想像ラジオ

  • 河出書房新社
3.39
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本棚登録 : 3357
レビュー : 521
  • Amazon.co.jp ・本 (200ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309021720

感想・レビュー・書評

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  • 想ー像ーラジオー。
    とジングルが聞こえそうなほど軽快な語り口のDJアーク。
    AMラジオの深夜放送を聞いたことがあれば、このテンポにも、軽い語りにもついていけると思います。
    2011年の東日本大震災をモデルにした小説なのですが、設定が想像を絶しています。
    杉の木に逆さまに仰向けで引っかかっていて、手には携帯、ハクセキレイに杉の木のてっぺんから見下ろされているDJアークのラジオなんて、シュールすぎて、実際の災害現場では目を背けてしまうような光景でも読み進めることができます。
    でも、表現の軽さは遺族の人にはたまらないかもしれません。でも多くの人に目を背けずに死者の想いを受け止めるにはどうすればよいかを考えてもらうには、この書きっぷりがあっているのかなと思います。もちろん賛否両論あるとは思いますが、私は賛成派です。
    最後はジーンとくると思います。

  • あの3.11というものが日本社会に与えた影響というものは少なからず大きいというのが最近の私の気付いたことであります。なんか復興?とか言われて、ニュースでもだんだん扱われなくなって、そうすると忘れたような気分になってくるけれども、本当に深い傷、というものは、そうそう簡単に忘れられるものではなく、忘れたと思ったら違った方向から姿を現すものなのだと。あの時生きていた人なら少なからず共有した、あの恐怖や行き場のない思いみたいなものは、必ず何かの形をとって、現れる。主には政治とか、そういうとなんだけれども。一人の首相が頑張るより、みんなで選挙をして選んだ代表たちが法律を作って国を治めるより、想像もつかないようなエリートたちがこつこつとお仕事をするより、もっとずっと強い力を、一瞬で全てをなぎ倒す力を、自然がもっているということは、やはり人間社会の確かな不安である。当たり前のことなんだけれども。まあそういった影響がポコポコと現れつつある中で、文学にもそれが見られるというののひとつの姿がこの小説である。他にもそういった行いをしている小説家はいるのだけれど。
    目的は単純明快。あの惨劇を見て、死者がたくさんいるという現実があって、尚且つそれから目を背けて生きていこうとする日本社会への戒めか。死者の声にもっと耳を傾けなさい、と。死者と生者は抱き合い助け合いながら生きていくものだ、と。そうやって私たちの国は数多の災害から、苦難から、立ち上がってきたのに。そういった心を忘れている現代日本社会への痛烈なメッセージ。面白いのは、死者がものすごく、メッセージを送ってるところ。どの死者も、まだ留まり続けて、なにかを発信する。それが「ラジオ」っていうのは、すごく端的で分かりやすくて、ラジオって、電波って、要するに目に見えないけれど、カチッと波長が合えば聞こえるものっていう。それが本当に、死者の声を想像する、それに耳を澄ませるっていう行為と似通っていて、よくもまあここまでピタリと合うものを思いついたなあ、と。それにすごく感激するし、やはりそういうことができる人っていうのは限られていて、評価されていくのだとおもう。
    口調はとても軽やかで、読みやすいんだけれども、それって内容が軽いということとは比例していない。軽やかな口調で大切なことを語るというのは、小説のひとつの優れた形であり、私はそういう小説が本当に好きだ。しかし、分かり易すぎる、というのも、言うなればこの本の欠点かもしれない。分かりやすく、書き手の思いや憤りみたいなのが前面に出ている。それって、今、震災のことを皆が共有している今は通用することかもしれないけれど、そうでなくなったときに、もっと時が経って風化して、感情があまり残らなくなったときに、そうしたときに果たして再び通用するかと言われると、少し疑問かもしれない。確かに今こういうものが必要とされているのだけれども。小説ってほんとうに難しいとおもう。

  • いとうせいこうは、人に優しい文章を書く。東日本大震災の被災地で開かれたイベントで、いとうさんが「こんな本を書いていいのか悩んでいた」との主旨の発言をしている姿が、NHKのニュースになって、気になって読んだ。書くということは本当に怖いことだ。でも、とても明るく、しかも全体に鎮魂の気持ちが伝わってくる、とても優しい本だった。

  • 震災で亡くなった人たちからのメッセージ。スギの木にとりのこされたDJアークの軽妙な語り。
    なのに読んでると胸が苦しくなる。亡くなった1万人以上の人たちの声を私たちは想像すべきなんだと思う。

  • 先の震災を図らずもライブ映像で、家が車が、しかもさっきまで道路を走っていた車が次々と津波にのまれていくをみることになった。

    衝撃すぎてあの時の気持ちを言葉に表すのは難しい。

    多くの方が亡くなった事をうけいれる。寄り添う。声を聞く。悼む。どうしたらいいかわからないものを想像ラジオという形で表現している。

    どうかなくなった方々がこの本のように時間がかかっても穏やかに納得して旅立ってくれます様にと祈ります。

  • ボブ・マーリーの「リデンプション・ソング」を聴きながら、これを書いています。
    いとうせいこう すごい。この視点は想像すらしたことがなかった。
    311東日本大震災を経て、彼のようなクリエイティブな人もものすごく色々なことを考えたのだろうなあ。 
    本書の評価は分かれるだろうなとは思います。
    受け入れられない人も、なんだこりゃ?というひともいるだろうけど、私はいとうせいこう すごいと思いました。

  • 軽い調子の文体に、はじめはなじめなかったけれど、
    徐々にその主体のおかれた状況がわかるにつれ、
    軽い調子が悲しみを引き立てる。

    かつては、死者を抱きしめて生きることが当たり前だったのか。
    死者がいて、生者がいる。
    死者の声が聞こうとしているか。生者は死者へ話しかけているか。

    これを忘れて、理解しない現代の生活があったのかな。
    あの大震災で、多くの人が、それを否応なく思わされたのだと思う。

    ボランティアに行こうとする人々の議論に考えさせられた。

  • DJアークの妙な状況から始まり掴みは良かった。どういうことだよ、と思わず読むのを止めてまさに「想像」させられる。二章目からその、妙の輪郭がハッキして急に現実味を帯びていく。目をそらしてはいけない、想像せよ、そして考えろ。そんなラジオが僕にも届いた気がします。
    文自体はト書きのないアークの軽快な話口調がメイン。それを補うようにアークはたとえ上手なおしゃべり屋と自負しており、五感を燻るトークをする。そこにもひょっとしたら想像力を掻き立てる工夫があるんだろうと思った。作者の思うつぼかもしれない。
    ただ、自分の負い目として読む時期が悪かった。もっと早く、初版が出た時に読みたかったです。

  • 2013.10.26〜10.31
    まあまあかな。でも、面白いと思うし、震災にあった人の、そしてどうやら亡くなったようだ...という人の視点で。人は必ず死ぬけど、想像しよう、その人の語りかけていることを...ということだと思う。それが弔うってことなんだと。

  • 読み始める直前に『東日本大震災』お話しだと。
    アタシは泣きました。沁みましたぁ。

    3.11の切り取り方。
    こぉいうのアリ!な、感じよかったぁ。
    赤いヤッケのDJアーク‼︎
    かけてくれる曲、も少しアタシが理解できていたらなぁ。
    と、ここが残念。♪三月の水♪リデンプション・ソング聴いてみたい。
    〜魂魄この世にとどまりて〜
    アタシも想像する。
    耳を塞がないで傾ける。
    耳を澄ます。
    声を聴くために。

    〜死者と生者が抱きしめあっていくんだ。〜

    そして明るくしみじみ『想〜像〜ラジオ』

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著者プロフィール

いとう せいこう
1961年、東京都生まれ。編集者を経て、作家、クリエーターとして、活字・映像・音楽・舞台など、多方面で活躍。『ノーライフキング』でデビュー。『ボタニカル・ライフ ―植物生活―』で第15回講談社エッセイ賞受賞。『想像ラジオ』が三島賞、芥川賞候補となり、第35回野間文芸新人賞を受賞。他の著書に『ノーライフキング』『鼻に挟み撃ち』『我々の恋愛』『どんぶらこ』『「国境なき医師団」を見に行く』『小説禁止令に賛同する』など。

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