諜報新撰組風の宿り: 源さんの事件簿

著者 :
  • 河出書房新社
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感想 : 18
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  • Amazon.co.jp ・本 (262ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309018058

感想・レビュー・書評

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  • 故郷長州を追われた壬生浪士・佐伯又三郎。彼は隊内の間者なのか―。芹沢一派の駆逐を謀る土方歳三。芹沢たちは、大和行幸を企てる浪士集団と通じているのか。近藤派の相撲興行の思惑は?斎藤一は何者か。歴史が動いたその時に、井上源三郎は巻き込まれながら「謎」を追う。時代のからくりの謎に挑む、新境地の新撰組書き下ろし長編小説。

    ■■「新撰組捕物帖」の続編のようなそうじゃないような。前作と同じ主人公でも、今回は捕り物っぽい話ではなく。全体でひとつの大きな物語になってました。その中で小さな推理がちょこりちょこりと含まれているという感じ。今回は新撰組結成(当時はまだ壬生浪士と呼ばれていたころ)から芹沢暗殺までの期間のお話。けど、こんな解釈はちょっと初めてでかなり面白かったです。

    キャラ一人一人がとにかく一途で愛おしい。源さんのお節介ぶりに辟易されながらもその温かさにみんながほだされて流されていくのが、好き。優しくされて喜ばない人はいない。にしても、土方さんが前回よりも数段登場シーンを増やしまして、とにかくかわいい。源さんのせいで苦労ばっかりしてました。その苦労振りがかわいいのなんのって。真っ暗な土蔵の中で拗ねた顔してしゃがんでたり、源さんに飛びついてみたり、ふてくされてみたり。この人側に欲しいよ。

    後半物語が大きく進んでいくと、一気に引きこまれました。生きることは、戦うことなのだとこの時代を見るたびに思う。ただひたすらにひたむきに、己の居る場所を居られる場所を求め守り戦ってきたんだなぁと。


    (くそう、すっかりまた痛めちまった。これァ前よりひどいんじゃねェか)
     脂汗を額に滲ませる源三郎に、
    「その腰じゃ歩くのは辛ェだろう。灸をすえてやるから今夜はここで寝ろよ」
     歳三が珍しく優しい言葉をかけてくる。冗談じゃないと源三郎は首を左右に振って辞退した。歳三の横に寝かされたら、絶対に抜け出せない。額の脂汗が冷や汗に変る。
    「なに、気持ちだけもらっておこう」
    「俺とあんたの間柄で遠慮するもんじゃねェ」
     遠慮じゃねェ、とは言えないから源三郎は金魚のように口を開閉する。
    「いや、あのな、トシ・・・・・・」
    「こうなったのも俺のせいだ」
    「なんだって」
    「俺があんたの腰のことを忘れて飛び掛ったりしたから、せっかくよくなってきたってェのに悪化させちまった」
    「なに深刻ぶってるんだ」
    「俺の石田散薬もあんたの腰にはあまり効かねェようだし」
    「効いてるよ」
    「もし、あんたがこのまま腰砕けになったら」
    「縁起でもねェ」
    「俺が一生、世話をする」
    「あのう、トシ・・・・・・さん、さっきからなにを言ってるんですか?」
    「とりあえず今日のところは灸をすえようという話だ」
    「・・・・・・へえ、それは気付かなかったよ」

  • 浪士組の佐伯は長州の間者なのか。。。

    風の宿りという言葉はなるほどなぁと。
    長州勢が出てくるのも良いけれど、斉藤一と土方が手を組んだシーンが印象的。ここから、会津のシーンなどにつながったのかと思うと、感動した。

  • 時代屋で秋山先生にサインいただいた。
    死ぬかと思った。
    時代屋の店員のおにいさんはいいひとです。
    ありがとうありがとう。

  • お節介でお人よしな源さんは隊士たちの心の拠り所だったのだろうなあと感じます。事件が事件ですので前回よりも土方の登場が多く、また源さん視点なので土方の冷酷さの裏にある人間味を浮き彫りにしています。愛おしいです。局長のまわりをいつまでも馴染みで固めるのもどうかと…という源さんの気持ちも同意できます。

  • 13/02/06 新撰組モノにしてはシャープさに欠ける気がする。

  • 本を読むきっかけになった1冊と作家さんです。
    図書館で出会いまいた^^
    新撰組大好きなのですが、源さんが主役の話ってあんまないですよねぇ
    何気に源さん好きだったので、事件簿 楽しめましたw

  • 源さん良い人だけど使えねええええええ!と思ってただろう土方さんの気持ちがよくわかる。タイトル通り間者が跋扈する話なのだが、源さんはいつも良心や人情で動く。計算も後ろ盾もなくただ動く。でも、隊士にとって新撰組が「風の宿り」となり得たのは、源さんがその源にいたからなのだな、と素直に思えた。「源さん」だけに。今回だけですからね、と言いつつ毎回協力する尾形が素敵。

    そしてやはり土方さんのことを書かずにはいられないわけだが、年長の源さん視点ということもあって、冷酷であることに必死で徹している、が不器用で人の良さが滲み出ている、といったどこか可愛らしく相変わらず大変魅力的でな副長でございました。

  • さすが秋山先生!と言わざるを得ない
    点と点が繋がり、線になっていく話の構成の仕方は
    一瞬も目が離せない!
    最後はジワっと目頭が熱くなりました

  • 新撰組の成立時におこった事件をもとにできています。でも、新撰組捕物帖のほうが読み応えがあった。

  • 三番目に読んだ秋山さんの本。
    井上源三郎、源さんにとにかく和む、和みます。人情家だけど、情に流されるだけでなし、理もわきまえざるを得ない葛藤も含めて、すべて優しくて愛しいのです。

    中村久馬と尾形俊太郎とで佐伯又三郎を助けにいくやりとりがとても好き。久馬の「だけど先生は、もしわたしが同じように命の危険にさらされたら、きっとなりふり構わず助けてに来てくださると、ごく自然に信じることが出来る人ですから」って台詞が、まんま、この話での源さんの本質を言い当ているなあとほかほかした気分になりました。
    お話の随所にひょうきんなやりとりがちりばめられているのも、可愛くて、好きです。

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著者プロフィール

1968年福岡県生まれ。活水女子短大卒業。2002年『歳三往きてまた』でデビュー。2017年『龍が哭く河井継之助』で第6回野村胡堂文学賞受賞。柳生新陰流居合道四段。主な著作に『伊庭八郎凍土に奔る』『密偵』『獺祭り白狐騒動始末記』などがある。

「2022年 『氏真、寂たり』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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