魔女裁判の弁護人 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)

  • 宝島社 (2025年6月4日発売)
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本 ・本 (384ページ) / ISBN・EAN: 9784299063380

作品紹介・あらすじ

裁判にかけられた少女を救うため
魔女の不在を証明せよ!

(あらすじ)
16世紀の神聖ローマ帝国。法学の元大学教授のローゼンは旅の道中、ある村で魔女裁判に遭遇する。
水車小屋の管理人を魔術で殺したとして告発されていたのは少女・アン。法学者としてアンを審問し、その無罪を信じたローゼンは、村の領主に申し出て事件の捜査を始めるが――。
魔女の存在が信じられていた社会を舞台に、法学者の青年が論理的に魔女裁判に挑むリーガルミステリー!

感想・レビュー・書評

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  • 魔女裁判に論理で立ち向かう話。科学捜査は見込めないし、村人の証言は有罪ありきのものしかない。そんな中でも証拠を積み重ね、一つ一つ論証していく。なかなか面白い試みだと思いますし、実際面白かった。あと、文章のテンポがいいです。
    本作を踏まえてのローゼンとリリの次の物語を読んでみたいですね。

  • 舞台は16世紀の神聖ローマ帝国。旅先の村で魔女裁判に居合わせた法学の元大学教授であるローゼンが魔女として告発されたアンの弁護をすることに。魔女裁判という過酷な状況をどうやって覆すのか…アンが無罪である材料を提示しても、痛い所をついてくる博識な領主もいて、魔女裁判の理不尽さがありつつ、論理的な応酬もあって楽しめた。

  • 普段あまりミステリーは読まない派が、中世魔女裁判を法医学の観点から弁護する設定に惹かれて購入
    見事に騙されました(笑)

    かつての恋人的な女性を魔女裁判で失った主人公(学者)は、彼女の義妹と、魔女の疑いをかけられた女性を助けるために奔走する

    旅の途中に立ち寄った村では、まさに魔女裁判が行われていた

    疑惑をかけられた少女は
    ・母親が薬師で魔女の疑いで処刑される
    ・魔女の娘は魔女だ
    ・何もない空間に話しかけている
    →幼少期特有のイマジナリーフレンド?

    ざっくりいうとこんな嫌疑で、最終的に冤罪を証明してハッピーエンド…? かと思いきや、彼女は本当に魔女で主人公が去った後、母親の恨みを晴らすべく村人全員焼き殺して終わりっていう最後のどんでん返しがすごかった。魔女ほんとにいるの!?っていうオチ( ・ᴗ・̥̥̥ )

  • 魔女狩りが横行していた時代、魔女の疑いをかけられた少女を救うため、元大学教授がその知識を活かして颯爽と謎を解き明かす……という訳ではなく、まあ何とも泥臭い感じの謎解きに。
    元々魔女だと決めつけてかかっている村人ばかりという完全アウェーの状態で、自分の行動でさらに首を絞めて窮地に陥るのだから、よくもまあ裁判にまでこぎつけられたなと思う。
    颯爽さはかけらもなく、何なら力技である。

    裁判でひっくり返すのは面白かったが、その裁判で明らかになったことにも靄る部分が。
    と思っていたら、最後の最後に種明かし。
    個人的にはこの種明かしがいただけなかった……推理ものでは禁じ手では。
    お陰ですっかり冷めてしまった。
    結局はファンタジー落ちなのか……残念。

  • 細かな違和感は全て最後の為にある

  • 「このミス」大賞隠し玉として刊行された本書は、十六世紀神聖ローマ帝国を舞台としたミステリ。魔女の疑いをかけられた少女アンを救うために、法学者ローゼンが弁護人として奔走する。
    そう、奔走するのだ。本格ミステリお馴染みの頭脳の探偵ではなく、足で情報を集め、村の人間から魔女の疑いをかけられた少女の無実という、自身の信じる真実を見付け出していく。その過程はRPGのように行きつ戻りつだが、その都度に事件の様相は変化し、読者に朧ながらその形を提示していく。この行きつ戻りつの移動距離が大きいほど、事件の形が変容する構成はとても王道的だ。
    足の探偵だと先に記したが、物語後半、ローゼンが村人を集めて推理を開陳する場面も、王道的な本格ミステリ的で好もしい。ただ、その推理は幾分と杜撰な個所があり、ミステリ好きは作者の力量を疑ってしまうかもしれない。だが、すべての違和感は最終局面への布石であり、最後の回収は好悪別れるだろうが、手際は鮮やかだ。
    登場人物の名前がカタカナであったり、中世の海外が舞台のため、食指が伸びない人も多いだろう。ミステリはもちろん、平野啓一郎の「日蝕」なども好きな私は、この手の世界観に拒否反応はあまりない。ただ、現代でないと読まない人間がいるのも知っている。でも、舞台設定上、現代的ではないと思われがちだが、実に現代性を持った作品だ。ネットでは魔女裁判が日夜至るところで開廷され、炎上という火刑が魔女を晒しものにする。また、フィルターバブルに包まれた人間は、自身の見たいものしか見ることが出来ない。読後の読者ならば、そのことは良く分かるだろう。
    そして、被害者が加害者となる展開も、抑圧された弱者が差別主義の加害者となる、悲しき負の連鎖の構図と捉えることが出来る。『神罰とレトリック』を読んだ時も感じたが、作中世界とは関係なく、君野新汰はポストトゥルース世代の作家である。

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