想像ラジオ

  • 河出書房新社
3.39
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本棚登録 : 3348
レビュー : 521
  • Amazon.co.jp ・本 (200ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309021720

作品紹介・あらすじ

想像すれば、聴こえるはず――。文学にしかできないことがある。「文藝」掲載時より口コミで話題を呼び、かつてない大反響を呼んだ、鎮魂と再生の物語。著者16年の沈黙がついに破られる。

感想・レビュー・書評

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  • 震災で亡くなったと思われるDJアークが次の世界に行く前に、残してきた人たちへの想いや自分の現状について電波に乗せる。リスナーもまた、突然失われた自分の人生を思い出しながら、想像ラジオから流れてくるトークや音楽に想いを馳せるのだった・・・。

    メディアで度々取り上げているのを見て、気になっていたけれどなんとなく回避していた。それでも、図書館の新着図書コーナーにそっと置かれていたところを通り過ぎることができなかった。

    ところが、読み始めてもなかなか進んでいけない。
    この本の予約を入れたというお仲間に、すぐに返却できそうにないと言ったところ、「いとうせいこう氏はどちらかというと純文学系ですから・・。単純でないのかもしれませんね・・。あせらずゆっくり読んでくださいね。」などとなぐさめてくれた。

    全体のトーンはじわーっと哀しみが漂っている。そして温かい。
    昨日まで連続していた日々が突然断ち切られ、それすら本人には確認できない。想像ラジオを通してリスナーたちが交流する中で自分たちの置かれている現状に気付く。愛する人や大切な人たちを残して自分だけがそこを去らねばならない理不尽さやいたたまれなさを受け入れるのは容易ではない。それでも、残していく人たちが幸せに生きていってくれることだけを願い、その兆しを確認できた時、現世とあの世の間にある緩衝地帯を越えていける。

    これって、大切な人を失ったことのある人がその人を思い出すときそうやって徐々に高いところに昇って行ってほしいという願望なのか、それとも生きている自分がいずれそういう道をたどるのかもという想像なのか・・・?

    たったひとりの人を失くしても、その喪失感は計り知れない。
    震災で大勢の人を失い、自分の生活も壊滅状態に置かれた方々の気持ちはいかばかりか。また、それぞれの背負っているものによって、感じ方もずいぶん異なるのかもしれない。

    せめて私たちは、想像しよう。
    この世界を去らねばならない人と、残される人。
    涙を流す人と、泣くことすらできない人。
    未だ立ち上がることのできない人と、雲の切れ間から差し込む光に顔をあげる人。

    そしていつか、皆が歩き始められる日が来ますように。
    そのとき、失くした人との日々や共に生きる人がそっと背中を押せたらいいなぁと。

  • 人の意識、想像、思考、想い。
    それが電波という思念となってココロの真ん中の
    ふとしたチューニングがあった人だけに届く想像ラジオ。

    必要なモノはイマジネーションだけ。
    AMでもFMでもなく、IM。
    意識、無意識に関わらず、届いてしまった人は
    同じ意識のステージにいる人なのかな。

    想像することだけで繋がっているラジオだけに
    リスナーが聞いている時間も温度も環境も
    流れてくる音楽も、DJの声も、その人のイメージも
    すべてが自分の想像で成り立つ、すべてが
    自由で象られる想像ラジオ。

    私の中でもはっきりと受信しました。
    ジングルもしっかり作曲しました。
    DJアークさんのビジュアルも声の想像も完璧です。

    リクエストで流れてくる音楽も
    『デイドリーム・ビリーバー』と言われて流れてくるのは
    それぞれが想像したその曲。誰が歌った、誰が演奏した
    この曲なのかもリスナー次第。

    この世の者とあの世の者を繋ぎえるかもしれない想像ラジオ。
    大切な人を突然亡くして、ただただ茫然と現実を
    受け止めきれない、愛する人に残された人たち。
    そして、自分の身に突然起こった出来事を受け止められない
    亡くなった人たち。

    物事には両面があるように、当然のように
    愛する人を失うということは、生きている人、亡くなった人、
    それぞれの立場が違うだけで、失った悲しみは同じであること、
    現実として受け止めることに混乱していることの大きさは等しいこと、
    大切な人を失って、後に残された悲しみに包まれていたけど
    ただ、互いが生きる世界を別の次元に切り離されただけ
    ということに気付いた。

    アフター3.11を取り扱った本書。
    あの日たくさんの人の運命が大きく変わってしまった。
    私も福島が父の故郷で親戚がたくさんいたり、数々の映像で
    茫然とした日だったけれど、実際に災害に見舞われた当事者
    ではないので、軽々しく言えるほどの悲しみでも苦しみでも
    ない出来事で、心で祈ることしかできなかった2年前のこの日。

    私にとって3.11はその1年後のちょうど同じ日、
    私は息子を産み、そしてその日に息子は天国へと旅立った。
    そんなこともあって、私にとっても3.11は最愛の人を
    亡くした人生で一番苦しい日となった。

    マスコミでもたくさん取り上げられる日なので
    テレビや新聞、雑誌、インターネット、いろんな媒体で
    その日付を目にするたびに、それでなくても
    忘れる忘れないなんて出来事でなく、片時も忘れない
    事柄を必死で覆って前に向かおうとしている毎日で、
    そこにやたらな煽りで3.11、3.11と取り扱われることで
    どれだけの被災者の方はそのたびにまた現実を、傷を、
    まざまざと突き付けられて、傷を新たにしているんだろうかと…。

    亡くした経緯や状況は違えども、これだけピックアップされる
    日づけに自分の出来事も重なったからこそ、形は違えども
    その日付を目にするだけで震えるほどの苦しみを覚える1人として
    震災にあわれた方にとって、風化させないためにという名分で
    今の震災へのメディアやネットでの取り上げ方は
    本当に真意は汲み取れているのかと、関わり方を改めて考えされられた。

    大切な人を失った人が、亡くなった人の意思を受け取りたい、
    どこかで繋がりたい、話がしたいと思うと同じく、
    亡くなった人も大切な人と別れなければいけない悲しみ、
    自分の人生にやり残したことやたくさんの想いを残した苦しみ、
    たった一人では切なくて、境遇を同じくした人と
    こうやって意識という電波で繋がっていたとしたら…と考えた。

    私が息子の声を聞きたいように、息子も私の声が聞きたくて
    聞こえなくて泣いているのかもしれない。
    まだ生きるということも理解ではないままに、亡くなるという
    現実を受け止めなきゃならなくなったあの子は
    今頃どうしているんだろうかと不安にもなった。

    でも、こうやって本を通して、悼む側があるのと同時に
    当然ながら悼まれる側の意識も同時に存在していることに気づいた。
    この世の果てにあの世があるのではなく、この世もあの世も
    同じくして悲しみも喜びも等しく存在しているかもしれない。
    私が息子の声を聞きたいように、息子の笑顔が見たいように
    きっと彼は毎日泣いている私の姿など望んでいないんだろう。

    私が笑えば彼も笑い、彼が笑えば私も笑っている。
    そんな風に繋がりを感じながら、目に見えなくても
    これからも苦しいほど愛しているキモチと一緒に
    歩いていけばいいだけのことなんだ。と気づかされた。

    すべては想像すること。
    私の電波をDJアークさんのように、息子は盗聴しながら
    時に笑ったり怒ったりしてくれてるといいな。

    いろんなことを考えたり、気づいたりするきっかけをくれた
    この「想像ラジオ」を献本してくださったブクログさん、
    河出書房新社さん、そして、素晴らしい世界を見せてくれた
    いとうせいこうさん、ありがとうございました。

    • 円軌道の外さん

      心に沁みるレビューに
      亡き人との
      いろいろな記憶を
      自分も思い出しました。


      自分自身、父親や親友や恩師をはじめ
      震災や...

      心に沁みるレビューに
      亡き人との
      いろいろな記憶を
      自分も思い出しました。


      自分自身、父親や親友や恩師をはじめ
      震災や事故で
      何度となく
      大事な人ばっか失ってきたけど

      けどそこで立ち止まってるのを
      一番悲しむのは
      いなくなった人たちやと
      俺は思うんです。


      自分がもし死んじゃった立場ならどうかなって考えた時に、
      俺の死を理由に
      誰かが前に進めなくなってたら
      やっぱ悲しくなると思うんです。

      死はいなくなった人のためにも
      乗り越えていかなきゃならないことやし、
      別れを怖れずに
      生きていくことが
      死んじゃった人が一番喜んでくれることやと
      自分は思っています。


      人の縁も
      忘れたい過去も
      忘れてはいけない気持ちも
      これからの未来に
      繋がってます。


      辛い過去があるからこそ
      人は強くなろうと思うし、
      そこから何かを学ぼうとする。


      なぜ人は
      年齢を重ねるんやろうって
      よく考えるんやけど、
      俺は思うんです。


      過去に縛られ、
      生活に逃げ込んで
      ドアを閉めるためなんかじゃなくて、

      まだ見ぬ新しい人たちと出会うため。

      そして今まで出会ってきた人たちの
      恩に報いるため。


      先に逝ってしまった人たちの生きれなかった思いを胸に
      1日でも多く生きるため。


      自分自身が選んだ場所に
      自分の足で
      歩いていくためなんとちゃうんかな〜って。


      俺もかなり時間かかったけど
      自分を捨てた母親も、
      叔父さんに虐待を受けたことも、
      石を投げつけた近所の人たちも、
      自分に罪をなすりつけた教師も、

      今は全て
      手放すことができました。


      自分のせいで死んでしまった
      親友への後悔の気持ちも
      忘れることなく受け止めて、
      亡くなった人たちの思いに
      少しずつでも報いていかなきゃって
      今は思って
      日々生きてます(^^)


      山本あやさんのこのレビューが
      大切な人を失って立ちすくむ
      誰かの後押しになるよう
      切に願っています。


      長文失礼しました。

      2013/04/22
    • 山本 あやさん
      [♥óܫò]∠♡円軌道の外さん

      生きていくことって失っていくことの繰り返しで
      なんともやるせなくて、辛いなぁ…って
      思っちゃうことってあり...
      [♥óܫò]∠♡円軌道の外さん

      生きていくことって失っていくことの繰り返しで
      なんともやるせなくて、辛いなぁ…って
      思っちゃうことってありますよね。

      でも、今ある悲しみだけに囚われるのは
      それも違うし、そこに絡まってしまうと、
      他の大切な人や事柄が見えなくなって、また大切なものを
      失うことにもなりえたり、他の人も悲しませることに
      なってしまうこともあるしですよね。

      時間が解決なんて生易しいことばかりじゃないけど
      だからって前を、上を、向くことを諦める理由にはならないし、
      ゆっくりでもしっかりと進んでいきたいですよね[*Ü*]

      円軌道の外さんが葛藤したり苦しんだりしながら
      手放してきた想いが、その分強い幸せを実らせてくれる
      ことを心から祈ってます[*Ü*]
      私も、もう亡くなってしまったんですが、長い間
      実の父に苦しめられ、恨んだりもしたんですが
      憎しみを手放して、すべてを許そうと思った時に
      ほんとにキモチがらくになりました。
      でも、憎しみが消えると残るのは愛情だけで、それゆえに
      切なさは倍増しちゃったりするけど、憎しみなんて感情は
      一番必要ない感情だから、どんどん排除して
      柔らかくてあったかいキモチだけを持っていきたいですね。

      許し許され、愛し愛されて生きていくことって
      ずこく幸せで尊くて、でもその分苦しいことも
      たくさんあるけど、でもでも、苦しい時に誰かの側に
      そっといられるような生き方ができるといいですよね。
      2013/04/23
  • 「想像ラジオ」 想像していた内容と違った。

    実際にラジオがあったら救われる人もいるかもしれないけど
    逆に傷ついてしまう人もいるかもしれない。

    受け入れられないことも、受け入れ出来ることも
    共有できる部分、共有できない部分もあって

    でも最後には泣いていて、うまく消化できない自分がいる。

    死者の想いや生存者の想い、葛藤。
    いとうせいこうさんの葛藤も入り乱れて
    私も気持ち乱れる、ざわざわする。

    テーマが重い内容の本は難しい。軽く語れない。
    目をそむけて耳をふさいでるだけなのかな、自分は。
    ちょっとショックだった。

  • DJアーク、そしてリスナーのみんな。3.11が未だリアリティを持てずにいた私に、この登場人物たち「死者」が教えてくれたことがあったような気がします。

  • この小説は読んでいて辛い。未曾有な震災によってある日突然数多の人の命が理不尽に奪われた。あまりの大きさ、想像を絶する出来事について、作家の方々は書きあぐねているのかもしれない。それを真っ向から描いたいとうせいこう氏は、小説に、読者に一石を投じているのではなかろうか。ラジオという媒体に乗せ声なき声を発信する、それは軽薄と映るかもしれないが、逆にそいう形でしか表現できないほどのインパクトのある出来事だった。生者と死者との関係、生者は死者の声を想像によって推し量る、それが死者を弔うことになるのではないだろうか。

  • いとうせいこうさんの『想像ラジオ』を読んだ。
    わけられない二つの間の微かな電波のローカルラジオ
    何処かにあったけど、言葉にならなかった、胸のなか忘れかけてた、奥深い透明な静かな名無しのラジオ局。
    こんな描き方もあるんだな、素晴らしい一冊だな。

  • 最初は想像するラジオって画期的でおもしろい。と思いながら読み始めたが違った。たまたま3月上旬に読んだのでいろいろと考えさせられる話しだった。
    死者の声、対話。3.11の津波に対する怒りの描写。
    答えはない。考え続けることが大事。
    この時期に読めたのはよかった。

  • 震災の時、自分がラジオに助けられ励まされたことを思い出した。

    DJアークの語り口は明るく饒舌なのに、読み進めていくと心がシンと静まっていくような話だった。
    死者を想い、思うこと。
    それは、生きている人が活きていくために必要なことなのではないか。

  • 人はひとりじゃない
    肉体をなくした魂もつながりを求めている

  • なぜか一気読みしてしまった。別に読みかけていた本を飛ばして一気に読み切った。誰もこの本を批評する事はできない。この本は一応DJアークの話として終わっているが、終わりのない話だ。今もどこかで想像ラジオは鳴っているだろうし、誰かがDJをしていると思いたい。この本を読んでも震災の被害に会われた方の本当の悩み、苦しみは理解できないのだとも思うが、自分に置き換えて考える事が少しできた気がする。

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著者プロフィール

いとう せいこう
1961年、東京都生まれ。編集者を経て、作家、クリエーターとして、活字・映像・音楽・舞台など、多方面で活躍。『ノーライフキング』でデビュー。『ボタニカル・ライフ ―植物生活―』で第15回講談社エッセイ賞受賞。『想像ラジオ』が三島賞、芥川賞候補となり、第35回野間文芸新人賞を受賞。他の著書に『ノーライフキング』『鼻に挟み撃ち』『我々の恋愛』『どんぶらこ』『「国境なき医師団」を見に行く』『小説禁止令に賛同する』など。

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