高山英華: 東京の都市計画家

著者 :
  • 鹿島出版会
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  • Amazon.co.jp ・本 (386ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784306094079

作品紹介・あらすじ

高度成長時代における日本の都市づくりをリードした高山英華。若いころベルリン・オリンピックのサッカー日本代表候補となり、戦後はオリンピック、博覧会、ニュータウンなど、国家的プロジェクトをまとめながら、裏通りの居酒屋をこよなく愛した庶民派であった。教育者として全共闘学生にも敬慕されたその豊かな人間性を通して、都市計画・まちづくりのあるべき姿を描く。

感想・レビュー・書評

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  • 高山英華の生涯と業績を描く。
    由利公正、芳川顕正、渋沢栄一、後藤新平、石川栄耀らに並び、戦後東京の代表的な都市計画家とされ、特に都市計画の様々な委員長や会長を務めあげたことで知られている。しかし彼に関する資料は、著書『私の都市工学』といくつかのインタビューが残されているのみだそうだ。
    本書では高山英華の生涯を追って知られざる一面が明らかになるのかと思い手に取ったが、物足りない印象である。高山英華ものの考え方や進め方がもっと知りたい。しかし、そこがはっきり残されていないのが「委員長」であった高山英華の特徴なのかもしれない。

  • 盛り場や文化といった人の生活(ライフ)を感じられる都市をつくることに情熱を燃やした石川栄耀、道路の実現こそが都市づくりという徹底的な実行主義で突き進んでいく山田正男、将来をビジョナリーに見通した大構想を打ち上げながらその実現の手法としてはあくまで建築デザインを中心に据えていた丹下健三など、戦後の東京を作っていった都市計画の大家たちには、それぞれの個性があった。

    それらと対比させながら高山英華の業績を語っていることで、彼の偉大さとともに、都市計画に大切なものは何かということも考えさせられる本だった。

    高山英華のことを筆者は「サッカーのキャプテン」になぞらえているが、プロジェクトの大事なポイントを押さえ、グランドデザインをつくり、実現に当たっては自分の研究室スタッフや社会の様々な組織・人材を適材適所で動かしていくという彼の能力は、確かにそのようなものだったのだろう。

    また、現在、都市計画分野のそれぞれの機関、分野で長老級の位置づけにある方々のかなりの部分が高山研究室出身だったことにも驚かされる。それぞれの専門分野や主義主張は様々だが、同じ研究室で高山英華の薫陶を受けたということが、日本の都市計画の中に何らかのつながり、共有できるものを残してくれているのではないかと感じる。

    貴重な遺産だと思う。

  •  アマゾンの推薦に基づき、購入。

     いうまでもなく、都市計画の大家、東大に都市工学科をつくり、都市計画中央審議会の委員もするなど、様々なプロジェクトのまとめ役として有名。

     この本は、伝記風になっていて、都市計画の知識のための本というより、都市計画という学問が大学でどう扱われ出したかがよくわかる。

     その上で、これから都市計画を考え、実現していくための資質を考える。

    (1)高山先生は、都市計画は、土木、建築、造園の総合体として考えてきたが、現在からみると、さらに、公共交通、衛生工学、農学、経済学、法学、社会学、社会福祉学などの様々な知識が必要。

     それをある程度、ジェネラルにもった上で、細部は専門家に任せるといった広範な知識がないと、ものごとが実現しない。その苦労を自分は身にしみて感じる。

    (2)都市が縮小する、経済が成長しない中で、大きなものもつくれない、その中で都市計画は何を実現するのか、大きな土木施設や建築物ではなく、住民の生活を少しでも快適にする改善活動、マネジメント活動、地域の共同体を守る活動など、よりハードからマネジメントにシフトする必要があり、そのためのコミュニケーション能力が問われる。

     高山先生は、お人柄、性格からいって高いコニュニケーション能力をもっておられたようだが、それをより洗練され、次世代につなぐための方法論がいる。単に、剛胆だとか信頼おけそうといった伝統芸を越えた、コミュニケーションの技法が大事だと思う。

    (3)この本ではほとんど触れていないが、政治とのつきあい、必要な予算の確保について、正々堂々と正面からわたりあえる知識経験と胆力を持つこと。

     宴会芸でごまかすのではなく、理屈と説得力で税金を使うプロジェクトなり制度や予算を仕立てる能力がいる。

     石川先生が都市計画は都市への愛情といっていたと思うが、都市、農村、漁村にかかわらず、国民の生活に対する愛情を持って、この都市計画という難しい仕事に挑んでいきたいと思う。

  • 高山英華は1933年の三陸沖地震後に三陸の漁村をみてまわったのち、漁村の計画を卒業論文と卒業設計のテーマにした、か。みてみたい

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