泣かない女はいない

著者 :
  • 河出書房新社
3.31
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本棚登録 : 427
レビュー : 102
  • Amazon.co.jp ・本 (171ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309017051

感想・レビュー・書評

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  • 今回も引き続き角田さんの本で紹介されていたこちらの本を。読みたい!と思ったのは、聖飢魔IIを好きな女性が出てくると知ったからだ。私も高校生の時に友人の影響で聖飢魔IIが好きだった。
    表題作は物流会社に勤める女性の日常、もう一作が聖飢魔IIを好きだった女性の日常を描く。これまた普通の日常が描かれており淡々とした時間が流れる。でも、二作とも淡々とした中にもなんとなく温かい空気が流れ、会社の合併やリストラ、夫の浮気など明るい内容ではないし、終わり方も切ない感じなのに悲壮感が漂わない。淡々としているけど明るい未来が待っている感じがするのだ。

    文中の聖飢魔II信者の友人が言った「なんだか、年とったなあと思ってさあ」に状況共々いたく共感した。

  • *ごめんねといってはいけないと思った。―埼玉郊外の下請け会社に、事務として中途入社した、澤野睦美。恋人・四郎と同棲する彼女に、不意に訪れた心変わりとは?恋をめぐる心のふしぎを描く魅力あふれる小説集*
    特筆すべき事柄があったわけでもないのに、気が付いたら惹かれてしまっていた・・・これこそ、まさに恋の真髄。ここまで淡くさりげなく切なく書けるなんて上手い。ただ、それ以上に、樋川さんとだけでなく、会社の同僚たちとの距離感が徐々に縮まっていく様が秀逸。

  • いやあ参った。表題作の「泣かない女はいない」と「センスなし」、それに「二人のデート」の3編収録と奥付けにあるのだけれど、どこにも「二人のデート」なる作品が見当たらないのだ。あれこれ調べた結果、たった2ページの掌編ながら裏表紙に収録されていて、図書館で借りた本では読めないことが判明! どうやら、読みたければ買いなさいという著者の意地悪らしい。さて、私が読むことの出来た二作品は、男のくせに女心をここまで書けるのだという見本のような作品。共にカセットテープの時代の物語で、著者と同年代の70年代生まれの人には懐かしいはず。「泣かない女はいない」は、同棲中の女性主人公睦美が職場の年上男性・樋川さんにほのかに恋心を感じていく話。ボブ・マーリーの「NO WOMAN NO CRY」をカラオケでさらりと歌い、曲の名を問われて「泣かない女はいない」とぶっきらぼうに答える樋川さんがしびれるように格好いい。「センスなし」の方は、何と「聖飢魔?」のファンとしての歴史がフューチャーされている物語だ。愛人を作って家を出ていった夫を持つ保子は「デーモン木暮」好き。その保子と「聖飢魔?」信者のみどりは中学時代からの友人同士。その二人の友情と人生が語られていく。男に裏切られた者同士のやるせなさと無常感が、背景に使われている音楽と共によく伝わってくる。これは、長嶋有が女性作家だと勘違いしてしまってもおかしくない作品だ。

  • 短編2編。

    表題作、
    埼玉のとある倉庫に務める睦美。同棲している彼はいるが、同僚の先輩にゆっくり惹かれていく。

    センスなし、
    夫の不貞で仲違い中の保子、学生時代に聖飢魔IIのファンとして知り合ったみどりのことを思いながら過ごす雪の日の話。

    どちらも、ゆったりとした流れる空気感は同じ。
    かなり好みです。
    主人公達は、大人しい感じですが、内面に強いものを秘めた様子が魅力的。
    2人とも幸せになって欲しい。

  • 長嶋有さんの本の中でいちばん好きです。(今のところ…)
    「愛のようだ」と「ジャージのふたり」も捨て難いですが
    心にスンとくる感じ。こういう思いしたことある人って、結構いるんじゃないかなーなんて思います。

  • 先日、長嶋有さんの「泣かない女はいない」を読みました(長嶋有さんの小説は、「ジャージの二人」を以前読んでます)。

    「ご本、出しときますね?」に長嶋有さんが出演したとき、「泣かない女はいない」の帯の推薦文を、キリンジの堀込高樹さんに書いてもらったエピソードを喋っていて、それで気になって読んでみました。

    なんだろう、表題作は、淡いブルーな雰囲気で(小説だから、色があるわけじゃないんですけど)、淡々と進むお話しで、映画で言うと、単館上映系の邦画、みたいな感じの小説でした。

    もう1作の「センスなし」も、表題作と同じく、淡々と進むお話しなんですが、こちらは、家を出て行った旦那が延滞していたAVを、主人公である妻が、ビデオ・レンタルに返しに行くといった、珍しい設定のお話しでした。

  • ああいう工業団地のそばで、
    なんの物語とも無縁に生きていた
    10年間を思い出した。
    そこに個人的に何かを見出すのも、
    何も見ないようにして過ごすのも、
    どちらも出来ずに、
    そのまま東京に出てきた自分と、
    今もあの街にいる人たちとを思い出した。
    しんと寂しいのにドキドキした。

  • シットコムみたいな感じだなあと読み始めた。遅れた就職活動とあっさり採用された思いもよらなかった職場、大宮シャトル、網目から透かして見えるような距離を置いた人間関係と日常のちいさなワクワク。もしも、再び続きが始まったら、いつまでも読んでいられそうなのに。

  • ぽつりぽつりと言葉が降ってくるような美しい文体でした。
    肌寒いような寂しい空気感が漂っていて、あっという間に読み終えました。
    家族が寝静まった夜にぴったり。

  • 三流企業の子会社にたまたま就職した睦美は、埼玉の郊外の物流という社名とは名ばかりの倉庫に通う。
    そこでの出会いと、それが間接的に引き起こす同棲していた恋人との別れ、という劇的な要素にも関わらず、物語的なことは何も起こらず、単調な日々の描写が淡々と続いていく。
    (睦美は恋人と別れた原因でもある同僚に何かを告げることは最後までない。)
    しかし、それは反復の中でミニマルテクノがそうであるようなある種の熱を帯びてくる。

    そして、ラスト、昼休みの散歩の終着点である公園で、睦美は俯いたような姿勢でいるところを、子供に怪訝そうに見られるという奇妙な文章で、物語は唐突に打ち切られる。
    彼女がなぜそんな姿勢でいたのかは宙づりのまま。
    だが、それを読むものは誰もが気づく。
    泣かない女はいない、と。

    そして、他の人間では決して気付けない、本当に大切な日々が自身の目の前に転がっていると。

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著者プロフィール

長嶋有(ながしま・ゆう)
一九七二年生まれ。二〇〇一年「サイドカーに犬」で文學界新人賞を受賞しデビュー。二〇〇二年「猛スピードで母は」で芥川賞、二〇〇七年『夕子ちゃんの近道』で大江健三郎賞、二〇一六年『三の隣は五号室』で谷崎潤一郎賞を受賞。

「2019年 『掌篇歳時記 春夏』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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