私の部屋のポプリ

著者 :
  • 河出書房新社
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本棚登録 : 64
感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309017495

感想・レビュー・書評

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  • 春夏秋冬のエッセイ。
    1日1話、ゆっくり味わって、熊井さんの知のエッセンスを味わうべき一冊。

    1日で読んでしまった。

    高柳佐智子さんの挿絵も素敵。

  • 1970年代。昭和48年早春「私の部屋」第五号から掲載されていたエッセイをまとめたもの。
    今から40年以上の年月がたっているのだけれど、熊井明子さんの語られる言葉はぜんぜん色褪せてなくて今の時代に生きているわたしにも共感できる話がいっぱいあった。仕事や恋愛(不倫の愛もふくめて・・・)結婚、夢将来への不安、希望・・・その頃の女性の悩みや価値観は今とほとんど変わってなくて、正直びっくりした。40年という時の流れは長いようでいて、女性が活き活きと輝けるようになるにはまだまだ足りないようだ。

    熊井さんのエッセイを読んでから、大正昭和時代の女流作家の随筆に興味を覚えた。読んでみよう。この時代の女性たちの文章には、たくましさ、賢さ、雅さ、またユーモアやセンスがあって伸びやか・・・そんなイメージがあるので楽しみだ。
    今の時代の方が便利だし、流行や情報はすぐに入手できるし、欲しいモノがすぐに買える人もいる。楽しいはずなのに、おしゃれなはずなのに、なんだろうこの閉塞感。息苦しい。女性が活躍できる場は少ないとはいえ以前よりは多いはず。それなのにむしろ昔の日本の女性が眩しくみえてしまう。幸せのなかに潜む苦労も悲劇もむなしさや後悔もすべてを受け止める潔さがあの頃の女性たちにはあったのかな。

    片山広子、森茉莉、山川弥千枝、城夏子、森田たま・・・これから知っていきたい。生きた時代を読んでいきたい。そして。ところどころに北原白秋の詩、歌が載っていて白秋の訳した『まざあ・ぐうす』も読んでみたい。

  • 2015-28
    ゆっくりと日々を感じながら生活をされている感じ。
    柔らかくて鋭い感性が素敵。

  • これこれ。
    こういう本を求めていました。
    お名前だけは知っていた熊井明子さん。
    なんて素敵な女性なのかしら。
    ピンク色のびんばふ、とかコラージュのたのしみ、はまさに大好きなエッセイ。随所に赤毛のアンが出てくるところもたまらなくツボ。
    城夏子さんも出てきて、嬉しくなってしまう。
    突然、腹心の友が現れたように感じた。
    大切にしたい本。

  • とても素敵なエッセイが集まってます。

    今から40年近く前に書かれた本なのに、とてもみずみずしく、そよ風が吹いて来るような。

    俗世間から離れたいときに読む本としてお勧めします。

  • 1978年に出版された名エッセイの復刻ということですが、いや、素晴らしい。
    いかにも女性らしい感性を感じます。しなやかで、繊細。
    しかし、同時に芯の強さや気骨も感じさせる。そこが、よい。

    やわらかな女性らしさとしては、たとえばこんなのが。
    「はにかみが押して作った片えくぼ」(←タイトルがすでに良い)

    自分で、あ、心がとげとげしくなっている、と思うとき、私はやわらかいものに刻印された可愛らしい形を思い浮かべます。
    たとえばパール・バックの母が、牛乳に浮かんだ黄金色の粒を集めて作ったバタに押したイチゴの刻印。(母の肖像)
    コレットの祖父が屋上に干しておいたチョコレートのやわらかい塊の上に、夜、猫たちが歩いて押した、五弁の花びらみたな足あと。(クローディーヌの家)
    ほのかに泰山木のにおいがする新しいクリームの、きれいにならされた表面に、小ゆびでチョンとつけた丸いくぼみ。

    …と、このあとも「刻印された可愛らしい形」が続くわけですが、
    こういうセンス、たまらなく好きでございます。
    あ、「my favorite song」に通じるものがありますね。子猫のひげとか!

    1978年発行というと、「ポプリ」ブームがきていたんでしょうね。
    それでこのタイトル。
    あとがきには、タイトルの説明としてこんなふうに書かれています。

    私は、ポプリそのものも好きですが、ポプリが象徴するものにもひかれます。さまざまの花や香りがとけあって、一つの香りが生まれるポプリ……この本もまたわたしが作ったポプリの一種です。ほのかな香りを、あなたにお届けしたくて。

    1ページ単位のエッセイのあとは、もっと長めの紀行文のようなものも収められていて、これがまた、いい。
    前橋と花巻はわたしも旅したことがあるので、情景を浮かべながら読むことができました。
    前者は萩原朔太郎、後者は宮沢賢治文学紀行、です。
    熊井さんは宮沢賢治の弟さんにお話をお聴きになっていたり、わたしが訪れた宮沢賢治記念館はまだ「建設が計画」されていたりと、時代を感じました。

  • ゆっくりする。上質で夢見がち

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著者プロフィール

作家。長野県松本生まれ。信州大学教育学部(松本分校)修了。映画監督である熊井啓と結婚。長年ポプリの研究につとめ、ハーブにも造詣が深い。愛猫家としても知られている。1999年『シェイクスピアの香り』などの著作活動について、「シェイクスピアの魅力を新たな角度から探求した業績を評価して」第7回山本安英賞を受賞。著書に『シェイクスピアの妻』『香りの力』『めぐりあい ――映画に生きた熊井啓との46年』(いずれも春秋社)、『シェイクスピアの香り』(東京書籍)、『愛のポプリ』(講談社)、『今にいきるシェイクスピア』(千早書房)、『「赤毛のアン」の人生ノート』(岩波現代文庫)、『ポプリテラピー』(河出書房新社)ほか多数。

「2021年 『いくつになっても、ラ・ヴィアン・ローズ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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