建築をめざして (SD選書21) (SD選書 21)

  • 鹿島出版会
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  • Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784306050211

感想・レビュー・書評

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  • この本に関して☆を付けること自体が恐れ多いものだと思った。建築をめざして、で語った言葉は今なお現代建築で説明される言葉と共鳴する。コルビジェが目指した自由な平面はSANAAが目指す流動的な平面と、数学美や普遍性や標準と言った言葉は藤本荘介さんが語る音楽や非線形科学への参照となにが異なるのだろうか?コルビジェは平面(プラン)を行動の指針と言う。そして平面上では織りなされる立体と行動の「闘い」が繰り広げられると言う。そしてそのような闘いは律動(リズム)を生み、均衡をもたらし、多様性をもたらすと
    バーナード・チェミが「建築と断絶」の中で語ったサヴォワ邸の「永遠の若さ/無時間性」への批判やハーバードのカーペンターセンターのスロープが持つ線形方程式的な型へ当て嵌めようとする形態はコルビジェの一部の特徴を無理に強調しているに過ぎないように思える。むしろヴェンチューリが「建築の多様性と対立性」の中で述べるようにグリッドに並んだ柱が持つ「秩序」とその柱すらもずらしてしまう「曖昧さ」との拮抗にこそ、「建築をめざして」で語られる建築観の本質が潜んでいるように思える。
    「住むための機械」という言葉で現れる機械は、本書で登場する飛行機や船や自動車などによって強く工業技術/工学との連関を想像させるがむしろ数学や物理科学/基礎科学との連関への言及と考えた方が納得が行くように思える。そう考えた時、コルビジェが言う「機械」はgoogleが作り出す検索エンジンのようなシステム/秩序とどこか方向性が異なると言えるのだろうか?

    建築は単に秩序立てや光の下の美しい角柱なのではない。私たちを喜ばせるもう一つのものがある。寸法だ。測ることだ。リズムを持った量として配分し、同じ息を持って生かされ、統一された巧妙な関係を到る所に及ぼし、平衡を保ち、<方程式を解くこと。>
    本書 p.128

    そこに見えるのは工業のメタファーとしての「住むための機械」というよりは近代科学のメタファーとしての「住むための機械」のように思える。特に注目に値する部分は「平衡」や「リズム」や「関係」へと光を当てている部分だと考える。これらの言葉は現代科学の分野でも今なお使われる基本語だ。googleは関係性の科学を用いて物事を測り、一つの秩序を作り上げている。

    個人的にはコルビジェは他の近代巨匠に比べてわかりにくい。ミースのように美しい単純さと工匠的美しさではないと思う。それはコルビジェが建築を強く芸術と結び付けていることに起因していると本書を読んで感じた。様々な都市計画を提案したりと社会的な側面も目につくが、社会性は最低限のマナー程度にしか考えてなかったと本書を読んで強く感じた。そういう意味で決してデザイナーやプランナーではなく、アーティストでありロマンチストだったのだ思った。

  • 摂南大学図書館OPACへ⇒
    https://opac2.lib.setsunan.ac.jp/webopac/BB00007235

  • 平面(「プラン」)こそは原動力・基礎であり、リズムや立体に先立つものであると書かれている。都市におけるプランは変動し、今や新しい美学を欲している。その構想は同著者の『ユルバニスム』へと引き継がれる。プランは「内から外へ向かう」。その理由は「家屋も宮殿も生物に似た器官だから」。建築と生物組織のフラクタルに着目している点には共感できる。しかしもっと生物の成り立ちを追求する姿勢があってもよかった。もちろんガウディのような形状としてではなく、機能として。
    人間における「軸」の設定も面白い。それは目的を持った行動指針。赤ちゃんも筋肉質の男も同様に、軸を描く、生きている、行動し歩き生活する。そこに秩序が立てられる。
    面は集まって光を受ける。建築の内部から詩が発生しなくてはいけない。コルビュジエも詩を書いている。『直角の詩』だ。

  • 白くてガラスだらけのモダンな住宅はなんとなくきらいで、­
    住宅といえば瓦で縁側でしょう、という気持ちを持っていた。­
    どんどん変わってしまう街並みより、何100年たっても変わらない­
    フィレンツェみたいな街並みの方が良いと。­

    でも、船舶も飛行機もあらゆる道具が進化する。なぜ家だけ進化­
    すべきと思わぬのか?というようなことが書かれていて納得。­
    技術の進歩や環境、生活に合わせて、変わっていくことが正しい、­
    という考え方もあるかもしれない。­

    住宅は住むための機械。言葉だけ知っていたけれど、そういう­
    文脈なら、まあそうね、という感じ。­

    建築家になりたいなぁ。自分の家を、建ててみたい。­

  • 近代建築の潮流を作り上げた男の言葉は思った以上に扇情的なものだった。ここには近代に対する確信がある。装飾や様式に縛られた旧態依然としたものでなく、立体と面、平面によって作り出された建築はそうした贅沢品に頼らなくとも人を感動させられるのだと。建設は知性によって作られるが、建築は人の心を動かすものであり、芸術品であるのだという確信。また同時に「住宅は機械である」と断言するその内容は、1920年代におけるモダニズムが科学的進歩と人間性の発達という両輪によって駆動していたことがよくわかるものとなっている。

  • 貸し出し状況等、詳細情報の確認は下記URLへ
    http://libsrv02.iamas.ac.jp/jhkweb_JPN/service/open_search_ex.asp?ISBN=9784306050211

  • 約90年前の文章なれど未だ蒙を啓く力を随所に漲らせている。が、如何せん訳文が読みづらいことこの上ない。新訳を切に望む。

  • 古典的名著。
    ということになっているけど、学生の時に読んでピンとこず、20年近く経って読み返したがやはりピンとこず。

  • まだ建築の学校に入って2年もするかしないかの頃、建築を創ることが、なにか社会を大きく変えることができるのだと、夢見ていた。いまは、少しづつ社会を変えることすらできるのかできないのか、深く悩み、考えてしまう。建築家ができることは、とても小さい。でも、コルビジェの言葉の数々は、建築を創るという行為の根っこのところにある、いうなら喜びのようなものに深く触れていて、読み返すたびに、すこし、前向きに建築を考えよう、生きよう、という兆しが、心の中に湧き上がってくるのです。

  • 20世紀初頭のモダニズムの息吹を感じられる、知的に刺激的な一冊。単に建築についてだけではなく、物質文明に対する考え方も語られており、「バウハウス」に興味がある人だけではなく、「未来派」や「ダダイズム」の気配を、この本から感じることができることは記録しておきたい。

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