屍者の帝国

  • 河出書房新社
3.53
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本棚登録 : 3052
レビュー : 426
  • Amazon.co.jp ・本 (459ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309021263

感想・レビュー・書評

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  • 魔法全盛の科学。

    メスメリズムとスチームパンクじゃ!わーお!
    科学史の中で二つの説、二つの道、二つの選択肢が提示された時。歴史上では選ばれなかった方に、正しくなかった方に進んだ話だと思っている。

    プロローグ以外は円城塔の執筆だけど、伊藤計劃が語り続けた人間のあやふやさは今作でも新しい形で書かれている。伊藤計劃らしさを感じられる大ネタだったので、遺作として見ても非常に満足している。

    日本編でちょっとお遊びが過ぎるかなー。
    あとまさかの神話的(蛸)ほのめかしにニヤニヤ。選ばれなかった方、正しくなかった方というネタの選定基準を考えればおかしくは無いな。

  • デストピア型物語作成ウェア「Project Itoh」をインストールされた小説作成機関「Enjoe Toh」が書き出した、拡張された世界の創世記であり黙示録。
    屍者とはだれか、死者とは、生者とは、そして「わたし」とはだれなのか、変数に代入する値によって幾つにも読み出される言葉の配列。

  •  故伊藤計劃による冒頭部分だけが残された作品を盟友・円城塔が長篇として完成させた本年国内SF最大の話題作。
     
     フランケンシュタイン博士による屍者復活の技術が世界的に広がった19世紀末。軍医となる道を選んだジョン・ワトソンはその才能を見込まれ、国から特殊な極秘任務の命を受ける。

     元々双方のファンなどにはよく知られたこの本の成立事情から、嫌が上にも注目された本作だが、期待以上の傑作だった。スチームパンクなどでも人気の高いヴィクトリア時代を背景に実在・虚構の様々な人物が入り乱れユニークなアイディアが次々に登場する大スペクタクルで抜群に面白い。意外な展開を盛り込みつつ、終盤にはなるほどというところに着地させる心憎い演出。また残されたわずかな冒頭部分から伊藤計劃を自らに憑依させ、彼の持ち味をきちんと発揮させ見事な合作に仕上げた円城塔は新境地を切り開いておりますます作家としてのスケールが大きくなったのではないだろうか。もちろん細部では円城らしいシュールなユーモアも見られるし。
     二人に共通する重要なテーマである言語が中核に据えられているところに最大のポイントがあり、真の意味での合作になっているところに胸打たれる。そしてそのようなドラマチックな成立過程を除いても、作品そのものが刺激的で示唆に富む一級のエンターテンイメントになっていることが何よりも素晴らしい。 
     

  • 圧巻。
    2000年代を駆け抜けた俊英伊藤計劃の残した長編のプロローグを、友人であり同時期から常に最先端を行く円城塔が書き上げた珠玉にして至高のSF。
    虚実交えた登場人物たちが織りなす思考・言葉のタペストリー。

    伊藤計劃の追い求めた言語や意識の問題を、やはり言語や記号を追求する円城塔が見事に再構築、『虐殺機関』『ハーモニー』だけではなく、『From the Nothing,With Love」をも包含し、円城塔がPuroject Itohの円城塔的完成形を提示した力作であり、円城塔のSF作家としての実力を見せつけた大傑作です。

    もともと話に合わせて文体を変えられる円城塔ですが、ここまで押さえた筆致で書けるとは、恐ろしい才能だ。

    間違いなく、今年だけでなく、オールタイムベスト級の傑作なので、読め!
    そうとしかいいようがない。

  • この作品が完成するまでの伊藤計劃と円城塔の「物語」を知らず『屍者の帝国』を手に取る読者はあまりいないと思うが、もしそういう読者がいるならば、その「物語」を知った上で読むことをオススメする。伊藤計劃と円城塔の「物語」を知っているか否かで、作品に対する評価は違ってくると思う。
    しかし、そういう意味においては「物語」を知らない人が読み、抱いた純粋な感想を知りたい気もする。恐らく現時点でブクログやAmazonでレビューを書いてる人は、その「物語」を知った上で読んだ読者であり、良い悪いは別にして、ドーピングをしているようなものだから。

    以前、円城塔の『道化師の蝶』を読んだ際に自分の読解力が不足しているだけの話なのだが自分の中に「円城塔=難解な作品を書く人」という構図が出来上がってしまっている。
    本作も決して読みやすい作品だとは思わなかったが、素晴らしい作品であることは間違いない。しかし私は一度で全て理解できたとは思わないので、再読の必要がある。

  • 読了。SFマガジンでさわりだけ読んだあの作品が、こんなふうに完成するとは…! 作品成立までの経緯を考えただけでも心動かされるのですが、それを抜きにしても、すごい作品だった。

    円城さんてこんな小説もお書きになるんだ、という驚き。伊藤さん筆のプロローグを受けての第一章からはたしかに円城さんの文章なのだが、なんだか「虐殺器官」を読んだときのような印象も受けた。登場するキャラクタやガジェット、ルビを多用する表現法のようなハード的な部分から、ナイーヴなまでに真正面から世界に向き合う姿勢といったソフト的な分まで。そして、これはおそらく著者ふたりに共通の関心分野なのでしょうが、「ことば」の重要性を示唆し、その可能性を信じていることが伝わってくる内容だったのが印象的だった。円城さんお得意の言葉遊びも健在。

    円城さんが河出書房のサイトの「あとがきにかえて」で述べられているように、いわゆる歴史改変ものという体の小説であり、映画「リーグ・オブ・レジェンド」みたいなオールスターのわくわく感がとても楽しい。まず一級のエンタメ小説なのは間違いない。私はこの小説に出てくる、某大尉殿が非っっっ常に好きだ。何このひとかわいすぎる。会話文もユーモア満載で、津原泰水氏が自身のサイトで述べられているように、これは円城さんの作品としては今までで一番多くの一般読者に受け入れられる作品となるんじゃないかな。伊藤さんと円城さんの長所が絶妙にミックスされていて、とにかく何についても匙加減が絶妙!という感じがしましたよ。料理に例えるならシェフを呼んで!という感じです。

    「ことば」と並んで、今までの伊藤作品を通して繰り返されてきたテーマ「意識」。この小説の「屍者」で論じられていることは、今までロボットとかアンドロイドで論じられてきたこととけっこう重なるんですよね。読みながら、私は森博嗣氏の「女王の百年密室」「迷宮百年の睡魔」を思い出していました。
    主人公ワトソンに随行する屍者のフライデーが、森作品に登場する「ウォーカロン」のロイディに重なってしまって。生と死の境目についての考察も興味深い。「生きてるってどいういうこと? 」という問いに対して、森作品では女王様がちょっとウェットな洒落た回答をしていますが、当作品p.319で大尉殿が言う科白も、淡々としているがウィットに富んでいます。

    楽しい設定やガジェットで読ませる一方で、次から次へと問いを立て、読者もそれを考えざるをえない。読んでる最中こんなにわくわくする小説というのは絶対に傑作なのです。良き週末であった…。

  • <あらすじ>
    19世紀末―かのヴィクター・フランケンシュタインによるクリーチャー創造から約100年、その技術は全欧に拡散し、いまや「屍者」たちは労働用から軍事用まで幅広く活用されていた。英国諜報員ジョン・ワトソンは密命を受け軍医としてボンベイに渡り、アフガニスタン奥地へ向かう。目指すは、「屍者の王国」―日本SF大賞作家×芥川賞作家が挑む渾身の書き下ろしエンタテインメント長編。早逝の天才・伊藤計劃の未完の絶筆が、盟友・円城塔に引き継がれ遂に完成。
    うーん。設定は面白いと思うんだけど。
    文体が・・・。内容が全然頭に入ってこない。

    ハーモニーもダメだったし、あわないのかなぁ。

  • 映画公開までになんとしても読み終えたかったのですが結局間に合わず、200Pほど読んだ状態で映画を観、再び原作を頭から読み直すという工程を踏みました。
    映画はかなり大胆な改変がなされているので、どちらに先に触れるかで印象はかなり異なってくるのではないかと思います。
    個人的には映画の長さ・設定の方が気に入ったので、原作はやや冗長に感じられました(映画は設定を削ぎすぎて、やや話に矛盾があった気もするのですが)。旅の描写が長すぎて、やや話が中だるみしているように思います。
    夭逝した伊藤計劃の本を円城塔が書き継ぐといった話なのですが、実際に伊藤氏が書いている部分はプロローグのみで、残りは全て円城氏が書いているので(仮に伊藤氏の残したプロットなどがなかった場合)、実質ほぼ円城作品なのだと思います。最初の方の文体こそおとなしめだったものの、最後の方では完全に円城節全開といった感じで、やはり理解するのに労力を要しました。
    しかし今までの円城作品とはやはり一線を画していて、かなりエンタメ色の強い作品になっています。文学作品の登場人物や、実際の史実の人物などが登場するのはなかなか面白みがありました。
    ただやっぱり、ちょっと長いかなぁ…。

  • 天才作家である故伊藤計劃の作品を円城塔が引き継いで完成させた作品。やはり伊藤計劃の作品とは違う感じはするが伊藤計劃テイストが散りばめられており面白かった。伊藤計劃の未完の作品を完成させたという点だけでも充分評価できると思います。それにしても「虐殺器官」「ハーモニー」は改めて凄い作品だったと感じました。

  • 伊藤計劃氏と、円城塔氏がシームレスです。

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著者プロフィール

1974年東京都生れ。武蔵野美術大学卒。2007年、『虐殺器官』でデビュー。『ハーモニー』発表直後の09年、34歳の若さで死去。没後、同作で日本SF大賞、フィリップ・K・ディック記念賞特別賞を受賞。

「2014年 『屍者の帝国』 で使われていた紹介文から引用しています。」

屍者の帝国のその他の作品

屍者の帝国 (河出文庫) 文庫 屍者の帝国 (河出文庫) 伊藤計劃
屍者の帝国 (河出文庫) Kindle版 屍者の帝国 (河出文庫) 伊藤計劃

伊藤計劃の作品

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