【2023年・第21回『このミステリーがすごい!』大賞受賞作】名探偵のままでいて (『このミス』大賞シリーズ)
- 宝島社 (2023年1月7日発売)


- Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
- / ISBN・EAN: 9784299037633
作品紹介・あらすじ
第21回『このミステリーがすごい! 』大賞受賞作
「認知症の老人」が「名探偵」たりうるのか? 孫娘の持ち込む様々な「謎」に挑む老人。日々の出来事の果てにある真相とは――?
認知症の祖父が安楽椅子探偵となり、不可能犯罪に対する名推理を披露する連作ミステリー!
<最終選考委員選評>
●レビー小体型認知症を患う老人が安楽椅子探偵をつとめる〝日常の謎〟系の本格ミステリー連作で、ラストがきれいに決まっている。(大森望/翻訳家・書評家)
●マニア心をそそられる趣向が凝らされており、古典作品へのオマージュも好印象。ディーヴァーのリンカーン・ライムのヴァリエーションのようだ。(香山二三郎/コラムニスト)
●キャラクターが非常に魅力的。彼らの会話がとっても楽しい! 全体を通しての空気感、安定感が秀逸でした。魅力的な物語を書き続けていける方だと確信しました。(瀧井朝世/ライター)
【あらすじ】
楓は、小学校教師をしている27歳の女性。彼女の祖父は素晴らしく頭の切れる人物だったが、71歳となった現在、認知症を患い介護を受けていた。「レビー小体型認知症」だったため、幼児退行するようなことはなかったものの、「青い虎が見える」といった幻視や記憶障害などの症状が現われているらしい。しかし楓がある時にちょっとした謎を持ち込むと、祖父はそれに対する解答を語ってくれたのだ。かつての知能と、レビー小体型認知症特有の症状とによって——―。以降、楓は身辺で何か事件が起こると、祖父のところへ相談に行くのだった。やがて、彼女の人生に関わる重大な事件が……。
感想・レビュー・書評
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間違いなくミステリーではあるけど、ミステリーを期待して読むと少し肩透かしを食らった気分になるかもしれません。
認知症を患う老人(主人公楓の祖父)が自宅で、娘が持ち込む謎を解決する、という設定にどうしても臨場感がなく、机上で淡々と進んでいるだけの話に見えてしまいました。謎解決の種明かしも衝撃弱めでミステリーとしてはあまり好みではなかったです。
個人的には、楓と祖父の周りの人間関係の描かれ方が素敵でそこが好みでした。
辛口コメントになりましたが、とても読みやすく万人受けする作品かな、とは思います。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
話題の『このミステリーがすごい!』大賞受賞作を読んでみました。
「いいねポイント」として、(女性ウケ期待度大と思われる)美しい表紙、タイトル、各章完結の読みやすさ、認知症の祖父が探偵という斬新な視点、きれいなラストと盛り上げ方‥。これらは大いに評価できる点と感じました。
「う〜んポイント」として、上述のレビー小体型認知症と探偵(両立は有り得るのか?) 人見知りで口数が少ない設定(どこが?)の楓と同僚の岩田が小学校教員?(設定に無理! 祖父も元校長!) 唐突に起こる事件(あ、これは当たり前か‥)、全て祖父が解決(幻視?透視?) ミステリー通ではありませんが、諸々の疑問が残りました。
という訳で(どういう訳?)、本書を読みながら、愉しめた部分と疑問をもち納得していない部分がせめぎ合っている状態だった、というのが本音です。最後のエンタメ性で、及第点まで引き上げたかというイメージが拭いきれません。
『このミス』大賞創設の意図が、「面白い作品・新しい才能を発掘・育成する新しいシステムを構築すること」にあるらしいので、そもそも当然ながら、完成度の高い作品を期待するのは筋違いかもしれませんが‥。
辛口のレビューになってしまったことを反省しつつ、著者である小西マサテルさんの、今後の更なる飛躍を祈念したいと思います。 -
自分がこの本を手にした時に想像していたよりも面白い作品でした。物語の設定上、認知症を患う祖父が探偵役となり、謎を解き明かすのは大方予想がついていましたが、個人的に良かったと思うのは、短編の構成かなと思います。
短編の構成として、「日常パート」→「出題パート」→「解決パート」となっており、出題パートを読みこめば、主人公と同じ気持ちで謎に向き合うことができるため、謎に対する挑戦心が掻き立てられすごくワクワク・ドキドキ出来ました。そして物語の結末も読者への挑戦状のようになっており、最後までミステリー好きを楽しませる構成だなぁと思いました。
短編ごとだけ切り取ってみると、とても好きな作品でしたが、物語の最終話の事件が少し期待してたのとは違ったかなぁと思ったので、評価は星4です。もちろん前述した最後の挑戦状の部分は、例外的に1番お気に入りのポイントです! -
かつて小学校の校長をしていた憧れの祖父がレビー小体型認知症になった。孫娘の楓は唯一の肉親を支えながら、身の回りで起きた謎を語る。すると、祖父の知性は眠りから目覚め──。安楽椅子探偵ものの連作短編ミステリ!
2023年 第21回『このミステリーがすごい!』大賞の大賞受賞作。ナイナイの岡村さんが絶賛!という帯に興味をそそられた。調べてみると、オールナイトニッポンの放送作家として繋がりがあるということでなるほどと。読書量の深さが伝わってくる内容に、ミステリのおいしいところを丁寧に盛り付けてくれている。読みやすい中にもいろいろ隠し味が仕込んであり、ミステリファンにもオススメ。
『緋色の脳細胞』
楓がネットの中古書店で買った瀬戸川猛資(せとがわたけし)の評論集。その中に著者の逝去を伝える切り抜きが4枚も挟まっていた。その謎を解くため、祖父へと相談する楓。半年前からレビー小体型認知症を患っていた祖父だったが、そこから仮説という名の物語を作り上げていく。
レビー小体型認知症の特徴と推理が入り混じり、幻想と現実の波打ち際という景色を描き出したところが面白い。ここでの物語は導入部分とあってジャブといった印象。切り抜きについての根拠が弱いのと、どうして書店が見過ごしたのかという部分は気になる。
『居酒屋の“密室”』
祖父が常連だった居酒屋・はる乃。楓は同期の小学校男性教師・岩田に、そこで殺人事件があったことを知らされる。現場に居合わせた岩田の高校時代の後輩・四季。彼から聞いた事件の顛末は、トイレで密室殺人が起きたというもので──。
現場に居合わせていないのに、目の前に見るかのように現場を復元していく祖父の推理力たるや。なんでそうなった?!って細かいツッコミどころはあれど、あくまで「物語」であれば納得できる。四季はやなやつ!やなやつ!って感じで、ぼくだったら理由をでっち上げて帰るレベル(笑)
『プールの“人間消失”』
楓が3年ぶりに会った友人・美咲は、祖父が校長を務めていた小学校に赴任していた。そこに新卒で入ってきた通称「マドンナ先生」について相談を始める。楓は彼女がプールに飛び込んでそのまま姿を消したという話を聞き──。
作者が仕掛けたトラップにまんまと引っかかるという。そこまではなるほどって感じだったんだけど、解決は強引。いや、それって解決なのか?それこそ闇の勢力の力を借りなければ破綻しそうな計画では…。それに祖父がこだわる「物語」をあんな風に扱うのは悪趣味ではないかと感じてしまった…。
『33人いる!』
楓が自らのクラスで起きた不思議な事件の話を祖父へと切り出した。怪談大会をした後、全員で32人の生徒のはずが、いないはずの33人目の声を聞いたと生徒が騒ぎ出して──。
怪談要素も絡ませつつ、ミステリにしっかり落とし込まれた20ページほどの物語。そこに気づくのかと祖父の推理力には脱帽。ただ、あのやり方は解決じゃなくて逆効果になりかねないのでは…。どの物語も自分とピントの合わなさを感じてしまう…。
『まぼろしの女』
小学校のマラソン大会に備えるため、岩田に誘われて練習をすることになった楓。しかし、楓はここ一か月間、誰かの視線や無言電話に悩まされていた。そのこともあって共同練習は中止に。岩田は一人で走っていると、河川敷で刺された青年を見つけて助けようとするが、犯人だと間違われて逮捕されてしまう。一部始終を目撃したはずのウォーキングの女性は、なぜか通報もせず姿を消してしまい──。
仲間が誤認逮捕されてしまうというのはミステリの王道だよね!なぜ顔なじみの女性は助けてくれなかったのか。そもそも被害者の青年と、彼を刺した中年男の関係性とは?そんなん考慮しとらんよと言いたくなる祖父の推理力だった。さらに楓や岩田の過去や人間関係にもスポットライトが当てられ、物語は最終局面へ。
『ストーカーの謎(リドル)』
岩田、四季と三人で飲み会を開いた夜、ストーカーからの電話を受けた楓。
「準備はすべて整った」
その意味を楓は知ることになる。果たして物語の行方とは──。
すべての糸が寄り集まって紡がれた物語の終点と始まり。祖父の推理力に幻惑され続けた話だったなと。「名探偵のままでいて」っていうか、心配しなくても思考も行動も名探偵すぎる。あのシチュエーションになったのは都合が良すぎない?!とかツッコミポイントはあるものの、事件は奇麗に解決してよかった。ここからの難事件は、読者の紡ぐ物語へ。
それにしても、四季の第一印象悪すぎなのと、真意がいまいちよくわからないのが残念。作者のミステリ愛にあふれている作品なのに、こき下ろすようなセリフを言わせなくてもいいのになあというところに引っかかった。 -
主人公の祖父が謎解きを前にして見せる昔の目の輝きと、レビー小体型痴ほう症の特徴である幻覚とが、混ざりあって、事件の答えを導きだして行きます。
奇抜なトリックも展開も無いけれど、使い込まれたミステリーの要素をうまく取り込んで、アンティークのようにしっとりと落ち着いた雰囲気の作品に仕上げています。
四季の毒舌ぶりがテンポ良く、好きです -
Amazonの紹介より
かつて小学校の校長だった切れ者の祖父は、七十一歳となった現在、幻視や記憶障害といった症状の現れるレビー小体型認知症を患い、介護を受けながら暮らしていた。
しかし、小学校教師である孫娘の楓が、身の回りで生じた謎について話して聞かせると、祖父の知性は生き生きと働きを取り戻すのだった!
そんな中、やがて楓の人生に関わる重大な事件が……。
第21回『このミステリーがすごい!』大賞受賞作
特殊な認知症を患った祖父が謎を解くという斬新な構成が面白かったです。
事件について語るだけでなく、ミステリーの古い作品もいくつか登場し、ミステリー(特に古い作品)についての談義も描かれていて、ミステリーファンにはたまらないかなと思いました。
個人的には、わからないミステリー小説が多くあったのですが、作家さんのミステリー愛が伺えました。
それらを話す祖父と孫との会話が、側から見たらほっこりとした雰囲気で、心が温かくなりました。
多少強引な部分もありましたが、日常に潜む謎を解き明かす祖父の溌剌さが伺えました。
連作ミステリーになっていて、同じリズムで終わるのかなと思いましたが、後半からは空気感が変わり、衝撃的な真相に驚きました。
なぜ、両親が登場しないのか?家族に秘められた謎も明らかになっていくので、飽きさせない構成で楽しめました。 -
☆4.5だけどオマケで5
連作短編で、
各話ごとの謎解きも面白いのですが、
徐々に明らかになっていく
孫娘の生い立ちや周りの人との関係から
目を離せなくなりました。
ラストは、本編中にも出て来た
「女か虎か?」のようなリドルストーリー
どちらを選ぶのだろうか… -
ヤバい❗️
これめっちゃオモシロかった(^-^)v
ミステリー好きにはたまらん作品 -
過去の名作ミステリやドラマ、果てはコミックまで
作中で何度も出来て読みやすい。ミステリよりも連作短編で登場するキャラが魅力的。楓が持ってくる謎に関わるキャラは最終場面でハッピーな登場を果たす。
この先、物語はどう続くんだろう?とハッピーな想像力を膨らませることが出来る作品。面白いです!
著者プロフィール
小西マサテルの作品
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