現代建築の軌跡: 建築と都市をつなぐ思想と手法

制作 : 川向 正人 
  • 鹿島出版会
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  • Amazon.co.jp ・本 (230ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784306044548

作品紹介・あらすじ

建築も都市ももっと美しく、内から輝くものになり得る。相互につながり交流し、多様なものを内包しつつ都市をつくる建築。その思想と手法をめぐって、第一線で活躍する15人の建築家たちと語る珠玉の対談集。現代建築の軌跡を浮かび上がらせる充実した解説と脚注が付く。

感想・レビュー・書評

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  • 15人の建築家とのオムニバストーク。建築思想の初学者によいと思う。


    現代建築の軌跡―建築と都市をつなぐ思想と手法
    著者:川向 正人
    鹿島出版会 / 単行本 / 2005-08


    1-2 槇文彦:グループフォーム-都市の形象をつくる
    p.44 槇:「グループフォーム」を、もう少し緩やかに解釈して、多少変形するにせよひとつの形態を繰り返すのではなくて、多様な「リンケージ」でつなぐことを重視すれば、形態に厳密な一貫性が無くても、あるまとまった集合を作ることができる。(※ヒルサイドテラス)

    1-3 菊竹清訓:か・かた・かたち-現実と実体に架橋する
    p.55 菊竹 今でも、日本の学校教育ではヨーロッパやアメリカの教育をそのまま踏襲して、住宅を設計する場合、子供部屋が何室、居間がどういう使い方だというように、機能を押さえようとします。機能を押さえ、結果として、壁をリジッドに固めていく。そういうものが建築の設計だと思っている人が多い。これは間違いです。間違いだというのは、部屋の選択と利用の仕方で拘束性が極めて大きいということです。そして、突き詰めれば、生活を拘束することが設計だと考えている建築家が、少なくないということです。

    ※Pollan ポラン は機能主義的で拘束性が高いか?

    1-4 山本理顕:職住混在-都市居住の全体性を回復する
    完璧なプライバシーと「鉄の扉」

    1-5 古市徹雄:スパイン(背骨)-多様性を柔らかく受け入れる
    川向 古代ギリシャやローマの時代には、都市が広場や大通りによって計画された。丹下事務所の仕事は、その西洋の古代以来の伝統を受け継いでいるような感じがします。トライアンファルな、つまり凱旋的で、晴れやかな外部空間が、必ず都市の骨格として存在した。独立後の古市さんは、幸運にも、大きな規模の仕事に恵まれ、多元的で複合的な建築を、スパインを用いた設計手法で、あたかも都市を造るように設計してきた。その例は、多いですね。
    古市 幸運にも(笑)。例えば、(…)などが、スパインに当たります。その施設全体を閉じたものではなく開いて、周辺の都市組織と接続するように設計するにも、有効な手法だと思っています。と同時に、それ自体が多様な人間の活動を誘発する空間となることが、ますます重要になってきています。

    古市 異なる機能をつなぐ手法は色々ありますが、例えば真ん中に、大きなプラザ的な空間を作る方法もあります。しかし、私は、やはり求心型よりも軸型というか、スパイン的な空間のほうが好きです。

    ※Facebook(Like!ボタン、Open Graph)を連想。

    2-1 宮本忠長:修景-生活空間の襞を丁寧に辿る
    宮本 それが「再開発」の実態でしたから、批判は正しかったのです。そこで私は、個々の住宅の問題を解決するところから入りました。住宅は町屋で、親子二世帯が住む間取りではないし、密集しているので日も当たらない。お嫁さんが来て二世帯で住めて日当たりの良いプランをつくり、寒冷地向きのディテールや技術も導入する。住み続けて、人も迎えられる住宅をつくる。そのうちに仕事が進んできますと見学者が多くなってきて、「これは、修景というような考えでつくっているのです」と説明するようになりました。要するに、古いものは一つも捨てない配置換えであって模様替えなのだ、と。再開発でも立替でもない。住み続ける連続性を大切にして、環境のいい住宅にしていく。誇りをもって住み続けられる住宅にすると同時に、住民の気持ちが街に開いていくように心がけたのです。

    ※ゼロベース流アジャイルUCDを連想。リニューアルしない漸進的改善。

    2-5 古谷誠章:ハイパー・コンプレックス・シティ-予期せぬ「出会い」から
    木陰を求めて自然と整列してしまったタイの人たち。without thought
    タイム・シェアリングのマナー(自生的秩序) ※レールウェイ・マーケット

    3-1 内藤廣:素形-場所に根ざす建築の根源
    最適解を積み重ねた結果として生じる形 →素形
    自分の心の中を掘っていくと鉱脈に行き当たる 間主観、ペルソナ

    3-5 伊東豊雄:場所性-身体・建築・都市が同調する枠(トポス)として
    伊東 ですから、建築の内と外とがスパッと切られてしまうとか、部屋同士を区切る境界がはっきりしすぎていることは、自分にとっては、すごく耐え難いことなのです。しかし、そのラインを引かないと建築になっていかない。特に近代建築は、環境とは無関係に世界の至る所で同じものを再生産しようとしました。それがひとつの目的にもなっていましたから、スパッと線を引いて建築と環境とを切り離してしまう。そうすることで、かつての日本建築のように自然環境と連続した空間を作ることが出来なくなります。
    (…)
    近代主義の建築というのは、個別の機能に分けて、それぞれに個別の空間を対応させていく。人間の行為は本来連続的なもので、常に「何々しながら」生活しているのに、たとえば、食べる行為と寝る行為を分け、それぞれをダイニングとかベッドルームという個々の空間に切り分ける。そして、これが一番いい組合せだという「最適解」を目指す。その一方に、ミースのいわゆる均質空間のようにどこもすべて同じで、しかもそれがどんな機能にも対応できて最も自由だという考え方がある。ミースの「レス・イズ・モア」という思想で、それに基づいて、二〇世紀を席巻した高層オフィスビルの空間のようなものが誕生した。二〇世紀の建築や空間は、このどちらかによって作られてきた、と言えますね。
    (…)
    私が望むのは、もっと現象そのもののような空間です。それを建築にすると、どうしても現象そのものという状態から離れてしまう矛盾に直面しながら、あえて私が目指すのは、機能に一対一対応する部屋をつくるのでもなく、あらゆる機能を包含し得るという無限定な均質空間をつくるのでもない。とりあえず私は、これらに代わる何か、その目指すところを「場所性」という言葉で伝えようとしているのです。
    (…)
    常に私の中では、場所という言葉には、境界をはっきり持たない、森の中の空間のようなイメージがあります。森の中を歩いていると、陽光が差してくる場所もあれば、非常にじめじめして暗い場所もある。人々は、都市の中、森の中のいろいろなところで、それぞれに場所を選んで、そこで様々な行為をしている。それと同じようなことを建築の中でつくり出したいというのが、基本的なイメージです。
     その際に私としては、どこまでも森の中を歩いていたい。「せんだいメディアテーク」の場合も、森がどこまでも続くようなものであってほしいと願っていました。しかし、実際には敷地条件があって、それはあり得ない。だから、本当は続いているものを、とりあえずスパッと切る。これが、私の「建築化」です。前面がガラス張りでも、ガラスの箱をつくりたかったわけではないのです。
    (…)
    近代主義の建築は、あまりに抽象的で分かりにくく、親しみにくかった。ポストモダニズムによる歴史的な建築言語の再利用でもヴァナキュラーな建築言語への回帰でもなく、全く違うかたちでもう一度、建築に分かりやすさと親しみやすさ、さらに言えば、楽しさを取り戻すことをねらっていましたから。


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    建築家15人との建築・都市をめぐる対談集
    建築と都市の関係を問い直すべく行った、若手から重鎮まで第一線で活躍する15人の建築家との対談集。各建築家の建築と都市をつなぐための思想・技術・手法を読み取ろうとするものである。
    <主要目次>

    第1部:CIAM的都市像からの脱却
    1-1 黒川紀章:共生-中間領域による多元的世界へ
    1-2 槇文彦:グループフォーム-都市の形象をつくる
    1-3 菊竹清訓:か・かた・かたち-現実と実体に架橋する
    1-4 山本理顕:職住混在-都市居住の全体性を回復する
    1-5 古市徹雄:スパイン(背骨)-多様性を柔らかく受け入れる
    第2部:都市を捉えなおす内省的思考
    2-1 宮本忠長:修景-生活空間の襞を丁寧に辿る
    2-2  北川原温:コンステレーション-都市の宇宙を捉える
    2-3 新居千秋:ファンタズマゴーリア-風景をつなぐシナリオ
    2-4 安田幸一:ミニマル-都市のリプログラミングに向けて
    2-5 古谷誠章:ハイパー・コンプレックス・シティ-予期せぬ「出会い」から
    第3部:建築と都市をつなぐコンセプトへ
    3-1 内藤廣:素形-場所に根ざす建築の根源
    3-2 隈研吾:粒子-敷地を超えて拡がる環境の単位
    3-3 小嶋一浩:コンパクトシティモデル-スペースブロックというツール
    3-4 阿部仁史:境界面-場の情況を映し出す媒体
    3-5 伊東豊雄:場所性-身体・建築・都市が同調する枠(トポス)として
    現代建築年表
    結び

    出典 http://tairyudo.com/tukan03/tukan3406.htm

  • 内容(「BOOK」データベースより)

    建築も都市ももっと美しく、内から輝くものになり得る。相互につながり交流し、多様なものを内包しつつ都市をつくる建築。その思想と手法をめぐって、第一線で活躍する15人の建築家たちと語る珠玉の対談集。現代建築の軌跡を浮かび上がらせる充実した解説と脚注が付く。
    目次
    第1部 CIAM的都市像からの脱却(黒川紀章 共生―中間領域による多元的世界へ
    槇文彦 グループフォーム―都市の形象をつくる
    菊竹清訓 か・かた・かたち―現象と実体に架橋する
    古市徹雄 スパイン(背骨)―多様性を柔らかく受け入れる)
    第2部 都市を捉えなおす内省的思考(宮本忠長 修景―生活空間の襞を丁寧に辿る
    北川原温 コンステレーション―都市の宇宙を捉える
    新居千秋 ファンタズマゴーリア―風景をつなぐシナリオへ
    安田幸一 ミニマル―都市のリプログラミングに向けて
    古谷誠章 ハイパーコンプレックス・シティ―予期せぬ「出合い」から)
    第3部 建築と都市をつなぐコンセプトへ(内藤広 素形―場所に根ざす建築の根源
    隈研吾 粒子―敷地を超えて広がる環境の単位
    小嶋一浩 コンパクトシティモデル―スペースブロックというツール
    阿部仁史 境界面―場の状況を映し出す媒体
    伊東豊雄 場所性―身体・建築・都市が同調する枠(トポス)として)

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