「あの日」からぼくが考えている「正しさ」について

著者 :
  • 河出書房新社
3.65
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本棚登録 : 332
レビュー : 48
  • Amazon.co.jp ・本 (339ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309020921

作品紹介・あらすじ

「非常時」における「正しい」思考とは何なのか?果たして「答え」は存在するのか?高橋源一郎と一緒に考え、そして体験する、「あの日」からの297日。

感想・レビュー・書評

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  • ――幾人かの教え子は「なにかをしなければならないのだけれど、なにをしていいのかわからない」と訴えました。だから、わたしは「慌てないで。心の底からやりたいと思えることだけをやりなさい」と答えました。彼らは、「正しさ」への同調圧力に押しつぶされそうになっていたのです。
    (中略)
     わたしは「正しい」から寄付をするわけではありません。わたしはただ寄付をするだけで、偶然、それが現在の「正しさ」に一致しているだけなのです。「正しい」という理由で、なにかをするべきではありません。「正しさ」への同調圧力によって、「正しい」ことをするべきではありません。
    (中略)
     もし、あなたが、どうしても、積極的に、「正しい」ことを、する気になれないとしたら、それでもかまわないのです。
    いいですか、わたしが負担となる金額を寄付するのは、いま、それを心からはすることができないあなたたちの分も入っているからです。30年前のわたしなら、なにもしなかったでしょう。いま、わたしが、それをするのは、考えが変わったからではありません。ただ「時期」が来たからです。
    (中略)
     その「時期」が来たら、なにかをしてください。その時は、できるなら、納得ができず、同調圧力で心が折れそうになっている、もっと若い人たちの分も、してあげてください。共同体の意味はそこにしかありません。(32‐34頁)


     3.11からの「考え」を、ツイッターで呟き続けた高橋源一郎氏の思考の記録。あの日からの日々を振り返り、これからを見つめるのに最適の一冊。

    読了。鶴見俊輔さん、祝島の話に泣きそうになった。

    ところで祝島!埋め立て工事の免許失効おめでとうございます!!30年間も原発に反対し、週に一度のデモ行進を続けてきた祝島の方々、本当に素晴らしい。
    「原発がなければ国が立ち行かない」というご意見もなるほどな~と思いますが、こういうニュース見るとどうしてもご老人方の応援をしたくなる。
    でも応援するなら自分が節電しろよって話ですよね。もう寝ます。

    • ダイコン読者さん
      そうなんですよ~もっと早く読めばよかったなあと。
      「正しさの同調圧力」の話にすごく納得いきました。一年前の自分の気持ちを、きちんと形にしてく...
      そうなんですよ~もっと早く読めばよかったなあと。
      「正しさの同調圧力」の話にすごく納得いきました。一年前の自分の気持ちを、きちんと形にしてくれる言葉にやっと出会えた。
      変に浮ついた気持ちで寄付はしたけれど、寄付したことに何故か納得がいかず。100%善意で寄付したのか、周囲に流されているだけなのか自分でも訳が分からなくて・・・
      結局、仙台に行って「地球の楽好」さんで絵本の仕分けボランティアをして、被災地を案内して頂いて、少し気持ちがスッと下がったんですよね。
      あの頃の間誤付いてた自分の気持ちが、この本を読んでまた飲み込めた。源一郎氏、素晴らしいです。ボランティアは随時続けていきたいなと。やれること、今「時期」である事をやる。それしか人間にはできないんですよね、きっと。
      2012/06/26
    • 猫丸(nyancomaru)さん
      「周囲に流されているだけなのか」
      その時そうであっても、徐々に固まって、ご自身の真の気持ちだったと思えるようになりますヨ。
      「ボランティアは...
      「周囲に流されているだけなのか」
      その時そうであっても、徐々に固まって、ご自身の真の気持ちだったと思えるようになりますヨ。
      「ボランティアは随時続けて」
      ご無理されない程度に、、、全然出来ない私が言えるコトではありませんが。。。
      2012/06/26
    • ダイコン読者さん
      ありがとうございます!nyancomaruさん優しい。
      はい、無理のないくらいにします。私も言うほど出来てないんで、大丈夫かなと。自分のキャ...
      ありがとうございます!nyancomaruさん優しい。
      はい、無理のないくらいにします。私も言うほど出来てないんで、大丈夫かなと。自分のキャパの狭さ低さをしっかり自覚して動かないと数ヶ月引きずりますからね!(^^;)じわじわ成長したいものです。たまに後退しながら(笑)
      2012/06/27
  • ツイッターの言葉は日記風で内容が乏しいように感じたけれども、後半の色々なところへ寄稿した文章集は味わい深いものが多かった。
    高橋源一郎は随筆が良い。

  • 高橋源一郎はやっぱりほんとうに信頼できる。真摯な、やわらかい言葉はすっと入ってきて違和感がない。高橋源一郎のことばを読むと、なんとなく良さそうに見えていた実はそれほど良くないことば、というのがはっきりとわかるようになる。心が折れそうになっている個人の側に立つ、真の文学者によるこの本を読むことで、わたしはすこしずつ、あっだいじょうぶかもっておもえるようになる。ありがたいなあ。


    --「正しい」という理由で、なにかをするべきではありません。「正しさ」への同調圧力によって、「正しい」ことをするべきではありません。あなたたちが、心の底からやろうと思うことが、結果として、「正しさ」と合致する。それでいいのです。もし、あなたが、どうしても、積極的に、「正しい」ことを、する気になれないとしたら、それでもかまわないのです。……あなたたちには、いま、なにかをしなければならない理由はありません。その「時期」が来たら、なにかをしてください。その時は、できるなら、納得ができず、同調圧力で心が折れそうになっている、もっと若い人たちの分も、してあげてください。

  • 「祝辞」ある人にとっては、どんな事件も心にさざ波を起こすだけであり、ある人にとっては、そんなものは見たくもない現実であるかもしれません。しかし、その人たちは、いま、それをうまく発言することができません。なぜなら、彼らには、「正しさ」がないからです。

    「正しさ」の中身は変わります。けれど、「正しさ」のあり方に、変わりはありません。気をつけてください。「不正」への抵抗は、じつは簡単です。けれど、「正しさ」に抵抗することは、ひどく難しいです。

    「祝島」23「帰っておいでよ」曾祖母たちは、よくそんなことをいっていた。でも、ぼくは戻らなかった。いろんなものをよく贈ってくれた。みんな、ダサかった。だから、両親に「こんなものいらないよ」といって怒られた。その人たちが死んだ時も戻らなかった。ぼくは、田舎を捨てたのである。

    いまこの場にいない人間は、当然のことながら、発言することはできない。たとえば、来年、十年後、あるいは五十年後に生まれてくる人間は、まだ存在すらしていないが故に、「現在」について発言することはできない。だからこそ、いま生きているぼくたちは、彼らへの「責任」を負っているのではないだろうか。

    100年後、1000年後、わたしたちが棄てた放射性廃棄物を受けとる未来の人びとは、どんな風に思うだろうか。すでに、彼らには、原発はなく、もちろんその恩恵など受けず、ただ過去からの忌まわしい贈り物に悩まされるだけなのである。

    原子力発電所を喜んで受け入れる場所はない。だから、他にめぼしい産業のない貧しい場所が、「持参金」と引換えに、その場所を提供する。それは、中央に住むぼくたちの知らないところだ。そのようにして得られた電気で、僕たちは「近代的」な生活をおくる。そして、それを支えるために、何が行われているのかを知らないのである。

  • 社会
    文学
    東日本大震災
    災害

  •  自分自身があの3.11以降に読み方や書き方が変わった(あるいは変わったように感じる)のでない限り、なかなか共感は難しいように思える。
     わかるような気はするんだけれど、それ以上先には突っ込めない。
     もともとがTwitter上に発信された発言や、あちらこちらにばらけていた文章を寄せ集めたものであり(しかも一部の引用のみもかなり)やはり物足りなさはある。

  • 311以降の1年を振り返った、ツイートやエッセイ、論評や小説の冒頭などで構成された本。メディアも、SNSやブログ、新聞・雑誌と多様だ。内容の重複もあり、これら全てが綺麗にまとまるはずもなく、その混沌があの日からの日々そのものだったと、著者は語る。
    震災と津波そのものの災害よりも、長引く原発事故から巻き起こる非難の応酬や同調圧力、エネルギー問題などを巡る人々の混乱が、それぞれの相容れない「正しさ」を創り上げていく。そんな中で、著者は日常通りの生活を過ごすことで、変化を受け入れようとする。

    5年目を迎えた2016年3月11日は、あの日と同じ金曜日だった。著者がパーソナリティーを務めるNHKラジオの番組「すっぴん!」では、著者自身によってこの本からの抜粋が朗読された。あの日は、ご長男の保育園の卒園式という記念すべきハレの日。日常の一部であり、それでいて特別な家族の平和なシーンの朗読をバックに、保育園で人気だという歌『LET'S GO! いいことあるさ』が流れた。
    メロディーはどこかで聞いたことがあると思えば、オリジナルは"Go West" The Village Peopleで、カバーはPet Shop Boys。東日本で起きた災害で、自国民でありながらどこかしら疎外感が離れなかった西日本にいる自分は、これからどこへ行こうか?何を開拓しようか?いいことあるだろうか?そう思わずにはいられなかった。
    ただ過ぎ去っただけでなく永遠に失われた未来を背景に、子供たちの無邪気で元気な声で希望と未来が連呼される。慌ただしい朝の番組なのに、聞いていて思わず泣けてきた。
    http://www.nhk.or.jp/suppin/podcast.html

    また、著者が教壇に立っていた大学では卒業式が中止されたが、卒業生に宛てた祝辞は複数のツイートとして贈られた。これも、自身によって改めて朗読された。最後の卒業から時間が経った大人にも、今も深く響くメッセージだ。
    作家・高橋源一郎(@takagengen)さんの「震災で卒業式をできなかった学生への祝辞」
    http://togetter.com/li/114133

    元々、書籍の内容が多面的・多層的だった上に、さらに時間軸という深さも加わった。今も残るソースを一緒に辿ることで、改めて立体的に「あの日」を感じられる本であった。

  • 2015.6.28 読了。

    つぶやきのまとめはtwitterで読むほうがいいなあ。

  • Twitterのつぶやきと文章が大体半々。
    震災以後1年弱の間に著者が綴った言葉を収録した一冊。

    もう少し早く読めばよかったなあ。
    でも読めてよかった。とっておきたい一冊になりました。

  • <閲覧スタッフより>
    「正しさ」は揺らぐ。けれど「正しさ」のあり方に変わりはない。「正しさ」への同調に注意せよ。3.11から2011年末までにツイッターや様々なメディアで高橋源一郎が投げかけた「正しさ」とは。

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    所在記号:新書||914.6||タカ
    資料番号:10216831
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著者プロフィール

高橋源一郎(たかはし げんいちろう)
1951年、広島県生まれの作家、評論家。明治学院大学国際学部教授。1981年『さようなら、ギャングたち』で群像新人賞優秀作を受賞しデビュー。『優雅で感傷的な日本野球』で第1回三島由紀夫賞、『日本文学盛衰史』で第13回伊藤整文学賞、『さよならクリストファー・ロビン』で第48回谷崎潤一郎賞を受賞。

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