浮世でランチ

  • 河出書房新社
3.18
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309017785

作品紹介・あらすじ

明日の私は、誰とごはんを食べるの?人が人と関わる意味って、何?25歳の私が"世界"に触れる、一瞬の奇跡。『人のセックスを笑うな』の著者が贈る文藝賞受賞第一作。

感想・レビュー・書評

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  • 3年働いた会社でなんとなく浮いた存在の「私」。お昼は誰とも食べない。
    辞める直前に同僚と昼食を一緒に食べ、その後ひとりで東南アジア旅行へ。

    10年くらいの前の「私」も友だちはほとんどいなかった。ひとりの女の子への執着と小学生からの友人の家での宗教ごっこが「私」の中学時代だった。

    辞めた会社の同僚とのメールのやりとりになんとなくゆれる「私」。
    そして「私」はミャンマーで中学時代の友だちに再会する。
    10年間の間、何があったのかはお互い聞かない。
    ”理由なんてものを聞くのは野暮なようだ”から。

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    はっきりとした答えがない小説。
    でも、すごく考えさせられる小説。

    正直なところ、答えなんてものはどうでもいいことが多い。
    それよりも、なんでそうなったのかを考えることのほうが重要。

    会話の端っこにヒントを隠しながら、答えは出ないまま終わる。
    そこがリアルなのかな。生きてく上で、答えが提示されることなんてほとんどないし。

    答えを聞くなんて野暮、考えることが答えなんだぜ、と言われた気分。

  • 主人公の子供の頃の話と現在。
    会社を辞めミャンマーに旅に出る。
    丸山は自分の世界観を持ってるんだろうな。
    だから1人でもいつも平気なんだ。
    私も新田さん同様憧れちゃう。

  • ずっと読みたかったナオコーラさんの初期の作品。
    めちゃくちゃ真面目に小説を書いていて良い。
    過去と未来を行き来する、今まで読んだ著者の作品にはないスタイル。

    P.34
    手があって良かった。ものを運ぶよりも、細かい作業をするよりも、この、ものの感触がわかる機能が何よりいとおしい。ざらざらなもの、ぬるぬるなものを私に教えてくれる手に、キビダンゴをあげて、私は一生、自分のお供にしたい。

    P.110
    お店に行ったら、私の他にはお客さんがいなくって、店員のおばさんは英語がわからないらしくって、だから私は鍋を指して食べたいしぐさをしました。5分ぐらいしぐさを続けたら、やっとよそってくれました。肉骨茶は、骨付きの豚肉、湯葉、チンゲン菜のような野菜、エノキ、マッシュルームを漢方薬で煮込んだもので、スープを飲むと、体がジーンとしびれる感じがしました。そうしたら泣きたくなりました。帰りたい。
    帰りたい。日本に帰りたいです。外国は、つらい。自分がいつまでもどこまでも考えの甘い、日本の女のコだということを、ひしひしと思い知らされます。
    英語がわかる人にも、私の英語は通じないんです。もっとハキハキ喋れば通じるのかもしれないのに、私は自信のない喋り方しかできない。
    思えば日本でもそうでした。日本語がわかる人にも、私の言葉は通じない。
    誰にもなんにも、通じないんです。

    P.121
    「神様へ
    私は夜に、布団に入ってもなかなか眠ることができません。
    電灯を消すのが怖いので、どうしても消すことができない。目を閉じると薄闇ができるので、この闇で眠ろうと思うのですが、まぶたを閉じても、外が明るいのはわかるんです。神様は、夜に眠ることができますか?
    丸山君枝より」

    「丸山君枝ちゃん
    私は眠ったことがありません。いつでも起きているのです。
    君枝ちゃんは『夏』や『虫さされ』や『眠り』のある、素晴らしい世界に住んでいるのですね。
    神」

    「神様へ
    そうかもしれません。私は素晴らしい世界にいるのかも。
    お風呂に入らないでいると、痒くなる、あたたかい体を持っています。
    そしてお風呂に入ると、石けんの泡が、毎回違う形になるのを見ることができます。その泡の形は、そのときだけののもの、世界で私だけが見たものです。
    葉っぱの影の形もそう、雨が窓を伝う水滴の形もそう、私だけが見ています。
    立派な人間になれなくたって、周りの人に迷惑をかけたって、こうした化学変化が絶えず起きている世界で生きていけるのは嬉しいことです。
    丸山君枝より」

  • 過去と現在をいったりきたりしながら物語は進む。劇的な展開はないんだけど過去と現在がゆるやかにリンクしていく。私はこの淡々とした感じ結構好きだな。タイトルもいいな。新田との再会と、新田の告白におおっっとなった。ミカミさんが好き。2011/040

  • 神様に祈ること。

    わたしもあります。
    夜寝る前とか、手をあわせてみたり。
    これもわたしの「宗教ごっこ」なんだろうな。

    主人公・丸山は強くありたい、自分は自分でありたいと、強く思っている。(と私は思う。)だから周りになじみたくないって思うんだろうな。
    内心周りの人間をバカにして、自分の気持ちを誰にも理解してほしくないし、だれも理解できないと思ってる。
    少し、自分に似てたから共感できた。

    でも、歳をとるごとにだんだんと
    自分の気持ちを知ってほしい人、知りたいと思える人に出会っていく。
    だから人生は面白いし、人とランチを食べたいって思う。

  • 女の考えてることわかんね(´Д`)でも丸山(主人公)の価値観には共感がもてる。そう、めんどくさいやつ。社会に順応できないやつ。みんなのように上手く立ち回れないやつ。
    山崎ナオコーラは2作目だけどきらいじゃないな。
    なんか変な人ばっかりだから最後の1ページまで結末が予測できなくてすき。

  • 若い頃に読んだらハマったかも。今はそうでもない。

  • 読み終わったあと思ったのは、映画みたいな小説だなーという感想でした。
    仕事を辞めてミャンマーへ行く現在、犬井やタカソウ、新田、鈴木と過ごす中学時代。場面展開が切り替わっていく中で、次第にそれぞれの境が無くなっていく感じ。旅が見せる郷愁のようなものだったのかなあ。
    中学時代は皆と同じようなことをしたくなくて反抗していた丸山が、ミャンマーでは周りにどう見られているか考え浮かないように巻きスカートとサンダルを買っていたのには「そうか、そうなったか」と。社会に溶け込もうとしている丸山。でもランチは自分がしたいように食べたいから転職しても外で食べるという。私も学生時代、そして社会人になってからも決まったグループでランチをとる文化(?)に嫌気がさしているのでちょっと共感…。
    登場人物たちや文章のちぐはぐ感が隠されていなくて、それが妙な人間っぽさを魅せているように思った。作者のなかに子どものような幼い部分がまだあるんじゃないのかなと考え、(25歳で丸山が自分を“女のコ”と言ったので、その部分に感じた)かっこつけないところに、私は密かに嬉しくなった。

  • 独特な世界観からはじまり、終わる
    誰もが思う、「自分って変わってる?」の
    ごく普通な世界の話しです

  • タイトルがいいなと思いました。
    犬井は? 三上さんは? など、気になるところほどあえて結末を見せず、読後に靄がかかった感覚になるのも含めてひとつの作品なのかもしれないな〜と思ったり。思わなかったり。
    ストーリーがあるようでないような とりとめのなさ、その浮遊感が浮世っぽかったです。

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著者プロフィール

1978年生まれ。「人のセックスを笑うな」で2004年にデビュー。著書に『カツラ美容室別室』(河出書房新社)、『論理と感性は相反しない』(講談社)、『長い終わりが始まる』(講談社)、『この世は二人組ではできあがらない』(新潮社)、『昼田とハッコウ』(講談社)などがある。

「2019年 『ベランダ園芸で考えたこと』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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