佐川君からの手紙: 舞踏会の手帖

著者 :
  • 河出書房新社
3.06
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感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・本 (173ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309001173

感想・レビュー・書評

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  • 佐川君、というのは
    1981年の猟奇殺人「パリ人肉事件」の犯人
    佐川一政のことだ
    白人女性を自宅に招き、猟銃で射殺して、その肉を食らった
    身長151cmの小柄な男である

    黄色い小男が、暴力と死でもって白い大女を支配する
    そんな物語を作品化するにあたり
    会見に招いた新聞記者たちの前で、劇作家の唐十郎は
    みずからの祖母の話ばかり語ったという
    「長崎六神丸」という、かつて存在した居酒屋では
    死体とサシで酒を飲ませるというサービスがおこなわれていたらしい
    そこで本物の死体に混じって
    死んだフリをしていたのがうちのばあちゃんなんだよと
    事実とも妄想ともつかない言い伝えであるが
    そのように生と死の区別が失われた母系的世界を
    佐川君のドメスティックバイオレンスに対置することで
    なにかが清められるとでも思ったのだろうか?
    しかしそれは甘い考えだ
    佐川君には佐川君の事情と意思があってそれをおこなったのだから
    「それがどうした」と一笑に付されておしまいだろう
    なにより一番の問題は
    佐川君の、独善的ながらも濃密な愛の世界に対して
    それが嫉妬、やっかみからのちょっかい出しに見えてしまうことである
    1982年の芥川賞を受賞した

  •  
    ── 唐 十郎《佐川君からの手紙 1982-198301‥ 198608‥ 河出書房新社》
    http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/1/4309001173
     
    …… 「私の事件を映画化なさるそうですが、主演させてください」―
    ある日、サンテ刑務所から1通の手紙が舞い込んだ。犯行者との息を呑
    むような文通のあと、面会を求めて渡ったパリで、数々の奇怪な出来事
    と遭遇する。虚実の境をわたり、幻想のあやなしにあらがいながら、劇
    的想像力が照らし出す極限の「愛」―カニバリスム。1981年6月、パリ
    で起った人肉事件の謎に迫る衝撃の話題作。第88回 1982下期 芥川賞。
    (ルネ・ハルテベルト人肉食事件「BOOK」データベースより)
     
    ♀Hartevelt, Renée  1956 Olanda Paris 19810611 25 /留学生
     佐川 一政   作家 19490426 神戸 /関西学院大学大学院/パリ第3大学大学院
     唐 十郎 劇作/演出 19400211 東京 /劇団唐組/李 麗仙の元夫/大鶴 義丹の父
     Wilson, Colin 哲学 19310626 England 20131205 82 /
     金子 嗣郎 精神医学 19300513 東京   19970122 66 /
    http://d.hatena.ne.jp/adlib/20030611 罪と罰
     
     書けば売れる、出せば売れる、売れれば読む、読まなくても聞かれる。
     出れば読む、出ても買わず、読んでも語らず、読まず語るのもどうか。
     聞かれてもいないのに語ろうとして、読み終われば世間が忘れている。
     
    http://booklog.jp/search?keyword=%E4%BD%90%E5%B7%9D%E5%90%9B%E3%81%8B%E3%82%89%E3%81%AE%E6%89%8B%E7%B4%99&service_id=1&index=Books
     
    ── 元少年A《絶歌 20150611 太田出版》
    http://booklog.jp/users/awalibrary/archives/1/4778314506
     
     “少年A” 元友が丘中学三年生 19820707 兵庫 /籍=(秘)
    http://d.hatena.ne.jp/adlib/19970210
     少年A=酒鬼薔薇 聖斗 ~ 神戸連続児童殺傷事件 ~
     
    (20150615)
     

  • 日本人留学生がオランダ人女性を殺して遺体の一部を食べたっていうパリ人肉事件に着想を得た作品。普通だった。これといって感想も出ず。元になった事件にもそれほど興味が沸かず。

    あとがきで表紙の絵についての補足が書かれていたのは良かった。

  • 正直、意味不明な小説だった。
    結局、なんだったの、という感じ。
    全体的に暗い感じで、大した盛り上がりもない。
    小説なのか、ドキュメントなのかも、よくわからない中途半端な感じ。
    まあ、そういう小説ではないと言われれば、そうかもしれないが、やっぱり意味不明。

  • 筆者と佐川一政との手紙のやりとりと、筆者自身の妄想が入り乱れて、現実味のない浮遊感が漂います。
    佐川一政と紐付いたことによる筆者の物語であって、事件に興味をもって読むとだいぶあてが外れます。
    カニバリスムを強調した帯に騙されました。
    (あ、私にそんな癖はありませんよ?誤解なきように)

    テーマのインパクトから手に取ってみましたが、すこぶる読みにくい。
    誰の台詞なのか、誰の描写なのか、それが狙いのか、とにかく迷う。

    イシスとの結び付けは興味深いですが、私はこの文体を好きにはなれませんでした。

  • 1981年パリで実際に起こった日本人留学生佐川一政による“カニバリスム”事件。
    この事件は当時日本を震撼させた。その猟奇性において。

    オランダ人女性を殺害し、その肉を食するという犯行者に、
    素朴な感心を抱き手紙を送った作者唐十郎(演出家でもある)。
    そして犯行者から実際に届いた返信文と、続くやりとり。
    これはけして猟奇的な犯行を肯定している訳ではなく、
    またカニバリスム人格を分析したお話ではない。

    当時の私がこの本を手に取ったのは、こんな猟奇的な犯行を犯した人間が
    どんな返信を書いてきたのか、どんな文章なのか、手紙として成立しているのか、
    狂人なのか、性格破綻なのか‥‥大いに興味を持ったから。
    巻末に実際に獄中の佐川一政から届いた手紙文の写真も載っているので
    この小説が“虚構”でないことがわかる。
    しかし作中、虚と実がないまぜになって幻想的な深みにはまっていくのはなぜなのか。
    内容が特異なだけに味わったことのない読後感を得た記憶がある。
    (佐川一政は後に日本に帰国し余生を送った)

    納得の芥川賞受賞作品。

  • 芥川賞 初版

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著者プロフィール

劇作家・演出家・俳優・小説家。1940年東京生まれ。明治大学文学部演劇学科卒。62年劇団状況劇場を結成。67年に新宿花園神社境内に紅テントを立てて上演し、以後、唐の存在は60年代に開始されたアングラ・小劇場演劇を牽引する旗手となった。88年に状況劇場を解散、唐組を結成。横浜国大(1997~2005年)、近畿大学(2005~10年)でも教授を勤め、後続の若い世代にも強烈な影響を及ぼした。 

「2017年 『唐十郎 特別講義』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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