屍者の帝国

  • 河出書房新社
3.53
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本棚登録 : 3052
レビュー : 426
  • Amazon.co.jp ・本 (459ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309021263

感想・レビュー・書評

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  • これまで円城塔さんという作家を、何を言ってるのかちんぷんかんぷんの訳の分からない文章を書く作家と思っていたので、「屍者の帝国」を引き継ぐと知った時には、ちゃんと面白い作品になるのかとかなり心配していたのですが、それは杞憂だったようです。
    ちゃんと面白い作品になっています。「虐殺器官」と「ハーモニー」のモチーフもちゃんと織り込んでそれらへの解答(らしきもの)もきちんと出しています。やっぱり一流の作家さんっていうのは、何を書かせてもちゃんと期待に応えるだけのものを出してくるんですね。
    伊藤氏が書いた場合の結論とはかなり違うかもしれませんし、文章も円城氏らしい難解さがあって必ずしも読みやすいとは言えませんが、第1級のエンターテインメント小説であることは間違いないと思います。
    続編が書けそうな終わり方になってるんですが、果たして出るんでしょうか。出るとすれば、次はシャーロック・ホームズが登場してくるんでしょうし、結構楽しみな気がします。

  • どうしても感傷的で過剰な物言いになってしまうけれど、そうならざるを得ない物語がここにはあるもんなと開き直って書いた。まっ、たまにはいいだろ。
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    結末に触れます/自分用メモです
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    円城先生、ありがとう。この本を書いてくださって。そして3年と4ヶ月の執筆、本当におつかれさまでした。

    "人間は言葉で死者を蘇らせる" ... p.362より引用
    "『虐殺器官』で言葉による人間社会の崩壊を、『ハーモニー』で人間の意識自体の喪失を描いた伊藤計劃" ... 『あとがきに代えて』より引用

    エピローグの最後の4ページを生むために、そこまでの全てページがあるように思えた。涙がこぼれた。

    最後の4ページは"ぼく"フライデーの独白だ。ワトソン博士の地球一周大冒険にうっそりと付き従い、全てを記録してきた屍者フライデーの。
    事ここに至り、フライデーには意識が宿り、語り始める。屍者には意識が無いはずなのに。

    私個人は、人が人たりえるのは、言葉を持ち、これを操って世界を記述/作っていくことが可能だからだと思っている。これは言いかえれば思考であり、意識だ。
    だから意識が失われる『ハーモニー』のエンドは怖くてたまらなかった。
    そして、だからこそ、今作で屍者たるフライデーに意識が生まれたことは祝福だと思いたい。
    死体となり、意識をいったんは手放したフライデーに意識が生まれたことは。
    円城先生が伊藤先生の意識を辿って書いて辿って書いて、その最後に行き着いたところが、フライデーに生まれた意識だったのは。

    菌株-またはX-が人間本来の意識へ別の意識を上かぶせしたとあったが、それがどうだって言うのか。変容したそれが、人間の意識で良いではないか。
    もしかしたら"屍者に意識が無い"というのは、人間に認識ができないという意味での「無い」かもしれない。だからラストも、フライデーの意識は変容しただけ・拡充しただけ、ということなのかも。生者とも語り合えるくらいに。
    言葉が変われば、世界の認識も変わる。自ら"カオス"をインストールしたワトソンの世界も変わったろうし、フライデーの世界も変わったのだろう。同じ人間でくくられる私達だって、こんなにも言葉が違って世界が違う。
    変わりゆく言葉を使って、私たちは通じるんだか通じないんだか分からないけれど、語り続けていくんだよな。

    人間と言葉について、またも考えさせられる一冊だった。

    伊藤計劃が遺した30頁弱の本作プロローグと、他作品やブログの大量のテキスト=言葉達。この言葉に、円城塔は3年以上もの間ずっと向き合って語り合ってきたのかな。
    そして、人間(円城塔)は、言葉で、死者(伊藤計劃)を蘇らせることができたんだと思いたい。その意味で、この作品は決して鎮魂歌ではないのだ。

    ついき:最後、ワトソン君がアイリーンとキスしちゃうのは、シャーロックのためにやめたげてよう!(笑)
    ついき2:フライデーがモリアーティになるとすると?

    脳内BGMメモ
    第一部:ワルキューレ(地獄の黙示録的に)
    第二部:V-ClassicsとLTJ Bukem。尺八とか鳴っちゃうクラブミュージック
    第三部:バッハ ←当たった!w 小フーガ ト短調でした!

    よし、これでメタ含む感想は書いたから、もう一回読んでまた内容の感想も書きたい。

    メモ)あとがきに代えて 円城塔 河出書房のサイト
    http://www.kawade.co.jp/empire/

  • カバーを外すと、つや消しの黒い表紙。十字架と見紛うダガー。
    聖書!
    一瞬そう思ってしまう佇まい。
    その下には、The Empire of Corpses。
    そしてProject Itoh × Enjoe Toh。
    このアルファベットの並びが見事である。まさに運命のツインソウル。

    伊藤計劃氏プロットはきちんと円城塔氏に受け継がれるのかいう心配は無用だった。
    円城塔氏が生きたまま伊藤計劃氏の霊素を上書きされ、円城塔ではなくなってしまうのではないかという心配も無用だった。
    伊藤計劃は伊藤計劃であり、円城塔は円城塔であった。まさにそのままに。

    円城塔氏独特の言回しは生き、しかしそれは伊藤計劃氏の世界観を追う。生とは、死とは、意識とは、魂とは。さらに科学とオカルト、実在した人物と多様な物語からの借キャラ、歴史改変と著名作品からのプロットの借用という円城塔氏のアイディアも巻き込んで。

    読者は読み進めながら、辞書を引き、またはWebで検索し、その冒険を追う。
    再読するなら、18-19世紀の地図帳と世界史年表を手元に用意したい。
    ハダリーさえ、ワトソンが地図の上にピンを挿しそれに糸を張り巡らして作った関係図を必要としたのだ。
    ハダリー、口付けしても冷たい唇。やはり生者でも屍者でもなくアンドロイドか。

    単なるプロット借り、キャラ借りの再編成と言う事なかれ。
    円城塔氏にとっては「蟻における太いロープ」な事を、読者に対して「目に見えぬ細い糸の連なり」に見せるという高度な芸当をやってのけたのである。他に誰がこれを真似できようか。

    そういえば、円城塔氏の研究者時代のテーマは「言語」ではなかったか。
    その時探求したかったことが、この作品には込められているのかもしれない。
    そういう意味では、The One、ハダリー、フライデーは、ある部分、円城塔氏本人の投影でもあるのかもしれない。

    エピローグⅠ。この終わり方は!
    プロローグの”His last Bow”が、この「さよならの挨拶」につながるなんて。
    もしワトソンが伊藤計劃氏でフライデーが円城塔氏なら、伊藤計劃氏は円城塔氏のために死んでしまったことになる。大げさな考えだろうか。
    ここから先、読み終えてしばらく後も、私の瞼は潤みながら小刻みに揺れた。

    そして、エピローグⅡ。
    「意識」とは、常に何かを探し求めるものなのかもしれない。
    自らの意識に気づいたからには、宿命なのだろうか。
    『あなたがその選択の余地なき自由の中で、何を見出したのかを求め続ける。』
    それは理解できる気がする。
    しかし、『今のあなたの相棒であり、Mの弟であるあの探偵と敵対することになるかもしれない。それはそれで構わない。あなたをそこから引き出すためなら、多少あくどいこともしなければならないだろうと思う。』とはどういうことだろう。
    The One が真実を追求し伴侶を求めるためにしたことを、まさかフライデーが再び繰り返すのだろうか。ワトソンが身を犠牲にし切り開いた未来を考えれば、それは必要ないと思うのだが。
    だが私たちとて、天国から伊藤計劃氏を引き戻したい。

    しかし、最後にこの物語は光を見上げる。そうなのだと思う。

    感無量で些細な感想文さえなかなか仕上げられなかった、ということがあるだろうか。
    カバーを外した「屍者の帝国」を神棚に上げ、天界の伊藤計劃氏に手を合わせ、
    円城塔氏に、河出書房新社の方々に、長らく「屍者の帝国」の完成を待ち望みついに手にした喜びを共有する総ての読者に、そしてそれらの人たちを支えた総ての人たちへー、

    「ありがとう」
    フライデーの言葉を借りて。

  • 時間がある人は読んで見た方がいいかもしれない。 
    いろいろな事を考えさせられる。この作品に出会って、他の作品にも興味を持った。自分が20代の時には、感じれなかっただろうもろもろが・・・出会えたタイミングが良かった。

  • 伊藤計劃を読むと世界が変わる。これまでの作品の中でも、物語、言葉の圧倒的な質量だと思う。
    ほぼ設計書だけのところからこれを本として世に誕生させてくれた円城塔の熱量にも、それだけで自分の世界が再起動されそうなくらいのもの。
    19世紀に活躍したフィクション、ノンフィクションの人物たちがぞろぞろ登場し、近代ガイブン版『リーグオブレジェンド』さながらのエンターテイメントに、敏感で緻密に構築された世界観。両氏の魅力が、弁別不可能なかたちで混ざりあって、まさにたまらない。
    どんなに言葉を尽くしても、この本が語る物語をこの本のかたち以外では伝えられない。日本SFの歴史に間違いなく残り続ける一冊だろうと思うけれど、これを同時代に体験できたことを心から幸運だと思う。

  • うーん、まあSFと歴史をあわせもつた面白い内容ではあるが、自分にはいまいち。それでいて壮大だが、なかなか長い内容。

  • 楽しめた。映画化したら面白そうだなー。

  • シャーロック・ホームズ以前のワトソンの冒険譚。様々な物語が絡む様は読み手の理解度を超えることもあるが、引用されている物語の多くの基本はほぼパロディであり、それらの予備知識が無くても単体でも十分面白い。クロスオーバーのような贅沢な一冊。伊藤計劃「ハーモニー」に対する円城塔なりの解が一つの見所。文章もかなり読み安い。

  • 伊藤計劃の絶筆を円城塔が引き継いだSF小説です。
    死者蘇生の技術が確立され、「屍者」によって経済が成り立つ19世紀が舞台です。
    主人公のワトソンが屍者フライデーと共に、フランケンシュタインの謎に迫ります。
    様々な世界観が入り乱れる中、上手に纏められていることに感心しました。

  • SF

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著者プロフィール

1974年東京都生れ。武蔵野美術大学卒。2007年、『虐殺器官』でデビュー。『ハーモニー』発表直後の09年、34歳の若さで死去。没後、同作で日本SF大賞、フィリップ・K・ディック記念賞特別賞を受賞。

「2014年 『屍者の帝国』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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