ひとり日和

  • 河出書房新社
3.14
  • (71)
  • (228)
  • (652)
  • (155)
  • (30)
本棚登録 : 2098
感想 : 453
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (169ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309018089

作品紹介・あらすじ

"人っていやね…人は去って行くからね"。20歳の知寿と71歳の吟子さんが暮らした春夏秋冬。第136回芥川賞受賞作。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 第136回芥川賞受賞作です。
    三田知寿の成長を春夏秋冬と春の手前の5つの四季の移ろいの中で描いた物語です。
    知寿の両親は、知寿が5才の時に離婚して、その後は母と暮らしてきたが。母が仕事で中国へ行くのを機に、どうしても東京に住みたかった知寿は、住まいを埼玉から東京の遠い親戚のおばあちゃんの家へ居候する事とする。会ったこともないおばあちゃん萩野吟子は、70を過ぎているがかくしゃくとして一人で生活している。
    そこは、新宿から京王線に乗って調布の方へ行った所で。駅のホームから家の中が見える古い家です。吟子さんが知寿の部屋として用意した一間は、鴨居に死んだ猫の写真が額縁には入って23個も飾っている、部屋全体が仏壇みたいな辛気ぐさい部屋でした。
    知寿は、この吟子さんの家からアルバイトをし、恋をし、セックスをし、別れを経験しと成長していきます。そんな姿を見ている吟子さんもボーイフレンドを作りと明るく一緒に生活していきますが……別れるときが来ます。

    【読後】
    誰にも拘束されずに、自由奔放に生きる知寿を見ていると、爽快で、羨ましく、自分にはできない人生を生きて行く姿に戸惑います。私が保守的なのか、こんな生き方もあるのかと一歩引いて客観的に見てしまいます。私は、仏壇のような部屋では、生活できません(笑)
    青山七恵さんの本を読むのは初めてです。

    【音読】
    2021年12月26日から2022年1月1日まで、大活字本を音読で読みました。この大活字本の底本は、2007年2月発行の河出書房新社「ひとり日和」です。本の登録は、河出書房新社で行います。株式会社大活字発行の大活字本は、上下巻です。

    ひとり日和
    2007.09株式会社大活字発行。字の大きさは…大活字本。2021.12.26~2022.01.01音読で読了。
    ★★★☆☆ 春、夏、秋、冬、春の手前、の5つの季節の物語。
    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
    【バックナンバー】
    青山七恵さんのバックナンバーは、私の本棚より「タグ」→「タグの一覧を絞り込む」に「青山七恵」と入力。または、その中から青山七恵を探してください。そうすると著者青山七恵さんの本が一覧表示されます。私は、本を登録するときには、著者名と登録した年(2022)で登録しています。冊数が多いシリーズ本については、シリーズ名でも登録もします。

  • 日々をただアルバイトだけのために消費し、何事に対してもやる気がないそんな20歳の主人公・知寿と初対面の親戚のおばあちゃんとの同居の話。
    吟子さんの年齢に負けず劣らずの快活さと人生を楽しんでいる描写が、主人公の知寿と対比されていて、知寿のやる気のなさに加えて性格の捻くれ方が際立っていた。
    そして、主人公よりも二倍も三倍も長く人生を生きている吟子さんは、この世の中のいろんなことを知っていて見てきたのだなということが、作中の細かい描写からも伝わってきた。
    ストーリーが大きく春夏秋冬で分かれている構成となっている。そのため、人間関係や恋の悩みとともに季節が移り変わっていく描写や様子が印象に残った。
    また、主人公の手癖の悪さは以前付き合っていた二人の恋人にもばれていただろうと感じる。

    「吟子さん。外の世界って、厳しいんだろうね。あたしなんか、すぐ落ちこぼれちゃうんだろうね」
    「世界に外も中もないのよ。この世は一つしかないでしょ」
    吟子さんは、きっぱりと言った。そんなふうにものを言う吟子さんを、わたしは初めて知った。その言葉を何回も頭の中で繰り返していたら、自分が本当に何も知らず、無力であるように感じられてきた。

  • 人っていやね......人は去っていくからね。
    20歳の知寿が居候することになったのは、 母の知り合いである71歳・吟子さん
    の家。
    駅のホームが見える小さな平屋で暮らし始めた私は、キオスクで働き、
    恋をし、吟子さんとホースケさんの恋にあてられ、少しずつ成長していく。
    選考委員が絶賛した第136回芥川賞受賞作。

  • なんか懐かしさを感じた。
    著者の青山さんと私はほぼ同年代。
    青山さんが20代前半のときの作品なので、その頃の自分の気持ちとか、感情の起伏とかを思い出して、色々懐かしく、そして恥ずかしくなりながら読んだ。

    私も20代の時、主人公知寿と同じように「早く年取りたい、そうすれば、今のような悩みを抱えなくてすむはずだ」と思っていたっけなぁ。
    たしかに、40が間近に迫った今、20代前半の時と同じ悩みは抱えていない。今は今で悩みはあるけど、おおむね満足して生きてる。
    20代前半の「満たされなさ」「不安」。あれは一体なんだったんだろう。
    自分自身のことなのに、すっかり忘れてしまっていた。この本読んで、少しだけど客観視することが出来た気がする。

    知寿って、ふわふわ生きているように書かれているけど、かなり自分を持っている人だと、私は思った。
    だって、親に大学行けば?と言われて、勉強したくないから行かないってはっきり言えるのはすごいレアだと思う。
    大学生って、勉強より、遊んで恋してバイトして…がメインだし、余程でなければ卒業はできて、大卒で就職もできる。この世代では女性でも大学進学する子は多いし、親がお金出してくれるなら大学行くって人が多いと思う。
    進学することで社会人になることを先延ばしにしたいという下心も、私にはあった。
    だから、知寿が「大学はいかない、勉強したくない」ってはっきり言えるのって、すごいかっこよく思えた。

  • 主人公は親戚のおばあちゃんと、期間限定のふたり暮らしをすることに。
    彼女とは面識もなく、初対面での同棲。

    吟子さんとの毎日に慣れていくのと同時に、
    恋も。人間関係も。吟子さんとの日常も。
    いつか来る、避けられない終わりを恐れながら過ごしている主人公。

    いつかくる別れを想像して心が揺さぶられる感じ、
    すごくすごく分かる。
    もう既に懐かしさを感じて、苦しくなるもの。

    それと、吟子さんとのやり取りはどこか安心感があって、時間がゆったりと流れているようだった。
    おじいちゃんとおばあちゃんの家を思い出した。

  • 本文の装丁が好き。綿矢りさの「蹴りたい背中」と似てて、左右に余白を多めにとって、少し大きな字で本文。雰囲気が伝わってくる感じ。
    と余談は措いておいて、本編。この、屈折した純粋さ。ぼやっとドライに生きているようで、つきあってすぐ寝ちゃう主人公。嫌悪を抱かないのは正直だからかな。お年寄りに余分な気遣いはせず、計算しながら、でも表面には出さないしたたかさ、自分と重ならなくても「あるわ~」と思ってしまうね。

    そして上で意図せず書いたけど、「蹴りたい背中」に続いて今作も芥川賞受賞作なのね。びっくり。でも、なんとなく読み返したくなる感じに納得……かも。

  • 読みやすい本だった。
    主人公が同世代ということもあり,自分に重ねて読むことができた。
    なんとも言えない、言葉では表現できない良い気持ちになった。

    おばあさんと同居している話

  • 高校卒業後ぷらぷらしていた20歳の女性が、
    東京で70を超える吟子さんと暮らし始める話。

    -----------------------------------------------

    みんな誰かと繋がりたいんだなというぼんやり感じた。

    繋がりを家族に求めない知寿は、東京で吟子さんと交流し、恋人と繋がったり、離れたりして、自分の繋がるひとや場所を見つけていく。

    吟子さんもホースケさんと繋がっている。年齢とか身体の接触は問題ではない。

    知寿の盗癖にスポットライトが当たるかと思ったら、それは違くて、人との繋がりについての価値観が主題だったように感じた。


    大学を、「何がやりたいかを探す場所」と表現することがよくある。

    この小説の主人公、知寿は大学に行くことを拒否するが、自分が繋がる場所を見つける。

    大学が自分の繋がる場所や人を探す場所なのだとしたら、
    知寿さんにとって吟子さんや駅こそが大学なんだろうなと思った。

  • 将来に対する漠然とした不安は多くの人が持っているものだと思う。
    年老いた時に幸せと思えるような、納得いく人生を送ることができるのだろうかと。
    この本の主人公もそのような不安を抱えて生きている。主人公は強くありたいと願いながらも、物語のはじめのうちは考え方や行動が甘い。しかし、やがて少しずつ自立へと向かっていく。
    幸せな人生を送りたいと願いながらも、その願いの大きさにひるんで二の足を踏むよりも、まず一歩踏み出してみること。そして自分の心に映る風景を少しずつ変えていき、そこから何かを学んでいくこと。
    この物語を読んで、そういうことが大切なんじゃないかと思った。

  • 最後あたり、涙がとまらず。


    藤田くんの心変わり。
    どうしようもなさ。

    どうしようもなくても、苦しい。読んでて、悲しかった。

    「じゃあね」
    と笑顔で手を振ると、
    「じゃあね」
    と彼は返した。
    「連絡しないほうがいいね」
    「できれば、そう」
    「じゃ、そういうことで」
    心では、ちがうちがうと叫んでいる。


    あぁ。好きな雰囲気の本でした。

全453件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

二〇〇五年に「窓の灯」で文藝賞を受賞しデビュー。〇七年「ひとり日和」で芥川賞受賞。〇九年「かけら」で川端康成文学賞受賞。著書に『お別れの音』『わたしの彼氏』『あかりの湖畔』『すみれ』『快楽』『めぐり糸』『風』『はぐれんぼう』などがある。

「2023年 『みがわり』 で使われていた紹介文から引用しています。」

青山七恵の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×