- Amazon.co.jp ・本 (322ページ)
- / ISBN・EAN: 9784305705921
作品紹介・あらすじ
和文の基本原理を根源的に解き明かす書。
言語表現を分析するとは、どういうことなのだろうか。
本書はその格好の入門書である。
和歌を核として発展した仮名文を「話す側が構成を整えていない文、読み手が先を見通せない文」と定義。こうした「句節をつぎつぎと継ぎ足して構成される形」の構文を〈連接構文〉と名づけ、和文の基本原理に据える画期的な提言。
序章で『枕草子』の冒頭部分の表現を例に、設定する課題や接近の方法を提示。第一章から五章までの各章で『古今和歌集』の和歌を対象とする韻文の表現を解析し構文を明らかにする。第六章でそれらを総括。増補版刊行の際に加えた第七章では、『枕草子』の冒頭部分に再び挑み、「春はあけぼの」のあとに「いとをかし」を補うという俗説を原理的に否定した。
同時刊行する『みそひと文字の抒情詩 古今和歌集の和歌表現を解きほぐす[新装版]』は本書に提示した新しい考えを裏づけていく書である。
【古典文学作品の注釈書には、目を覆いたくなるほど見当はずれの注記や解説があまりにも目立ちすぎる。テクストの語句や表現を理解するうえで有用な情報を提供することが注釈書の役割であるはずなのに、他愛もない旧注の無批判な受け売りやアドホックな思いつき、あるいは、古典文法に呪縛されて日本語話者に健全なセンスが麻痺したツジツマ合わせなどに満ち溢れている。例外はきわめて少ない。対象とする作品がクリエイティヴであるように、注釈もまたクリエイティヴでなければならない。そのためには、頭を使うことが不可欠である。
因習的なもう一つの注釈書が、つぎつぎと刊行されているのは、近代的な研究領域と違って、先行する説明をあからさまに批判しないことが制約的慣習として定着しているからである。策定された方法なしに、テクストの語句や表現を恣意的に選択して順次に説明してゆくだけであるから、際限なく横に広がって水準は向上しない。】......増補版 序言より
【破壊のための破壊ではなく、構築のための破壊を指向するならば、われわれは、白紙にもどって、仮名文の構文原理を解明するところから着手しなければならない。】......序章より