想像ラジオ

  • 河出書房新社
3.39
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本棚登録 : 3357
レビュー : 521
  • Amazon.co.jp ・本 (200ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309021720

感想・レビュー・書評

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  • 評判どおりの、とてもいい本だった。

    正直なところ、私は、新聞を読んだってテレビを見たって、あの3.11をうまく整理できず、震災から何を学んだのか、何をすべきか、なんていうことを考えられずにいた。こんな年になって、ほんとうに恥ずかしい話。誰かが何かそれらしいことを言っていて、うなずくことはできても、自分の言葉では考えられていなかった。

    この小説のなかに、「あなたは感受性だけ強くて、想像力が足りない人なのかな?」という台詞があるのだけど、まったくそのとおり。ひっぱたかれたかと思った。びーびーと泣くばかりで、そこで打ちのめされて終わってしまっていた。ボランティアにでかける友人や、復興支援を掲げる人や団体に対する気持ちが嫉妬だったりするくらい、ほんとうにちっちゃな人間なのだ、私は。

    散文詩を読んでいるような、ほんとうにラジオが聴こえてくるような、流れるように読めた一冊だった。3.11の物語ではあるけれど、観点は生者と死者の話である。大切な人を亡くしたとき、耳を澄ませなければならない声や想いや願いを綴っている。

    毎日をどんなふうに過ごしていったらいいのか、大切なひととどんなふうに接したらいいのかを考えさせられると同時に、きちんと受け入れられていなかった3.11に対して向き合える答えが、ここにあったように思う。優しく、易しく、語りかけてくれる、心強い小説だった。

  • 昨夜(4/17)は甘糟りり子さん主催のヨモウカフェ。
    課題本はこの本でした。

    いとうせいこうさんの本、腰を据えて読んだのが今回が初めてで、
    普段は純文学やビジネス書、哲学を読む僕からすると、
    久々の現代本で面白かったです。

    2011年3月11日。あの忘れもしない大地震から2年がたって、
    僕の中でも風化しつつある中で、こんな小説を読む機会が出来たことにまずは感謝です。
    ラジオを想像で聞くという、この発想が斬新で、
    いとうせいこうさん自身がtwitterでやられていたと聞いて、
    そうだったのかと。

    印象的な部分。「広島への原爆投下の時も、長崎の時も、
    他の数多くの災害の折も、僕らは死者と手を携えて
    前に進んできたんじゃないだろうか?しかし、いつからかこの国は
    死者を抱きしめていることができなくなった。それはなぜか?」
    「なぜか?」「声を聴かなくなったんだと思う」「・・・・・・」

    まるで自分に言っているようなこの言葉。人間関係が希薄化している中で、
    極力他人と関わり合いたくないという、瞬間はある。
    でもあの大震災のあと、他人との関係が深まったこともあったのではないか?
    ただ、日常を生きている僕には、やはり死者の声を聞こうとしていなかった。
    怖かったのか?

    それでも耳をすませば、本当にラジオの中から聞こえてきても不思議ではない。
    あの地震がなければ、まだまだ長生きできていた老若男女は計り知れない。
    彼らの声を聞く瞬間があってもいいのではないか?
    本を読みながら、このような感想を抱きました。

    生と死は紙一重というけれども、やはり生きていることを
    幸福だと思うことが大事だと思う。そして亡くなった方々の分まで
    精いっぱい生きていくことが、彼らに対してできることじゃないかな。
    小説なのに、深く深く考えさせられた。

  • ラジオには、深夜が似合う。

    おそらく誰でも(何でも)が受信し発信していて
    周波数さえ合えば聴くことが出来るのだろう

    毎日毎日がその人の、その時々の
    一瞬一瞬が、大事なことの積み重ねであるのだけれど
    ことさらこの日のことを大事なことだとして題材にした話は今後も増え続けるのだろう

    この本の言葉は想像することの難しさと自由を教えてくれると思う

    結局は自己満足であるのかもしれないが、祈れる自分でありたいと思う
    あなたとわたしの体組織は違うし、同じ体験をしても見るものも聞くものもまったく同じではないけれど、
    それでも一瞬でも共感できる奇跡があるから
    わたしは祈り続けることができる

    想像してください
    生きるということを

    生者と死者への愛に満ちた一冊

  • 『想ー像ーラジオー。』
    このジングルが頭から離れません。

    ブクログ様のキャンペーンにて献本をいただきましたので早速拝読させていただきました。


    『想像ラジオ』のパーソナリティ、DJアークの語り口調は軽快でとても好感が持てる。でも何故か放送している場所は高い杉の木の上。しかも逆さま。

    ラジオの内容はDJアークの身の上話からリスナーの投稿と様々。でも想像。
    リスナーの想像次第で流れる曲も変わってくるし、聞ける時間帯も自由。DJアークの声自体リスナーによって違っている。

    そんな不思議なラジオ放送を中心に展開される物語です。




    とても深いお話です。

    震災を題材にした作品ですが、ラジオというメディアを通じて語り言葉として展開される事で、より心に染みる作品に仕上がっているような気がします。

    今後、末永く読まれ続けて欲しい作品でした。

  • 献本2冊目。読み進めていくうちに
    ある出来事が元になっていることに気づきました。
    そして思うとこの本、何かつながっているように思えるのです。

    そう、登場人物の名前が
    私の名前と一字一句違わず同じ。
    何か因果を感じずに入られませんでした。

    私たちにはこの「想像ラジオ」の世界を
    感じることはできないと思います。
    ただし人によっては感じることは可能なのかな。
    でも…

    DJアークの明るいけれども
    どこか闇を感じさせるトークには
    引き込まれました。
    きっとラストは、ああ…と感じることでしょう。
    きちんと読んだ読者に対する一種のプレゼント。7

  • おもしろかったとも違う(でもおもしろかった)
    感動したとも違う(たぶん感動した)
    すごく複雑な気持ち。
    悲しくて辛くて怖くて、止めたいに止められなかった。

    でも、全部、想像。

    DJアークがCORINNE BAILEY RAEの"the sea"を紹介をしたときに、iPodからちょうど流れてくるという冗談のようなことがあって、電車のなかで涙腺が崩壊するかと…。
    しかも最後の数ページを読んでいるときは”is this love”
    この相乗効果で泣けてしまった。

    地震の後にとあるライブを見た時、本当はこれを見るはずの人がいたんだよな、って思った事があって、その事実にガーンと思ったんだけど(それが何かはうまく言えない)、5章に出てくる”21歳 女子”が繰り返し頭に浮かべる1日の描写を読んだ気持ちは、まさにこのときのガーン、に似てる。

    でも、それも想像。

    あと、私の頭のなかで”想ー像ーラジオー。”は女性の声。

  • 序盤から、もうずっとひたすらに揺さぶられた…

  • 震災を経て生まれた文学作品の中でも、とても大切にしたいと思わせてくれる作品だった。
    読み進めるにつれて物語の輪郭がはっきり見えててきて、この物語が「言いたい事」を伝えるために、どれだけ慎重に組み立てられているかがよく解る。

    こんな表現の仕方があるんだなあ。

  • 死者は死者の生を生きる。

    空を見上げ耳を澄ましました。

  • ラジオについて考える。死者を憶うことについて考える。

    いとうせいこうというひとのことを知っているようであまり知らない、でも知ってる部類には入るはず。という距離感のくせに出たばっかりの新刊を買ってしまった。なぜだかはわからない。ついったーのタイムラインに煽られたのかもしれない。それでも買ってしまったのはしょうがない、本に呼ばれていたのだと割り切って読んだ。

    そしたらまあ、はじめに書いたように、ラジオについて、と、死者を憶うことについて、考えた、というのがとりあえずの感想になる。

    語りかけることにおいてラジオのパーソナリティほどほどよい距離感をもっているひとはいないよな、とあらためて思ったりもした。

    多くのひとが考えることかもしれないが、これが「想像テレビ」だったら、番組名が「想像ステーション」だったり「想像23」だったとしたら、どうなっていたのかな、この本のようにすとん、とおさまったりしてなかったのではないだろうか。何がか。何がって、語りかける先にみえている世界、というと大袈裟だから、範囲。

    古舘さんならこうはいかなかっただろうとか、筑紫さんならこうまで軽やかではなかっただろう、とか、うーん、久米さんだったらどうだろう、いけてたかもしれない、とか。

    死者について憶うことについて。生きてる人間だけで前を向いて歩いていこうぜ、という姿勢とは少し違うスタンス、どちらかといえば前向いてこうぜスタンスの自分にとってはちょっと違う角度から光を当てられたような気がして、ではいまの自分にとっての死者とは?と考えてみたりもした。ここのところ足を引っぱられていたわりとヘヴィな問題にたいしても、死んだひとたちが欠けているピースを埋めてくれるような気もしてきた。あくまで「気もしてきた」くらいなのだけれど。

    というわけで、これだけじゃだめなんだろうけど、要るのは要る。これはこれでないと困る。という感覚を思い出させてくれる本。

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著者プロフィール

いとう せいこう
1961年、東京都生まれ。編集者を経て、作家、クリエーターとして、活字・映像・音楽・舞台など、多方面で活躍。『ノーライフキング』でデビュー。『ボタニカル・ライフ ―植物生活―』で第15回講談社エッセイ賞受賞。『想像ラジオ』が三島賞、芥川賞候補となり、第35回野間文芸新人賞を受賞。他の著書に『ノーライフキング』『鼻に挟み撃ち』『我々の恋愛』『どんぶらこ』『「国境なき医師団」を見に行く』『小説禁止令に賛同する』など。

想像ラジオのその他の作品

想像ラジオ (河出文庫) Kindle版 想像ラジオ (河出文庫) いとうせいこう
想像ラジオ (河出文庫) 文庫 想像ラジオ (河出文庫) いとうせいこう

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