吉村昭

著者 :
  • 河出書房新社
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本棚登録 : 17
感想 : 1
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  • Amazon.co.jp ・本 (333ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309018713

作品紹介・あらすじ

戦史小説、歴史小説、記録文学、純文学短編で一時代を画した作家・吉村昭を、斯界の第一人者が追った本格伝記。その誕生以前から逝去まで、多岐にわたる関連文献に目を通して、吉村昭の人と作品を追跡、その作品の裏側にまで迫る。

感想・レビュー・書評

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  • 吉村がどうしてあのように歴史を忠実に調査し、再現していこうとしたのか彼の先祖(福島正則に仕えていた)を追いかけて三重、静岡を訪問することから始まり、彼の生まれた日暮里周辺の情景が与えた影響にまで及びます。伝記ともいうべき内容は初めて読みましたが、私小説として彼の父母、多くの兄たち、そして弟のことが書かれていますので、確認するようなものでした。幼年時代の家族から大切にされていなかったというトラウマ、太平洋戦争、母と父の相次ぐ死、学習院大学へ入ってからの肺結核の闘病などが与えた彼の作品への死の色濃い反映など、改めて解き明かされたように思います。そして、「戦艦武蔵」ほか多くの作品に見られる戦争の空しさに対する冷めた思い、「破獄」「長英逃亡」「輪王寺宮の悲劇」など、一寸した行き違いから徐々に追い込まれていく心理描写の巧みさなど、作品を振り返りながら思い出しました。「桜田門外の変」では史実を忠実に再現するために当日の雪が何時頃に止んだのかにとことんこだわったということに、吉村の真摯な姿勢を感じます。悲劇の主人公たちの心理を描くことでは超一流の作家でした。

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著者プロフィール

1941年大阪市生まれ。文芸評論家。小社編集者として『埴谷雄高作品集』『高橋和巳作品集』を世に出す。著書『わが幻の国』で平林たい子文学賞、『武田泰淳伝』で伊藤整文学賞受賞。他の著書に『謎解き「死霊」論』『文士と姦通』等がある。

「2016年 『大岡昇平 文学の軌跡』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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