- Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
- / ISBN・EAN: 9784299062642
作品紹介・あらすじ
2025年
第23回『このミステリーがすごい!』大賞受賞作
クロワッサン、フランスパン、シナモンロール、チョココロネ、カレーパン…
焼きたてのパンの香りが広がる〈日常の謎〉ミステリー!
選考委員絶賛!
「全体を包む空気感が魅力的」――大森望(翻訳家・書評家)
「おいしそうなパンの魅力で読ませる」――香山二三郎(コラムニスト)
「読者のもてなし方を分かっている」――瀧井朝世(ライター)
「決め手は、この味わいの心地よさだ」――吉野仁(書評家)
(あらすじ)
大学一年生の市倉小春は漫画家を目指しつつ、大阪府豊中市にあるパン屋〈ノスティモ〉でアルバイトをしていた。あるとき、同じパン屋で働いている親友の由貴子に、一緒に行くはずだったライブビューイングをドタキャンされてしまう。誘ってきたのは彼女のほうなのにどうして?
疑問に思った小春は、彼女の行動を振り返り、意外な真相に辿りつく……。パン屋を舞台とした〈日常の謎〉連作ミステリー!
感想・レビュー・書評
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みなさんは、クロワッサンの起源をご存知でしょうか?
クロワッサンは、17世紀、オーストリアがトルコ軍による侵入を防いだことを記念して作られました。そして、トルコ軍の侵攻に気付いたのは、翌日の仕込みをしていた街のパン屋さんだったのです。
と、いうわけで、このお話は、パン屋さんを舞台とするミステリーです。謎、ミステリーは、どこででも、パン屋さんででも、起こるのでした。
このお話の主人公 市倉 小春(いちくら こはる)ちゃんは、大学1年生。東京から大阪の大学に進学しました。小春ちゃんは、豊中市に住んでいて、アパートから3分のパン屋さん『ノスティモ』でアルバイトをしています。パン屋さんでアルバイトをしている一番の理由は、売れ残りのパンがもらえるからです。
『ノスティモ』のオーナー店長は、40代半ばの堂前(どうまえ)さん、フランスで修業を積み、各種の受賞経験のあるパン職人です。女性社員の福尾(ふくお)さんは、26歳、関西出身の小柄な人で、パンのうんちくをいろいろ披露してくれます。パンだけではなくケーキも製造している『ノスティモ』は、カフェスペースがあり、オープンキッチンになっていて、ガラスの向こうでパンを作っているところを見ることができます。
そんな『ノスティモ』で起こる、小さな謎の数々が描かれています。
見過ごしてしまえば、なんということはない日常の謎ですが、胸にちょっと引っかかることってありますよね。そんな謎を小春ちゃんが、繊細な観察眼で見つめ、緻密に解き明かしていきます。
『ノスティモ』で作られるパンの製造過程が丁寧に描写され、焼き立てパンの香ばしい匂いが脳内に満ちていきます。
焦げたクロワッサンとバターの香りが口いっぱいに広がる第1章「焦げたクロワッサン」に始まり、第2章「夢見るフランスパン」、第3章「恋するシナモンロール」、第4章「さよならチョココロネ」、第5章「思い出のカレーパン」と続き、大学2年生になった小春ちゃんと周りの人たちのことを描くエピローグで幕を閉じます。
甘酸っぱい青春の一コマに、芳醇なパンの香りが加わり、小春ちゃんの大阪での学生アルバイト生活が積み重なっていきます。マンガ家になる夢を持ち、新人賞に応募している小春ちゃん。そちらの先行きも気になるところです。
青春を懐かしむ年代の方にも、これから青春を謳歌していこうという方にもオススメします。新感覚 ブーランジェリー・ミステリーのはじまりです♪
作者の土屋うさぎさんは、現在、漫画家さんとして活躍しておられます。この作品が、第23回『このミステリーがすごい!』大賞を受賞した後、土屋さんが東京のFMラジオ J-WAVEのTokyo Morning Radioに出演なさり、別所哲也さんとお話しているのを聴いてから、本の発売を楽しみに待っていました。読みやすく気持ちの良い作品でした。読めてよかったです♡
『このミステリーがすごい2025年版』の巻末には、〈『このミス』大賞NEWS〉「土屋うさぎさん 一問一答」が掲載されています。その最後の質問は「読者の方々に一言!」で、土屋うさぎさんの答えは「パン派の方も米派の方も、みんな笑顔にできたら幸いです!」とあります。
みなさんが本作を読み終えた時、お顔に前向きな微笑みがたたえられていることを願っております♡ -
大阪のパン屋を舞台にしたコージーミステリー。
近所に住み、このお店でバイトする大学生で漫画家志望の小春が主人公。「パン屋」も「大学生が出てくる日常の話」も好きなので、私にとっては設定だけでポイントが高かった。
パン屋で起こるちょっとした謎解きの話。バイトの小春だけでなく、パン屋の同僚たちもそれぞれキャラ立ちしていて、仲良しなのも良い。章立てはカレーパンやシナモンロールなど、パンの種類でつけられている。各話でそれぞれのパンに関する蘊蓄もあり、そうした小話も興味深かった。
著者の土屋うさぎさんは本作で2025年「このミステリーがすごい!」大賞を受賞。東京都府中市で育ち大阪大学に通い、パン屋でのバイト経験があって現在は漫画家とのこと、主人公の小春は著者自身がモデルなのだろう。本業の漫画のほかに小説も書いてしまうなんてすごい。著者のこれまでの経験がぎっしり詰め込まれた話なのだと思う。
パン屋が舞台の作品をほかにも読みたくなった。 -
書店に行った時に、新刊書のコーナーで「大賞受賞作」の文字と装画の可愛い女の子(大学生とのこと)が目に入った。なんとそれは本の題名より大きい文字。一体何の賞かと思ってみたら、「このミステリーがすごい!」大賞とのこと。過去には海堂尊や私の好きな中山七里も受賞している。更に良く見ると、帯に書かれてある選考委員絶賛!のスタンプの所にSFの大森望の名前があった。え?この本、ミステリーの本だよね、どういう事?それと、他の選考委員もコラムニストにライター。大丈夫か、この賞。裏側のそでには歴代(第11~22回)の受賞者が書かれてあり、辛うじて数名の方の名前を知っていた。SF作家だと思っていた安生正もあり、SFとミステリーの二刀流と言う事なのか。
作者の「土屋うさぎ」さんは漫画家、つまり漫画家と作家の二刀流だ。顔出し禁止のようだが、自画像が公開されている。え?本当に漫画家?それと、装画(表紙)の可愛い女の子は出水ぽすかさんの作で作者のものではない。扉絵は作者の作とのことだが、パンと封蝋みたいなイラストがそうなのだろうか。あとちょっと残念なのは、あとがきの代わりに選考委員による選評が載っていること。しかも、他の最終選考作品の選評まで載っている。折角のデビュー作の記念すべき本なのに、これでは選考ファーストのイメージが強すぎる。
前段が長すぎたようだ。さて本の内容に話を変える。全体的にはガチのミステリーではない。人が一人も死なないのは良い事。ハッピーエンドばかりでほっこりしている。映像化の際には、ゆうちゃみをレナ先輩役に配役して欲しい。そして、主人公の市川春子(私の手元には「宝石の国」がある)、ではなく市倉小春の推理力があまりにも凄すぎる。ほんのちょっとした事から様々な推理をパンのように膨らませ、それらパンをいっぱい作って問題解決に繋げる。この異常なまでの推理の膨らませ方、これって誰かに似ていると思ったら、本の中盤あたりではたと気が付いた。右京さんだ!相棒の杉下右京警部殿だ!杉下右京の名台詞「すいません。私の悪い癖で、どうも細かい事が気になるんですよねぇ。」このことに気が付いてからは、市倉小春を杉下右京と頭の中で切り替えて読むと実にしっくりする。あくまでも右京さんの推理に関して言及しただけで・・・市倉小春の配役が水谷豊ということは絶対にあり得ない!でも、面白いかも。「謎の香りはおっさんずパン屋から」という番組はどうかな。パンの香りに加齢臭が加わると新しいメニューができるかも・・・ないな。
次回作は独立した単行本での出版を希望。また、土屋うさぎさんの漫画も機会があれば読んでみたい。 -
ミステリーだけど、さくと読めて、気分よく終わる事ができるストーリー。
もっと、パンの美味しさがあると良かったな。 -
このミス大賞を久しぶりに読んでみようと思って発売日に買って今日一気読みしました。
日常の謎、かつ短編集というのもあってミステリー要素は弱め。このミスの過去作品としては私の好きな「珈琲店タレーランの事件簿」に近いです。
連作ならではの章ごとにテーマと対応するパンがあって、それぞれのパンの由来に沿った展開など豆知識も得られるパン小説になっています。
本格的なミステリーをお求めの方には少し弱いかも…と思います。本格的なミステリーを読んで疲れたけど、箸休めもミステリーが良い!って人におすすめできるかなと思います。 -
第23回「このミステリーがすごい!」大賞受賞作。パンとミステリの掛け合わせが思いの外軽やかで、序盤は若干の食い足りなさを感じたりもしましたが、心地良い読後感。作者自らの経歴を活かしたキャラクター設定もチャーミングで魅力的。明日パン屋に行こう。
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Amazonの紹介より
クロワッサン、フランスパン、シナモンロール、チョココロネ、カレーパン…
焼きたてのパンの香りが広がる〈日常の謎〉ミステリー!
大学一年生の市倉小春は漫画家を目指しつつ、大阪府豊中市にあるパン屋〈ノスティモ〉でアルバイトをしていた。あるとき、同じパン屋で働いている親友の由貴子に、一緒に行くはずだったライブビューイングをドタキャンされてしまう。誘ってきたのは彼女のほうなのにどうして?
疑問に思った小春は、彼女の行動を振り返り、意外な真相に辿りつく……。パン屋を舞台とした〈日常の謎〉連作ミステリー!
第23回『このミステリーがすごい!』大賞受賞作
殺人といった暗めな内容ではなく、日常生活で起きた疑問に思った出来事を解いていくライトなミステリーになっています。
ただ、推理を披露する場面では、意外と主人公の推理力が発揮されていたので、ちょっと驚きでした。今迄の相手の言葉を見逃さず、後に伏線回収として使われていたので、侮れませんでした。
全5章の連作短編集で、それぞれ一つの出来事が登場し、それを主人公が解決していきます。
第1章では、あらすじに書いているドタキャン事件が描かれているのですが、気楽な気持ちで読んでいた分、推理を発揮したときには、「これも伏線だったんだ」といったものが見事に回収されていたので、第1章を読んだ時には凄いものを読んだなと思いました。
それぞれの出来事としては、コーヒーをこぼしたり、フランスパンを作る時失敗したり、盗難に遭ったりと比較的軽めなのですが、主人公のパン屋のバイトが、調べていく中で集めた情報を元に、それらを駆使して、解決していきます。
物語の舞台がパン屋ということもあり、パン屋での仕事内容や登場人物のキャラの強さも魅力的でした。
各章には、それぞれの章で使用されたパンにまつわる一口メモが書かれています。直接、その情報が小説の内容と関係しているわけではありませんが、上手い具合に物語と調和されている印象があって、面白かったです。
クロワッサンやカレーパンなど色んなパンが登場するので、段々と食べたくなりました。
ミステリーの方も、読んだ後ほっこりとした気持ちになりましたし、登場人物みんな幸せな気持ちになるので、読んでいて心が温かくなりました。 -
日常のほっこりな美味しいパンと人々の物語
その中にちょっとした謎があってそれを漫画家志望の主人公が推理して行く
人が死なないミステリーでした -
●読前#謎の香りはパン屋から
ミステリーはあまり読むことないのだが、『このミス』大賞は読むことにしている。パン屋が舞台のミステリー、いったいパンがどのように絡んでいるのかにも興味がわく。食に関する本は楽しめないことが多いが読んでみよう
https://mnkt.jp/blogm/b250110a/
レジのお姉さんの、「こちら、焼き立てですので、紙袋にお入れしますね〜!」という言葉に満足感いっぱいで頷き、心でガッツポーズしてお店を出るのでした♡
バスの中で放たれる芳醇な香を自慢げにお裾分けして、にまにましながら帰宅を急ぐのでした。
〜みのりん、パン屋さん物語〜