- Amazon.co.jp ・本 (237ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309021768
感想・レビュー・書評
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ギフ(義父)と二人で暮らすテツコ。
夫の一樹は、結婚2年で25歳の若さで亡くなった。
あまりに早い別れを受け入れかねたまま、一樹と結婚したという事実を軸に、穏やかな暮らしを重ねる日々。
それが7年にもなるのだが‥
テツコには付き合っている男性も出来たが、結婚は考えられない。
一家の隣人、一樹の従弟など、一樹をめぐって思わぬ話が展開します。ドラマチックというのではないけど、ささやかできらっと心に残るような。
一樹の母・夕子ももう亡くなっています。
穏やかなギフは暮らしやすい相手だが、彼も完璧な人間というわけじゃなかったんですね。
夕子の視点、一樹の視点からの話も含めた、短編連作のような形。
こういうの、好きです。
軽くなりすぎず重くなりすぎない現実味と、はかなさ、切なさ。
人が関わり合い思い合い、完璧ではない道行きをふと寄り添わせていく‥
悲しみを抱えつつ、しだいに解けてゆく心。
最後に持ってこられた出会いのすがすがしさが印象に残ります。
ほっとするような温かみがありました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ギフ(義父)と暮らすテツコ、その周囲の人々。生きるということについて、いろんな人の視点から描いていく。
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ムムム
義父(ギフ)とテツコのほどよい関係性。
パワースポット
亡くなったカズちゃんのキーホルダーは空を飛んでるよ!
山ガール
ギフが山ガールと山登りする。
虎尾
一樹の乗っていた車をもらい受けた虎尾。
魔法のカード
テツコの今彼、岩井さんが詐欺にあったような…。
夕子
親しい人が亡くなるときに涙の出る夕子。
男子会
ギフとテツコと岩井。
一樹
わんこの名前は「パン」。
夫婦脚本家である、木皿泉。
(野ブタとかセクシーボイスアンドロボとかだって!!)
その初めての小説がこの作品。
読みやすいの一言かなー。
あと、ほっこりした!!
感想があっさりなのは、ずいぶん前に読んだからー笑 -
また一人、大切にしたい、読み続けたい作家に出逢えた。
テツコ、ギフ、岩井、そして一樹。
時間を行ったり来たりしながら、気づきたいコトに気づかせてくれました。
とても良い小説でした。
ムムム
ふっと楽になれる…そんな気がした物語でした
パワースポット
悲しいとか辛いとかじゃない「助けて」
近しい人の死に直面したときの言葉をもらった気がした
山ガール
大切な温かいものを掴めそうな気がした
虎尾
曖昧だけど確たる信を得られそうな気がした
魔法のカード
求めていたものが在ると気がつく。それは幸せなことなんだな、そんな気がした
夕子
たんたんと紡がれる言葉に、しずかに積み重なる幸せと哀しみが同居していた。そんな気がした。
男子会
時が流れた。必要な時間が流れた。
「人は変わってゆくんだよ。それは、とても過酷なことだと思う。でもね、でも同時に、そのことだけが人を救ってくれるのよ」
とてもよくわかる。そんな気がした。
一樹
「動くことは生きること。生きることは動くこと。」
深く刻まれた気がした。
良かった。木皿泉さんの本に出会えてよかったです。
木皿泉さんの二作目が楽しみです。
私の本棚にまた一冊並ぶ本ができました。 -
一樹が死んで7年経った今もギフ(義父)とギフの家で暮らしているテツコ。
二人の関係は熟年夫婦のようにのんびり心地よい。
ふたりの間には暗黙のルールがあって、線引きをしているのもいい。
そんなふたりが周りの人達を癒し、また周りの人達から癒されながら生きていく。
そんなある日、岩井がテツコにプロポーズをした。
ギフとテツコの関係はどうなるのか…
ギフとテツコも最初からこんな関係ではなかったような気がする。
暮らしというものがあるあの家で生活することによって、愛する者を亡くした者同士、遺された者同士の間に不思議な絆が育っていったのではないだろうか。
そこにはきっと亡くなった一樹も一緒にいた。
ギフとテツコ、失くす痛みを知っているだけにお互いが相手を残していくことが出来なくなってしまったのではないか。
愛する人を失くす気持ちはどこまで辛いのだろうか。
一つ一つの章で心に響く言葉があり、はっとさせられた。
特に気に入ったのは、「動くことは生きること。生きることは動くこと。」
そうだよね。幸せだよなぁって思った。
最後の章で『昨夜のカレー、明日のパン』という言葉が出てきたときに、一樹のあの言葉が活きてくる!
「魔法のカード」の章は苦手。ダークな心を持った私はイラっとしてしまった。
一番好きなのは「夕子」頷きながら読んだ。
生きるということ、暮らすということをふんわりと教えてくれる物語。
ゆるゆるしたい人にはオススメ、ドキドキハラハラしたい人には物足りないかも。 -
失った者の記憶を抱え生きる人々の、日常生活を描いた連作短編です。
若くして夫を亡くしたテツコと、夫の父で妻に先立たれたギフ。
ひとつ屋根の下に暮らす2人の日常は、微妙なバランスの上に成り立っているようです。
どこかで「このままではいけない」と思いつつも、今の暮らしを壊すこともできない。
それでも日常はまわり、ゆるゆると変わっていくものがある…
私たちの日常は小さな変化の連続であることを意識させられる物語でした。
木皿泉というのが、脚本家夫婦のペンネームであることは初めて知りました。
夫婦で、嫁と義父の物語を作る…というのは、どんな感じだったのでしょう。
創作現場を覗いてみたい気持ちになりました。 -
この話好きだなぁ。
表紙もタイトルも、なんかいい感じ。
TVドラマの脚本家夫婦の処女小説とのことで、これも構成がとても巧くてすぐ連ドラにできそう。
「すいか」や「野ブタ」「Q10」とか、割とおもしろく見てました。
読み始めは、余白が多いなぁとか、ところどころのカタカナ使いがアレだなぁとか、雑念まじりで読んでいました。
でも、物語が進んで絡んできたら、それぞれの気持ちのやり場や持ちようが見えてきて、いろいろ分かってくるとねー。
みんなみんな、不器用で一生懸命でとても愛おしい。
岩井さんなんて最初あちゃーと思ったけど、最後すごい好きになってた。
「虎尾」あたりから後半は泣けて泣けて。
その中にもクスッと笑えるところや、チャーミングなところがあって。
何気ない一言が、ものすごく深くて。
よくある「喪失と再生」の物語ですが、底にあるメッセージがシンプルで力強く伝わってきます。
広がり方も、終わり方も、じわーっと悲しくて切なくてやさしくてよかった。 -
また最高の本に出会ってしまった。
多分一生好きな本。
8つのお話どれも大切で、抱きしめたくて、心の一番大事なところを温かくしてもらった。
激しくてヒリヒリする本も好きだけど、こういうただただあったかい、っていう本を読むのが本当に久しぶりすぎて時々泣きそうになりながら読んでた。特に好きなのは、「魔法のカード」と「夕子」。
『世の中、あなたが思ってるほど怖くないよ。大丈夫』って、一生懸命伝えてくれる本です。