- Amazon.co.jp ・本 (118ページ)
- / ISBN・EAN: 9784305706119
作品紹介・あらすじ
うたの森に、ようこそ。
柿本人麻呂から寺山修司、塚本邦雄まで、日本の代表的歌人の秀歌そのものを、堪能できるように編んだ、初めてのアンソロジー、全六〇冊。「コレクション日本歌人選」の第1回配本、藤原定家です。
定家において、歌は感情の自然の流露という趣(おもむき)を失った。心情の直接吐露が歌ではない。歌は現実生活との断絶の上に始めて成立する。それが乱世乱代における定家の生き方であった。----唐木順三
藤原定家(ふじわらていか)
あの『百人一首』の編者。若くして才能を発揮し、「達磨歌」(だるまうた)と揶揄(やゆ)される前衛歌を詠んだ。古典の世界の上に立ち、失われた王朝美の再現を目指す唯美(ゆいび)的歌風が後鳥羽院の推輓(すいばん)を受け、『新古今和歌集』の撰者の一人となる。以後、歌壇の第一人者として君臨した。承久の乱後『新勅撰和歌集』を撰し、また王朝の古典テキストの継承に多大の功績を果たし、子孫から神のように崇められてその権威を中世に長く誇ったことで知られる。国宝の漢文日記『明月記』(めいげつき)数十巻を今に残す。
感想・レビュー・書評
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藤原定家の和歌で人口に膾炙していると言えば、
見渡せば花も紅葉もなかりけり浦の苫屋の秋の夕暮
春の夜の夢の浮き橋とだえして峰にわかるる横雲の空
駒とめて袖うちはらふかげもなし佐野の渡りの雪の夕暮
かきやりしその黒髪のすぢごとにうちふすほどは面影ぞたつ
来ぬ人をまつほの浦の夕なぎに焼くや藻塩の身もこがれつつ
の五首にとどめを刺すだろう。その超絶技巧的で、耽美的な歌にはため息しか出ない。
この解説書で他の四十五首を読んでみて、そのあまりの技巧臭さ、細密な模型のように組み立てたあざとさに鼻白む。五首はきっと奇跡的なバランスの上で出来上がったものなのだ。
平安末期には世は武家社会と変わっていき、貴族社会が輝きを持ち続けるのは伝統化された和歌しかないと考えたのは、藤原俊成や定家であった。中世の和歌は文学的財産の古典の上に成り立たせるべきだと考え、さらにその上に新しいものを盛り込もうとした。その一つの方法が本歌取りである。もはやここでは自然な感情の流露という趣を失い、現実から離れた、心・観念によって作り上げられ、技巧を凝らして磨き上げられた独立の詩の世界になっていく。唐木順三氏は言う。「一転すればなんだまあ、という他愛なさにもなりかねない危ないものへ、生涯を賭するとは、またどうしたことであろう、という疑問を起こさせるほどの、もろい完璧さのなかに定家はいた。」
解説、寄稿エッセイとも優れたものである。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
藤原定家の生涯を彼の50首の和歌で綴る。
ざっくりとした定家の生涯を読んでみたい方におすすめです。
なんだかんだ定家の詠んだ歌って百人一首の「来ぬ人を~」くらいしか知らなかったので、いろいろな歌を読むことがてきて良かったです。
やはり芸術肌だったのだなぁと。難解で個性的な歌も多かったようだし。我も強くて屈折していて。自尊心も強くて。
すでに数多くの歌が詠われ尽くしてきていて、その中でどのようにして新しい世界を作り出していくか、定家はそんな時代に生まれるべくして生まれた天才歌人だったのかなと思いました。 -
新着図書コーナー展示は、2週間です。通常の配架場所は、2階開架 請求記号:911.108//Ko79//11