切合切が、省略されたレールの上に載っているということか。透明カプセルのなかで、社会そのものをスルーする。そこにあるのは、うまくやっていくために意図的にコントロールする仮面をかぶった自己と、そうでない自己の強烈な解離がおそらくあるのだ。
     この本は池田清彦、中島義道、和田秀樹、室井佑月、森達也、香山リカ、土井隆義さんの小論集。視点が、それぞれ少しづつ違っていて、不思議なトートロジーの尾を踏むような現象が同時多発的にみられているようだ。これは何を意味するのだろうか。たぶん、突破力の圧倒的な不足なのではないだろうか。

  • トレンディなキーワードを切り口に有識者が語る。親ガチャ、無敵の人、ルッキズム、キャンセルカルチャー、反出生主義など。読めばバランスの取れた意見が多く、一つ一つはあっさりとした内容だが、考えさせられる。

    室井佑月が、性的搾取という言葉に対し、同性間でも意見が分かれる事を書いている。グラビアやホステスみたいな職業の是非を問うもので、女性にも賛成派と反対派がいるという事だ。こうした設問に対し、いちいち決着をつける必要はない。世の中に、両方の意見があって良いのだ。にも関わらず、正義バカと池田清彦が言うような、ポリコレの名を借りた、匿名のルサンチマンが奇妙な正義感と責任感で世直しを演じ、どちらに絞ろうと主張する。足りないのは知性。正義バカ、とはよく言ったものだ。

    無敵の人に触れたのは和田秀樹。古くは、秋葉原通り魔事件、附属池田小学校事件など。これらは自爆覚悟の拡大自殺なので、マスコミも自殺報道のガイドラインに従い取り扱うべきだと。まあ、これも分かる気がするが、こうした事件を報じないわけにはいかないだろう。無敵の人を作らないためにどうするか、しようもない偏差値思考、生産性序列主義から、人間らしく生きられる社会を目指すべきだろう。親ガチャとか子ガチャなどと嘆く事になる採点基準、つまり社会制度と通念こそ、諸悪の根源である。

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著者プロフィール

池田 清彦(いけだ・きよひこ):1947年東京生まれ。生物学者。東京教育大学理学部生物学科卒、東京都立大学大学院理学研究科博士課程生物学専攻単位取得満期退学、理学博士。早稲田大学、山梨大学名誉教授。専門の生物学分野のみならず、科学哲学、環境問題、生き方論など、幅広い分野で100冊以上の著書を持ち(『構造主義科学論の冒険』 講談社学術文庫ほか)、フジテレビ系「ホンマでっか!?TV」等、各メディアでも活躍。

「2024年 『老後は上機嫌』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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