「悪」と戦う

著者 :
  • 河出書房新社
3.57
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本棚登録 : 658
レビュー : 132
  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309019802

作品紹介・あらすじ

少年は旅立った。サヨウナラ、「世界」-。衝撃のデビュー作『さようなら、ギャングたち』から29年。高橋源一郎による"世界文学"の誕生。

感想・レビュー・書評

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  • 星3.5
    この人の作品の感想を書くのは難しい。
    容赦なくぐさぐさと突き刺さりまくり…けど嫌いじゃないの。
    ストーリーが普通じゃないし整備された道じゃないから読み手は草刈り鎌を手に持って草を薙ぎ祓いながら冒険しないといけない。付箋も貼らなくていいし、ここ重要だな…とか余計なことに気を遣わずに読むことができる。きれいなことを装飾してキラキラした世界を読者に見せたりしないから嘘つきじゃないと思う。さまざまなものが隠されていない剥き出しな状態で、悪も快も不快なことも見たくないことも全部含めて、清濁併せて飲まされる…というか、これが世の中だし、これが物語の本当の姿なんだとか思った。そして誕生の瞬間を体験して泣く。

    ランちゃん、キィちゃん、ミアちゃん、マホさん、、ミアちゃんのママ、わたしが登場する。⇒次は『ゆっくりおやすみ、樹の下で』を読む。

  •  最初はミアちゃんの「奇形」という設定を見て、「ああ、こういう人は常に人の悪意に晒される、っていうことなのかな?」とのんびり読んでいたけど、その後は文章がものすごい勢いで私の中を駆け抜けて行った感じ。読んでいる間はこれが傑作か駄作か判断する暇もなかった。
     でも、この小説を読んだら、「悪」とは何なのか、誰もが考えてしまうのではないか。
     「世の中善悪二元論じゃ語れないよね」なんて、そんなありふれた知ったかぶりはくそくらえだ。誰にでも当てはまる答えなんてはじめから期待してない。そんなものがないことくらい、分かりきっている。お前にとっての「悪」とは何かを聞いているんだ。――そんな問いを差し向けられたような気がする。その問いに、わたしはまだうまく答えられない。

  • 2013年6月13日現在、自分にとって本当に大切な本をひとつ挙げるとしたら、これだ。「悪」とは何なのか、とか。この小説のテーマは何なのか、とか。そういう括りではとても語り切れない。集団の生きづらさ。圧倒的な強度で振りかざされる正義。編集されなかったものたちの叫び……おれは一つひとつの、たくさんの孤独について、もっと考えなければならなかった。
    高橋せんせいが見せてくれた世界はとてつもなく大きくて、今の自分の言葉では全然足りない。ひとつ、大切なことを精一杯語ると同時に、いくつもの、大切な何かをこぼしてしまう気がする。
    もしかするとここに書かれていることは、文学にしかできないこと。文学の言葉でしか語れないこと。なのかもしれない。でも、文学だからこそ、これほどまで潜れる。文学の言葉だからこそ、こんなにもつなげられる。っていう言い方もできる。そう考えると、文学ってすごい。

    世界はこんなにもデタラメで、みんな散り散りだけれど、言葉で何とかつなげられるかもしれない。それだって決して完全ではないけれど、今よりもずっとまともな間違いができるかもしれない。だから言葉を磨くのだ。思考を鍛えるのだ。そんな、生きる活力を与えてくれる作品。また文学に救われた。

  • それこそ舞城とか(140太字で「あたし」とか、口語&非日常)との違いってなんだろう、と考えたときに、いちばんに浮かんだのは一人称(「わたし」「ぼく」)の安定感かなあって点でした。
    「〈私〉とは?」とかいう問いかけがなされていて、「私は異常かもしれない」とか独白して実際わけのわからない状況にあったとしても、「その〈私〉」として(あり方、考え方が)確立されてるかんじ。
    精神が健康? ……うーん。
    じゃあ会話の口調が似てる春樹は? ……それは世代と読書傾向か。ていうか「構造」って意味わかんないが公式、みたいなのが彼にはあるからこれはね。

  • 生まれて初めて読んだ高橋源一郎の小説は「さようならギャングたち」の講談社文庫版。手元にある黄ばんだその本の奥付を見ると、昭和60年の第一刷だ。たぶん私は14歳の中学生。それから四半世紀が過ぎて、高橋さんが「いまのぼくには、これ以上の小説はかけません。そして、これ以上の小説を書くことが、ぼくの、次の目標になりました。」と書いた「今ベスト作品」を、手にとって読む。至福の時間でした。

    正直、「ゴーストバスターズ」以降(室井さんと結婚してた頃か?)の作品には、落胆することが多かった。これは、自分がひたすら見たいと思ってきたギャングたちやレノンVS火星人やペンギン村の向こう側じゃない、と。ブンガク入門的な本ばっかり出している高橋さんにどこかイライラして、もう終わっちゃったんじゃないか、と思ったこともある。そして、2010年、高橋さん自身が「ギャングたち」の忘れ物を回収にいった、というこの作品は、その言葉に対する嘘偽りのまったくない未来への贈り物でした。待っててよかった。そして、この先の高橋さんの作品が、このもっと向こう側に行くこともまた、楽しみでならないのです。

  • 久しぶりに感動して涙がでそうになった。
    現状に苦しむ人が、価値や世界の転換を望む時、それが「悪」の行いとして立ち現れるということは、現実にままある。でも、愛とか強さで何とか踏みとどまって、戦って、世界は維持されてる。
    「悪」は本当は正しいこともある。でも、マホさんのように、自身が世界から何も与えられなかったけれど、それを守ろうとする人の存在を思う時、自分の現状に踏みとどまろうとすることの勇気が得られるのではないかな。
    しかし、子供って可愛いんでしょうね~。

  • よくわからん。

  • 机にほったらかしてあった本。ようやく読了。これって感想書けません。心拍数が上がりました。

  • 高橋さんの小説は初めて読んだが、面白かった。

    悪の姿は明らかには書かれていないが、なんとなくあぶり出されている。ミアちゃんを愛しているという話が、いろんなバージョンで出てくるんだけど、それが切なくも美しいのだな。世界を救おうとしてランちゃんが一生懸命に戦っているようなんだが。

    この世界というのは、一体なんなんだろう。そういう永遠の質問に対して、一生懸命に答えようとしている。私の好きなジャコ・ヴァン・ドルマル監督の映画「八日目」みたいな、寓話っぽい真実の話かもしれない。すっかりファンになった。

    年を取ってから生まれた自分の子どもがかわいいあまりに、こんな小説を書いたという書評を読んだりもしたけど、まあ、それがきっかけでもいいんじゃん?

  • 「世界」文学の新たな金字塔。不条理なようにみえて、その実、現代の社会問題を鋭く切り込んでいる。読了後、感動して涙が出そうだった。僕らは、生まれてきた、それだけでも十二分にしあわせだったのだ。
    文句なしの大傑作といえよう。
    印象に残った一文を引用しておく。
    「さようなら、世界。ぼくは、その秘密も、その美しさも、味わうことはできなかったけれど。」

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著者プロフィール

高橋源一郎(たかはし げんいちろう)
1951年、広島県生まれの作家、評論家。明治学院大学国際学部教授。1981年『さようなら、ギャングたち』で群像新人賞優秀作を受賞しデビュー。『優雅で感傷的な日本野球』で第1回三島由紀夫賞、『日本文学盛衰史』で第13回伊藤整文学賞、『さよならクリストファー・ロビン』で第48回谷崎潤一郎賞を受賞。

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