野川

著者 :
  • 河出書房新社
3.41
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本棚登録 : 567
レビュー : 106
  • Amazon.co.jp ・本 (171ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309019956

作品紹介・あらすじ

両親の離婚により転校することになった音和。野川の近くで、彼と父との二人暮らしがはじまる。新しい中学校で新聞部に入った音和は、伝書鳩を育てる仲間たちと出逢う。そこで変わり者の教師・河合の言葉に刺激された音和は、鳥の目で見た世界を意識するようになり…。ほんとうに大切な風景は、自分でつくりだすものなんだ。もし鳥の目で世界を見ることが、かなうなら…伝書鳩を育てる少年たちの感動の物語。

感想・レビュー・書評

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  •  東京の西側郊外を流れる野川を中心とした物語。関東の地図を開いてみてください、東京と神奈川の境を西の奥多摩から東京湾に向けて、東西に多摩川が流れています。野川は西東京を流れる多摩川の支流。

     多摩川の周辺にはそれとは気づきづらいのですが、何段かの河岸段丘が残ります。東京側の野川の向こうには”はけ”という地形が残る段丘が広がり、周辺には武蔵野台地に浸み込んだ湧水が野川に流れ込んでいきます。

     物語の随所に自転車で走り回った地域が出てきますので、大変馴染みを覚えます。調布飛行場、東京天文台、東京外語大学、まだ緑の多く残る地域です。私のホームタウンは多摩川を渡った逆側の段丘、多摩丘陵です。

     長野まゆみさんの作品は初めてでしたが、皆さんの書評を見ると少し異なる雰囲気の作品なのですね。学校の課題図書ということで、深い伏線もなく素直にサラリとした文章でした。

     家庭の出来事も深く入り込まず、少年の心の中にも踏み込まなかったのは少し残念。あくまでも平静な感情が続きます。雨の日の父親との心の交流部分が唯一高まりを感じた部分。野川と周辺の風景が強く印象に残る作品でした。

    参考) 本棚にもあります
     ・東京の自然史  貝塚爽平 中央公論文庫
     ・追い風ライダー  米津一成
     ・ぼくらは夜にしか会わなかった  市川拓司
     ・耳を澄ませば  スタジオジブリ
     ・だれかのまなざし  新海誠・和紗
     

  • 高等学校の読書感想文課題図書と背表紙に貼ってあるのを見て読み出す。野川は東京に住む我々には身近な河川。出てくる地名、関東平野のでき方などに引き込まれて読み出す。

    主人公の中学生が両親の離婚で転校した中学で出会う教師、部活動の仲間、鳩(?)が皆、いい感じ。

    心の中の世界と実際の世界、上手く折り合いをつけて理解したり受け入れたりして生きていくんだね。ふたつの世界の調和するところが優しくて味のあるポイントなんだね。

    主人公と一緒に涙したくなった。
    普段は、すっ飛ばして読みそうな自然描写自体が大切な要素の物語。
    くどくならない程度に自然が語られている。
    人間関係がサラっとしているようで熱い!
    久々にシンプルに動かされたかんじ。
    星5つ

  • 長編。

    中2の音和おとわは両親の離婚、父の事業の頓挫で転校することに。
    転校先には、変わった国語教師の河井。3年で新聞部の吉岡。新聞部では伝書鳩を育て訓練していて、その中に飛べるのに飛ばないコマメが居る。

    肩に乗って、肩から肩へ移動するコマメが可愛い。
    音和の父親にも同情してしまう。
    お父さんはもっと仕事が出来るのにって思う子供の気持ちとか。
    伝書鳩が野生化したのがドバトって知らなかった。

    主人公に限らず、その親も詳しく描いてあるって前はなかった。気がする。

    意識を変えろ。ルールが変わったんだ。
    河井が転入してきた音和にかけた言葉。

  • 想像以上に「野川」でした。
    知っている地名らしきものがたくさん出てきて、楽しかったです。

    この本に出てくる先生のような大人になりたい。

  • 父の事業の失敗、離婚、母との別れ、転校と、物語が始まる早々、主人公は一気に今までとは異なる環境に放り込まれてしまう。そんななかで、新聞部(とは言え、実際には伝書鳩を育てるのが主な活動)の先輩後輩、そしてちょっと風変わりな国語教師との出会いを通じて、一歩ずつ前に進み始める。あまり良好とは言えなかった父親との関係も一応の和解をみる。
    2011年度の中学入試でも出題の多かったものの一つ。
    長野まゆみにしては、万人向けでさらりとした仕上がり。ただ、個人的にはどのエピソードも中途半端なままで終わってしまったように感じ、読了後にストンと落ちるような安堵感が得られなかった。「物語が閉じていない」感じと言えばいいだろうか。それは「余韻がある」というのとはまったく異質のものだと私は思っている。
    この作品この作者の限らず、どうも最近は、そういう作品が多いようにも感じる。

  • 著者がブログで、

    「中学校の教師と生徒の話を書いている。(妄想するな、まっとうな話だ)」(※うろ覚え)

    と書いていたのを思い出しました。

    確かに、
    国語の教科書に載っていたら、すてきだと思うくらい、まっとうな、
    教師と生徒たちのお話です。

    両親の離婚で野川のある街に引っ越してきて、環境の変化と複雑な心情に凝り固まった少年が、
    一風変わった教師と、教師が顧問をしている新聞部の面々と伝書鳩たちと触れ合うなかで、心をとかしていく。

    舞台がはっきりしているので、
    いつもより情景描写が詳細で現実味を帯びてます。

    そのぶん、その土地を知らないので入り込みが難しかったけれど、

    長野的少年たちの立ち姿というか、存在感は、やっぱり無性に心惹かれます。

  • 家庭環境が一変した主人公が新たな出会いをする中で成長していく物語。似た話に繋がりそうな場面が多々でてくるので、感想文は書きやすいと思う。影響を受けた先生や友達のこと、体験が重要視されている世の中で体験以上に感じることができた本や映画の話、人から聞いた話などを入れてみよう。飛ぶことができなかったコマメと主人公は重なる部分があるので、コマメとコマメを見つめる主人公の関係を考えてみるとおもしろい展開になりそう。伝書鳩に託す君の言葉を書き出しや結びに書くのもいいかも。

  • 長野まゆみさんの作品を読むのは初めて。両親の離婚によって、父親と一緒にくらすことになった音和少年が、武蔵野の野川という川が流れる土地の中学校に越して来る。印象的な語り口の先生や、先輩の勧誘もあって中学校では、新聞部に入部する。新聞部では伝書鳩の飼育もしていて・・・浮ついたところがなく、とても落ち着いて読める内容だった。自然や地形の表現を頭の中で描けなくて、それは読んでいて苦労したけれど(私にとってなかなかわかりにくかった表現だったので)、その他は淡々としているけれど、読んでいて心地いいものだった。さらっと読んでしまったので、また機会があれば再読したい。

  • 井上音和は両親が離婚したので住んでいたマンションから父親と一緒に安アパートに引っ越してきた。夏休みに引っ越したので新しい中学でも夏休みの宿題をしなくてもよかった。新しい担任の国語教師は「夏休みの出来事」を話す宿題はあるぞと言った。学校が始まり音和は新聞部に半ば強制的に参加させられた。国語教師に乗せられたのかもしれないが。その新聞部はなんと伝書鳩を飼っている。遠方から鳩に通信紙をくくり付けて話すのだ。学校が立っている河岸段丘。武蔵野を多摩川が流れていく。大昔の川に浸食された大地。野川の周りの自然の描写が美しい。

  • 長野さんの作品に出てくる学生は私からみると大抵大人びていて、それが好きです。
    このお話に登場するような先生と学生時代に出会えたら素敵だなぁと思いました。

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著者プロフィール

長野まゆみ(ながの まゆみ)
1959年東京生まれの小説家。女子美術大学卒業。1988年『少年アリス』で文藝賞を受賞。2015年、『冥途あり』で泉鏡花文学賞、野間文芸賞を受賞する。『新世界』『となりの姉妹』『箪笥のなか』『よろづ春夏冬中』『メルカトル』『カルトローレ』『45°』『ささみみささめ』『兄と弟、あるいは書物と燃える石』『フランダースの帽子』『左近の桜』シリーズなど著書多数。

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