あられもない祈り

著者 : 島本理生
  • 河出書房新社 (2010年5月13日発売)
2.81
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  • レビュー :315
  • Amazon.co.jp ・本 (176ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309019819

作品紹介・あらすじ

"あなた"と"私"…名前すら必要としない二人の、密室のような恋。島本理生の新境地。至上の恋愛小説。

あられもない祈りの感想・レビュー・書評

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  • いつも扉を開くのをためらってしまう、島本さんの本。
    今回も借りたはいいけど、1週間くらい放置してしまった。

    読み始めたらもう止まらなくて、一気読みでした。
    ますます言葉が表現が、きれいで驚きました。

    胸が心臓が握り潰されてしまうんではないだろうか…っていうくらい圧倒的で、痛い、苦しい。でも読んでしまう島本作品。

    この人の言葉や描写は「正しい愛をたっぷり受けた幼年期を過ごした人」には理解できないと思う。

    『私だけを見て。いつもここに帰ってきて。私だけを選んで愛して』(158P)

    幼年期に愛されなかった心の穴を、不毛な偽りの愛で埋めようとする必死さが苦しい。どうやっても何をしても埋めることが出来ない穴。

    アダルトチルドレンとか共依存とか…
    自己否定、自分に存在する価値を見いだせない迷路みたいな作品

    賛否両論で評価は低めだけど私は心をえぐられるくらい好きだ。えぐられるから好きなのかもしれない。

    『最終的に、自分のことは自分でどうにかするしかないだろ』(83P)
    の一言につきるのである。
    そして立派なことを言う“あなた”が一番脆く、病んでいる。

    卑怯な“あなた”だったら“あなた”が『私よりも深い場所で溺れている様を見せてよー!』という…気持ちになる。タイトルがすごいな…と思う。

  • ということで半ば義務だった、島本理生『あられもない祈り』を読んだ。1時間半で178ページを読み終えた。感想は『時間の無駄』だった。
    久しぶりに読んで腹が立ったので、ファンには申し訳ないけど、不快なほど書く。

    以下、毒吐き。

    彼女はプロの小説家か?

    エピソードをやたらとちりばめて、最後の方でそのうちのひとつを切り札のようにして話をまとめるという安直な手段はよくあるのだけど、これもそうだった。
    しかし、数多あるその他の作家の場合はまだ『そう来たか』とそれなりに考えさせられるのだけど、これは何のことやらという感じだった。だから、ちりばめたエピソードはただの断片の散らかりでしかなかった。

    場面に深い意味を持たせて欲しかった。ホイホイ終わるので意味を見出しにくい。もっと場面を少なくし、それぞれにつっこんで書き込んで欲しいかった。

    婦人科のシーンはまったく意味が分からない。これは僕が男だからだろうか? わざわざ石垣島を選んだ理由が分からない(作者が)。やたら旅館とか民宿に行くが、それもよく分からない。いろいろ行き過ぎである(実家への仕送りでお金がないくせに)。

    しかも登場人物の印象が弱い。書き込みが足りないせいだ。
    そもそもこれは病人同士の寄せ集まりの小説という感じがする。インビとか退廃といったムードではなく、ただの不健康さだけが目だつ。

    自傷癖女、DV男、奔放な父、似たような母、存在感の不明な中年男にイメージの湧かないその恋人。変な人間を集めてうじゃうじゃやっただけである。
    全員、体操服に着替えて山の小学校でキャンプでもするといいわ。

    ああ、腹が立った。

  • 読んでいくのが何度もつらくなった。切なくて、苦しくて、痛かった。絶望しかないのに、その場所でしか幸せや安心を得られないなんて。背負った宿命が、傷つけられた過去が、苦しみながらも惹かれ合うことを肯定してくれる。与えられる痛みを確認しながらでしか、愛されていることに気づけない。全部を欲しがるのは、全部に興味がないのと変わらない。自分を責めるふりをして、世界を呪う。だけどそんなこと、本当にどうにもならないから。そう言い聞かせて、誰かの中に自分の出口を探してしまう。自分の出口なんて、本当は自分の中にしかないはずなのに。

  • 説明を限りなく排除して、どんどん言葉少なに、濃密になっていく。
    彼女らしさがつまった作品なんだと思う。
    息苦しくて切実で。

    でも私はこの作品がすごく苦手でした。
    「わたし」のことも「あなた」のことも、全然好きになれなかった。

    出口がないんじゃなくて、本気で出ようとしてないだけ。
    苦しみの中にいたほうが安心できるから。

    そういうことって誰にでもあるけど、その痛さを弱さとして振りかざすみたいなこの作品は、いやだな。

    ただ、このどうしようもなさの描写はとてつもなく的確で、だからこんなに苛々するんだろうな、とも、思う。

  • もっと愛せばいい。
    甘えることは、愛する者への義務です。

    島本さんはその言葉のとおり「結婚している男性との恋愛を真っすぐに」、「擁護するのではなく、赤裸々に」書くことを試されたのだと思う。
    それは読後感とは別のものとして考えたときに納得する。

    その状況での「真っすぐ」と、後味がよいとは言えない「赤裸々」さは、作者の意図するところによれば成功に近いのだと思う。
    ただ島本さんの作品を何冊か読んで来た者としては、喪失の淵でそれでもなにかを奪い取ろうとするところ、繊細さに同居する強かな生命力をなんらかの形で見せて欲しかった。

    しかし「私」の選択は、成人を向かえ、ある程度社会人として生活し、ほの暗さの浮かぶ帰る家を持つことしかできない女の、歩かねばならない道として現実味のあるものだったと思う。

    それでも、読者という不思議な次元の友人として声をつたえるならば。
    絶望なんてやさしい言葉で慣れた痛みにたえるような真似はやめて、幸せであること共に生きる穏やかさに「私」と「あなた」には挑んで欲しいと思う。

  • 寝る前に読み終えたら、作品が僕を捕らえてなかなか眠りにつけなかった。情景が浮かび、溢れてくる。

    最近は甘々な恋愛小説を読むことが多かったから、こうずっしり重いのは久しぶりだった。

    中盤で主人公の「私が、いつかの日に置き去りにされたあなたを、迎えに行くことはできますか」このセリフが僕のココロを捉えた。そこからは、ほぼいっきに読み終えた。後半はもう胸を締めつけられる様な、えぐられるよう感覚だった。

    名前のない「あなた」と「わたし」っていう表現に戸惑う人もいるかも知れないが、それが読者に自己投影しやすくしてるのではないだろうかと思う。

    最後にゲラ本をプレゼントしていたたき感謝しております。ゲラ本を読んでレビューを書くというのは初めての経験で楽しかったです。

  •  我が敬愛する西さんに、「金輪際恋愛小説は書かんとこ、」と思わせたという一冊。
     最初の一段落が圧倒的すぎて、知ってる言葉ばっかりやのになんやこの連なりは…!と衝撃を受ける。熱い蝋を垂らしたように勢いよく滑るファスナー、欲望を再生するための断片、泥まみれの縄となって縛り付ける、セックスは不透明。比喩の錬金術士かよ。ことばの美しさにため息が漏れる。苦しいという言葉を使わずに苦しい気持ちを表現するその技巧にただただ圧倒される。
     島本理生の小説は三冊目。「大きな熊が来る前に、おやすみ。」「リトル・バイ・リトル」を読んだ後もそうだったように、読んだ直後でも物語の淵がぼんやりしてる。この人はきっと小説を書いているのには違いないのだけど、絵画を見ているような感覚に陥る。話の筋はうまく記憶に残せないのだけど、いくつもの風景が脳裏にこびりつく。
     小説の楽しみは感情移入や共感だけじゃない。主人公は俗に言う「メンヘラ」というやつで、不倫にずぶずぶと身を沈める、その気持ちはわたしにはわからへん。それどころか、あかんあかん、そっちちゃう!!とイライラするほど。でも、最後にやっと、父に愛されたかったという気持ちを直視し、母の不幸(その境遇に慣れ親しみ、最良の心友のように愛していた)を拒絶した時、愛した男の幸せを祈ることができた。あられもない祈り、とはそうゆうことなんかな。

  • 女は、恋愛をすると、どうしてこうも面倒くさくなるのだろう。

    惜しげもなくこれでもかと配置される比喩は贅沢なほどで、羞恥とは無縁なのだけれど。

    でも、自分に傷をつけたり(それも決まって土曜日の夜)、男に旅への同行をほのめかしたり、物欲し気で、どうしようもなく面倒くさい。

    どんな賢い女も、恋愛をすると愚かになるから、恋愛はしないことにしている、…と言ったのは倉橋由美子だったか。
    実に正しい。
    恋愛をすると愚かになり、愚か者だけがするのが恋愛で、愚かであることを堪能するのが恋愛、なのかもしれない。

    文体は硬質で、嫌味も媚びもない。(だから最後まで読めた)

  • 島本理生が読みた過ぎてついにハードカバーに手を出した。重たいし読みにくいけど、でも読んでよかったとおもう。ギクリとする言葉がたくさん。
    あなた と 私の閉鎖的な恋愛について。いつも彼女が描く男性に惹かれるけど、今回はそんなことがなかった。素敵じゃなくて、私 が惹かれる理由がわからなかった。むせ返るような夏の憂鬱のなかで、なぜここまで求めるのかわからなかった。
    新しくなるほど抽象的な表現が増えていくひとだな、とおもう。読み解くのにもう少し時間がほしい。

  • 一度、読むことにつまってしまったけど二度目はスルスル読めた。

    「あなたの呼吸が止まるまで」を
    思い出してた。


    低温火傷みたいな感じ。
    それほど熱はもっていないのに
    いつのまにか強く傷を残してる。
    ジンジンと痛む。

    曖昧でぼんやりしてる。
    なのに明確で強い何がそこにはあった。
    それが愛かはわからないけれど。

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