- Amazon.co.jp ・本 (117ページ)
- / ISBN・EAN: 9784305709196
作品紹介・あらすじ
プロレタリア短歌
1928 年(昭和3)「短歌戦線」、29 年(昭和4)「短歌前衛」創刊。歌人たちは重労働や貧困などを詠み、資本家や地主、国家への怒りを短歌表現に託した。この年「プロレタリア歌人同盟」結成。しかし、戦争に向かう時代の流れのなかで、その短歌も衰退を余儀なくされる。
ただし、プロレタリア短歌は「現在」につながる問題、たとえばワーキングプア、児童の労働、女性が働きつつ子を育てることの困難などを見逃してはいない。ここから私たちは、未来を拓くための知識や社会の見方を獲得し、何らかの教訓をみつけるだろう。
感想・レビュー・書評
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娘の賃金が一家の暮【くら】しを背負つてる美談だらけだ俺等の村は
佐々木妙二
今日は、女児の幸せを願う桃の節句の日。その願いとは対極にあるような、昭和初年代の「村」の短歌である。
作者は秋田県生まれ、「アララギ」などを経て、昭和初期にプロレタリア歌人同盟に参加したという。
この歌は、模範的な年少労働者として顕彰された「娘」がモデルのようだが、「美談」が流布することで、この女性は今後も労苦に耐えなければならないのだろう。また、他の家庭でも「美談」が再生産されるという、負の可能性も見すえた歌である。
賃金労働者が直面する問題を、まさに「問題化」させることがプロレタリア短歌運動の目的の一つであったが、兵役に関しても、次のような歌が作られていた。
見ろ、誰もがびくびくしながら並んでゐるみんな合格を怖れてゐるんだ
藤野武郎
来歴不詳の作者。この「合格」は、徴兵検査に際してのものである。一家の担い手である成人男性の入営は、困窮家庭では「怖れ」るべきものという本音が見える。
これらの短歌は、笠間書院「コレクション日本歌人選」の最新刊、「プロレタリア短歌」から引用した。著者の松澤俊二は、プロレタリア短歌の定義とともに、それらが「歌わなかったもの」に着目している。自然の美しさ、恋愛、そして、戦争を讃える発想は歌われなかったというのだ。プロレタリア短歌運動自体は短期間で終わったが、その意義は、今こそ確認しておきたい。
(2019年3月3日掲載)詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
社会学部 松澤俊二先生 推薦コメント
『・・・僭越ながら推薦者の本。プロレタリアとは貧しい労働者や農民のこと。昭和初期、その人たちが短歌を詠んでみたらどうなった!?』
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