- Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309021607
作品紹介・あらすじ
韓流にはまりまくったせいで、日本に叩かれまくった女が、それでも書く。私たちはなぜこんなにも"韓流"を愛してしまったのか?韓流女の全記録。なかったことにはできない、女たちの欲望史。
感想・レビュー・書評
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韓ドラは「チャングム」くらいしか観てないので、「韓流はエロだ!」っていうテーゼについては私、一緒に盛りあがれないどころか判断もつきかねるわけですが。でも、世界中で盛りあがってた江南スタイルに対する頑なな無視だとか、紅白に韓流は出さないとか、女性を中心に強い支持があったにもかかわらず韓流ブームを終わらせようとした日本社会の、正体が見えない圧力の気持ち悪さは、すっごくよくわかる。「慰安婦」問題をやってて叩かれるのはもう慣れっこだけど、韓流スターを追いかけてて叩かれるなんて、ほんとにこの国は、いったいどうなっちゃったのだろう。この国の男たちに何が起きてるんだろう。本としては、ややまとまりがないのは事実だけど、この違和感や不安感を声にするというその行為で、北原さんはまさに重要な役割を果たしている。
私はこの本を読みながら、アメリカのフェミニスト研究者、シンシア・エンローさんが語った言葉を思い出していた。社会を軍事化するには、男らしさと女らしさそれぞれに操作が必要だということ。「兵士には慰安婦が必要なことは誰にだってわかる。風俗をもっと活用すればいい」と言った橋下徹の発言は、韓流スターに熱くなっていた女性たちに水をかけることと対の関係にあったのだということがみえてくる。軍事化には、ある種の男らしさで規定されるセクシュアリティの特権化がともなう、と言い換えてもいいのかもしれない。もしかして後年ふりかえったときに重要な潮目の変化をしるしていたかもしれない時代の一側面に関する貴重な証言。これをきちんと受け止めて、いっそうの分析につなげていく必要を感じる。流れに掉さすために。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
韓流ってそうだったのかと思った☆
そんな素敵に心躍るものだったのか。
ウォン・ビンを追いかけてたときはあったが深みにははまらなかった。
でもこの国のおんなたちが深みにはまったわけがこの本を読んで分かった。
なんで何でも政治と結びつけるんだろう。
日本と韓国の国の関係とわたしたちは無関係ではないけれど、でもそれだけじゃない。
韓流をたたくひとたちの格好の餌食になってしまったみのりさんだけど、でもやっぱりこの本と女性たちの韓流には希望のほうがたくさんだ。 -
最初は韓流にハマる女性たちが新しい時代を開くみたいなテーマで書こうとしていたけど、そのうち嫌韓・反韓の台頭に怖気づいたか対談とかでお茶を濁すようなつくりになったんだとか。嫌韓・反韓に対抗して訴えるだけのものにはならなかったのか。
最初のほうで自分が韓流にどっぷりつかった経緯やその不思議さを書いていて、そこは自分もかなり共感できただけに、その後の展開が残念。何だかこの人の本は竜頭蛇尾というか、思いつきで走り始めてしまうというか、書き始めの熱の入りようとが最後まで持続しないというか、そんな感じがしてしまう。 -
最初は韓流の素晴らしさ(鍛え抜かれた肉体やパフォーマンス、かつての少女漫画のようなベタで熱いストーリー)について賞賛していた著者。
しかし、竹島問題をきっかけに韓国が、韓流が罵られ、著者自身も自分が叩かれているような暗澹たる気分に陥る様が描かれている。
北原氏の著作はいくつが読んだが、今回が一番トーンが暗く(特に最後)、彼女のコンプレックスの根の深さを思わせ、読後感が暗かった(単純に私が韓流に懐疑的な面も大いにあるとは思う)。
韓流の素晴らしさ、それはまずは、鍛え抜かれた肉体、つまり「エロ」に直結している。日本の男たちの男らしさは「沽券」だが、韓流の男性たちの男らしさは「エロ」だ。
ファンの集いでは抱き寄せてくれる、などの肉体的接触もアリだし、さらにいうと、新大久保にいけば、そこから抜け出たような美男子たちが出迎えてくれる。
それは「逆転のアキバ」とも言える。
男性は働いてばかりで、優しくされた記憶が少ない世代が数少ないエロを大々的に発散できる文化として花開いた、と著者も熱狂した。
ソウルへ行き、ハングルを覚え、ファンの聖地巡りをする。
新たな活力を与えてくれる韓流はなんと素晴らしいのだろう!と。
しかし、数々の韓流愛好者や、在日韓国人と対談を重ねていくうちに、韓流にハマる心理には、二重三重の優越感と劣等感の複合体(コンプレックス)が隠れていることが明らかになる。
「ハマる」、つまり「嗜癖」にはある種の意外性や不快がないと起きない症状、と心理士の信田さよ子氏は述べているが、「韓流」の裏側にあるのは「日本男子の否定」であること、さらに進んで、サムソンが台頭し、ソニーが凋落することに小気味よさを覚えるなど「代理復讐」を感じている自分に、著者は気づくこととなる。
そのように「ハマる」心理について、上野千鶴子氏は、「鍛えた男性的なガタイが、女のシナリオに沿って振舞ってくれる動いてくれる。しかも、根深い欧米へのコンプレックスを感じさせることもなく、思う様消費して使い捨てができる」と断じている。
さらには竹島問題で、著者は「在日だ!(実際は著者は日本人)」と叩かれ、会社のサーバーも攻撃を受けてダウンする事態にまで至る。
それでも著者は「女の欲望」を体現した韓流を捨てない、と覚悟を新たにしているようだ。逞しい、というより、そこまで日本国や日本男児に絶望しているのか、ととても痛々しい気分になった。
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778.2
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一度目は読まずに返し、二度目の貸出で読了。
一度目は、韓流を知らない人にはつまらない本だと、気が載る前に2週間が過ぎてしまいました。
が、「ヘイトスピーチってなに? レイシズムってどんなこと?」を読んだ後でこの本を読むと、実にスリリングでした。
怖いです。この事実。
女たちの嗜癖をバッシングする社会がすでにやってきているんですね。ヘイトされているのは韓流のみならず韓流好きな日本の女たちだった。
おれたちの持ち物のはずの日本の女が「勝手に」韓国男にうつつを抜かすのは許さん、という心情が怖いです。「同胞人だろうと異邦人だろうと、自分の思うようにならない相手は許さん」という狭量が日本の国民性ということにならないよう、しっかりしなければと思いました。 -
北原みのりさん。力を入れて、ちょっと躁気味で書いているのかな?
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韓流はエロ、女を自由に生きられる欲望のファンタジー。日本と日本の男が終わらせた。
韓流の構造、日本女性のの反乱だったとは知りませんでした。 -
本書では、韓流ブームに沿ったエッセイと対談を時系列で収録。あまりに面白かったため、一気に読了してしまった。
「韓流=女の欲望」という著者がハマった、韓流の深い魅力や、日本女性にとってのその革命的意義が切々と語られている。また、女性の欲望への抑圧、差別、男女の断絶…韓流から見えてきた日本社会の一面を、著者は鋭くえぐりだす。
韓流と「嫌韓」のジレンマで孤軍奮闘する著者が絞り出す言葉に、心が揺さぶられた。今の日本社会について深く考えらさせられる傑作。
韓流ファンはもちろん、韓流に興味のなかった方にこそ、強くお薦めしたい。