東京プリズン

著者 :
  • 河出書房新社
3.06
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本棚登録 : 821
レビュー : 141
  • Amazon.co.jp ・本 (441ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309021201

感想・レビュー・書評

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  • 「東京プリズン」(赤坂真理 河出書房新社 2012/7/6)をやっと読了した。

    この書物を、発行月内に”読んだ”と報告できることがちょっと誇らしい。



    もの凄い小説である。

    1980年中学卒業後、母親の意向でメイン州の高校に留学した主人公は、英語に苦しみアメリカの文化に違和感を覚えながら日々を過ごす。

    半年後、全校公開デイベートが行われる。デイベートでは肯定側、否定側2人づつのチームがそれぞれ立論、反対尋問、最終弁論を行い、審判が裁定を下す。

    論題-「日本の天皇には第2次世界大戦の戦争責任がある。」

    主人公マリ・アカサカは肯定チームに指名される。デイベートの完遂が進級の条件として与えられる。





    私にはまだこの小説について感想や所見を述べる能力がない。

  • 作者の自伝的な小説。最後の留学先でのディベートは圧巻!恐らく実際に作者の留学時代の事実ではないだろうが。

  • 小説という武器を使って、天皇と日本、戦争と暴力の出自をむき出しにする、その手腕に脱帽。ある意味著者のバイオロジーを剥き身にして晒す。「愛と暴力の戦後とその後」とパリティにして読むと腹に落ちる。
    読者に新たな日本人観、世界観の構築を促す力作。

  • 第1章の前に、「私の家には、何か隠されたことがある。そう思っていた。」との文が置かれています。
    「私の家」と同じように、日本にも、何か隠されたことがあります。
    これは私の予想ですが、日本には何か隠されたことがある、と肌で感じることができたのは、筆者の世代が最後なのではないかと思います。

    この小説は最終的には、主人公が留学(させられた)先のアメリカの田舎の学校で、「アメリカンガヴァメント」という授業の担当教員から命じられて、東京裁判のやり直しをディベートとして演じ(させられ)る、という場面で終わります。
    主人公が母によって留学させられる理由は結局はっきりしないのですが、母は自分ができなかった、あるいはうまくやれなかったことを娘にやり直させたいのだろうと思います。

    天皇というのも一つの役割で、異なる個人によって受け継がれ、時の権力者たちによって繰り返し利用されています。
    自らが天皇を利用している主体だということを忘れて、自分自身のコントロールを天皇の判断に任せ、自分の責任を放棄したことで破滅したのが大日本帝国軍部でした。
    戦後に天皇を利用したのはアメリカでした。アメリカによって天皇を再び祭り上げさせられ、平和憲法を持たされ、同時に新たな軍隊を持たされ、そしてさらにそのことを忘れようとしているのが、今の日本人です。アメリカに対して完全に去勢された存在です。

    日本にある「何か隠されたこと」とは敗戦です。
    触れないようにして、忘れようとしても、ふとした時に思い出させられて、日本人は苦しみます。あるいは、いつしか本当に忘れてしまって、その欠如のために自らを見失い、日本人は理由のわからない苦しみに襲われます。

    ベトナム戦争や東日本大震災も取り上げられます。これらも、日本人にとっての敗戦と同じく、民族の負い目の経験です。

    ここまで長く書きましたが、膨大な数のテーマが扱われた小説なので、私には拾い切れません。
    ちょっと長すぎ、詰め込みすぎの感もありますが、そのために、多くの人が自分の琴線に触れる文に出会える本だと思います。

  • 一度書いたレビューが飛んでしまったので長く書く気力はないが
    大傑作。ただ、1度読んだだけでは消化しきれない。
    わからないのではなく、立ち止って考えるところが多すぎて。
    マリ・アカサカは作者と同じ名だが作者自身ではない。
    そこが重要。自身の名をあえて作中に用いることで宙づりにしている。
    それはテーマにも重なる二重のフィクションとしてあるように感じた。

  • 妄想のところはわかりづらかったが、少なからず日本人としてのアイデンティティを揺さぶられる。
    帯にもあるように、外国語に翻訳して世に問うてもいいのではという作品だった。

  •  エンターテイメントでは、ない。
     複数の時間を往き来し、複数の人物が重なりあう。
     人びとの曖昧なアイデンテイを、表現するための文学的な方法としては、それほど珍しいものじゃない。
     リアルな小説ではないんだから。
     考えることの無かった、まさしく真空地帯に、楔を打ち込んだ。その時に、私たちは、何を知り、何を知らずにいたか。
     これまで繰り返されてきた理屈や論理が、あまりに表層的であったことに気付く。

     

  • タイトルから想像していたのとは全く内容が違いました。
    マリと一緒に混乱したり、途方に暮れたり、なかなか読み進まなかった。
    多分、同じ時代を共有しているからかも。

  •  米国に留学している1980年の「私」に、作家をしている2009年の「私」が語りかける。不意に視点が行き来する、時空を超えた対話を軸にしながら、留学先の高校でのディベートの授業を迎える。テーマは「天皇の戦争責任」。
     母、死したヘラジカ、ベトナムのシャム双生児、そして大君が語る言葉を浴びつつ、一度は敗れた過去のディベートに決着をつける。
     タブーともいえるこのテーマに踏み込み、胸がすく「言葉」を語り得る著者の筆力は凄まじい。折口信夫アニミズムっぽい天皇論はなんとなく曖昧に終わっちゃっても、「私」の物語は完結し得ている。
     ドキドキハラハラするような場面はないのに、読んでる間ずっと心臓はバクバクしてました。久々に小説を「読んだ」気分です。
     

  • 大作にして傑作。80年代と現在を行き来しながら、そして自分と母親と主体を行き来しながら、震災もからめつつ東京裁判、天皇、日本の近代を深く抉る。相当に読みごたえあり、面白いです。強力にお薦めします。

著者プロフィール

人間の知覚の限界に迫る『ミューズ』で野間新人賞、『東京プリズン』では、少女の目で「戦後」を問い、毎日出版文化賞、司馬遼太郎賞受賞。小説の他に、『愛と暴力の戦後とその後』『モテたい理由』など評論も話題。

「2019年 『箱の中の天皇』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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