昨夜のカレー、明日のパン

著者 :
  • 河出書房新社
3.89
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本棚登録 : 6103
感想 : 918
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  • Amazon.co.jp ・本 (237ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309021768

作品紹介・あらすじ

人気脚本家、木皿泉のはじめてのる連作短編小説『昨夜のカレー、明日のパン』は、第11回本屋大賞 第2位に輝き、2014年10月には仲里依紗主演でドラマ化されました。
主人公のテツコは、19歳で結婚し2年後に夫が病死してしまいます。家族でありながら血のつながらない義父との関係を軸に二人の周りの人々を丁寧に描いています。彼らの日常はどこか温かく、読者をしあせな気持ちにしてくれます。

感想・レビュー・書評

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  • 「人は変わってゆくんだよ。それは、とても過酷なことだと思う。でもね、でも同時に、そのことだけが人を救ってくれるのよ」

    悲しみや苦しみをどうやっつけるか。

    ほんのちょっぴり個性的な人たちの、心の奥底にある寂しさや切なさがやさしく書かれています。
    些細なことが幸せで、平坦な日々が心地よい。でも、生きていればいろいろある。

    悲しみや苦しみ、無理やりやっつけなくても良いのかな。

  • 木皿泉さんは、生きるのがちょっぴり下手な人。。。
    人々が忙しく行き交う大通りからふっと逸れて、いつのまにか土手を降り
    川沿いをふらふら歩いているような人を描かせたら天下一品!

    『野ブタ。をプロデュース』の野ブタ、『セクシーボイスアンドロボ』の三日坊主。
    個人的には『Q10』の、病気で留年して入院生活を送る久保くんが忘れられません。

    初の小説となるこの本にも
    夫を喪って何年も経ち、新しく好きな人ができても
    義父とのゆるゆるした日常を手放すのはなんだかめんどくさいと思ってしまうテツコ。
    たまに薀蓄のある素敵なひと言を口にするのに、いかにもな悪女に引っかかって
    お金を騙し盗られても、しばらく気づかないで右往左往するギフ。
    見ず知らずの子どもを心配して貯めていた結婚資金をはたき
    名刺の裏に書きなぐった「魔法のカード」まで一緒に手渡してしまう岩井。
    笑顔を作れなくなって仕事をやめた、元キャビンアテンダント。
    顔面神経痛で、いつもヘラヘラして見えるようになってしまって信用を失い、
    仕事をやめた、元お医者さん。
    怪我で正座できなくなって(以下同)。。。元お坊さん。
    などなど、不器用で、滑稽で、でもいとおしい人たちの物語が
    生き生きと綴られています。

    中でも特に、『パワースポット』での
    CAなのに笑えなくなって、毎日仏頂面で空を眺めているせいで
    ギフとテツコに「ムムム」とあだ名をつけられた宝と
    同じように図らずも仕事を辞めねばならなかった元医者、元僧侶トリオの
    あっけらかんとした未来予想図と
    『魔法のカード』での、分厚い札束でも救えなかった少女を救う、即席の魔法のカード。
    フォアグラを乗っけたステーキで、もりもりエネルギーを充填するのではなく
    おばあちゃんが漬けた梅干しをひとつ入れたおかゆで
    じわじわ心も身体もあたためるような心地よさに包まれます。

    昨夜のカレーを食べてまったりしていたところにおつかいを言い渡され
    しぶしぶ明日のパンを買いに出た少年が
    明日のパンのように、明日のパン以上に未来を照らす、大切なものに出会う最終話。
    それまでの小さな物語がはずかしそうに手をつないで
    「これでいいよね? これでもよかったんだよね?」と語りかけてくるようで
    思わず「うんうん」と頷きたくなってしまうのです。

    • まろんさん
      まっき~さん☆

      心配してわざわざコメントくださるなんて。。。感激です!
      持つべきものは、やっぱり心やさしいブクログ仲間さんだ!とウルウルし...
      まっき~さん☆

      心配してわざわざコメントくださるなんて。。。感激です!
      持つべきものは、やっぱり心やさしいブクログ仲間さんだ!とウルウルしています。

      実は、5月に亡くなった義父が、ホスピスに入る前に弱った身体で
      義母のために、いざという時のための書類を揃えたり身辺整理をきっちり済ませていたことを知り、
      ヒマな私がこんなにのんべんだらりとしてちゃいけない!と触発されて
      夏の大掃除を始めたのですが、エアコンのない納戸に閉じこもったりしてバタバタやっていたら
      やっぱり、急に慣れないことをするものじゃありませんよね、典型的な夏バテ状態に。。。

      こんなおばかさんな理由で心配をかけてしまってごめんなさい(>_<)
      ナマケモノが、たまに殊勝な気分になっても、そうそううまくはいかないものですね。
      でも、まっき~♪さんの優しさに触れることができて本当にうれしいです!
      ありがとうございます!
      2013/07/23
  • ぼんやりと生きている。
    何のためにとか、どうなりたいとかあまり考えず、毎日毎日楽しみなことを指折り数えて、時には「ここまでは頑張って生きよう」なんて決意しながら。

    人生設計という言葉がある。
    何年後にどうなっていたいかを考えて今から準備するべき、らしい。
    職場の人と話していると「どうなりたいの?」とよく聞かれる。
    例えば、管理者になりたいとか、プログラマになりたいとか、そういう回答を求めているのかな…?と思うが、別にどうこうという希望はないのです。
    穏やかに生きていられればいい。

    ただ、「希望がない」と言う時の罪悪感は何だろう?
    私はダメな人間だと思わされるあの瞬間の雰囲気。
    成長のない人間というレッテルを貼るかのような視線。
    あぁ…息が詰まる。

    キャリアアップするべく勉強すること。
    老後のことを考えてお金を貯めること。
    未来のことを考えて今を生きている人は眩しい。
    でも、同じようにすることを想像すると私は息が苦しくなってしまう。
    社会の流れに置いて行かれないように、前や周りを見て歩幅を調整しているように見てしまう私はひねくれているのかもしれない。

    そして、「私は私」と言い切るだけの強さがない自分にうんざりしてしまう。
    置いて行かれるのが怖いのは同じなのです。
    むしろ誰よりも怖がっているのです。情けない。

    この物語の中の人達は私と同じとても無力な存在だと思った。
    苛立ち、泣いて、笑って、少し先の未来に怯えてもいる。

    だけど、とても、とても優しいのです。
    弱いし、失敗するし、落ち込むし、迷惑をかけるし、嘘もつく。
    でも、優しい。本当に優しい。

    緩やかな毎日の中で少しずつ変わっていく自分自身を感じて生きること。
    永遠に続くわけではないこの時間を慈しむこと。
    パッと見には大きな変化が見えないそんな生活にも成長はある。
    成長という言葉が相応しくなければ、ただ変化と言ってもいい。

    岩井さんが毎日会社で働いて貯めたお金を魔法のカードの魔法に変えてしまったような、そんな人生。
    騙されたら辛いし、痛いし、きっと馬鹿な行いなのだろう。
    でも私はそんな人生が愛おしい。

    確実な幸せや安定をつかんでほしいと願ってくれている人達にごめんなさい。
    勧めてもらう道が私には確実なものだと思えない。
    テツコとギフと岩井さんの過ごす時間の流れに身を置きたいと願ってしまうのです。

  • 25歳の若さで
    この世を去った一樹。

    結婚からたった二年で遺されてしまった
    一樹の妻のテツコ28歳。

    そんなテツコと
    7年経った今でも一緒に暮らし続ける
    一樹の父で気象予報士のギフ。


    「すいか」「野ブタ。をプロデュース」「セクシーボイスアンドロボ」「Q10」など
    数々のテレビドラマの名作を生んだ人気脚本家、木皿泉による
    家族の再生を描いた
    初の連作長編小説。


    今年読んだ小説の中で文句ナシの一等賞。

    さすがと言おうか
    なんと言おうか
    タイトルからしてもう
    秀逸過ぎます。
    (ちゃ〜んと意味があるのですよ)



    心の名言集にストックしておきたい
    含蓄あるセリフの数々。

    会話がとにかく軽妙で
    脱力感たっぷりで面白いし、

    手の甲に忘れないように書いた「ガス代」や
    顔面神経痛で
    いつもニヤニヤしてしまう産婦人科医など
    リアリティ溢れるエピソードの数々は
    木皿さんの観察眼の賜物だろうし、

    容易に風景が浮かび上がる文章は
    極めて映像的だし、
    (傷ついた者たちで作るパワースポットという名の小さな惣菜屋がありありと浮かんできました)

    さすが名脚本家!
    初めての小説らしいけど
    いやはや脱帽です。


    読みながら
    どこか懐かしさを感じでいたけど、
    なるほど
    コレは昭和のホームドラマの匂いなんやって
    腑に落ちました。


    ある日突然、笑うことができなくなった
    一樹の幼なじみの女性、ムムム(タカラ)や
    甘いものが好きで
    ちょっと変わり者の
    テツコの恋人・岩井、
    凛とした山ガールの「師匠」など

    傷を抱えながらも
    心のやりとりを決しておろそかにしない
    血の通った登場人物たちに
    どれだけハートを持っていかれたことか。


    誰かの死や悲しい記憶を人は抱えて
    変わることを繰り返しながら生きていくし、
    そのことだけが人を救ってくれる。


    忘れず
    とらわれず生き続けていれば、
    亡くなった人の
    笑顔を見る時が必ず来る。

    哀しみにも終わりはあるんですよね。


    何かにとらわれ
    立ちすくんでしまいそうになった時は
    この小説を思い出そう。

    あなたを照らす
    三日月の光になってくれる、
    あたたかで
    普遍的な強さを持った小説です。


    ギフさん、俺も
    ドボドボのウスターソースにひたして食べる焼売
    大好きですよ(笑)

    • 円軌道の外さん

      takanatsuさん、
      コメントありがとうございます!

      ホンマにホンマに
      コレは沢山の人たちに読んでいただきたい小説です(^...

      takanatsuさん、
      コメントありがとうございます!

      ホンマにホンマに
      コレは沢山の人たちに読んでいただきたい小説です(^O^)

      夫を亡くした妻と
      息子を亡くした義理の父が
      同じ屋根の下で暮らしながら
      ゆっくりゆっくりと
      喪失を埋めていくストーリーなんやけど、
      悲しい話を悲しく描いていないし
      深刻な話を深刻には
      描いてないんですよね(笑)

      レビューにも書いた通り
      ハッと思わせてくれる名言だらけで
      微笑ましい笑いの中に
      希望を感じさせてくれます。

      自分自身
      父親や親友を含め
      震災や事故や病気で
      親しい人を
      何人も亡くしてきてるので、
      本当に読んで良かったと思えました。

      装丁も可愛いし(笑)
      普段は文庫本派で
      新刊は買わないんやけど
      衝動買いして正解でした(笑)

      良作のドラマを沢山手がけてきた
      木皿さんだけに
      ドラマ化や映画化もあるかもですね(笑)

      タイトルの秘密は
      最後の最後に分かります。

      その感動を
      今から味わえる人がうらやましいくらい
      いい話が詰まってるので
      是非とも手にとってみてくださいね(^_^)v

      2013/05/05
    • ゆりさん
      読みました。円軌道さんの「感性のカタチ」がよくわかる本でした。
      流石、脚本家の方ですね~。
      描写が凄く映像的でした。いい意味で。
      そこを読ん...
      読みました。円軌道さんの「感性のカタチ」がよくわかる本でした。
      流石、脚本家の方ですね~。
      描写が凄く映像的でした。いい意味で。
      そこを読んだだけで、映像が頭に浮かぶのは、木皿さんが映像を念頭に置きながらこの本を書いてらっしゃるからなんだろうなぁ。

      私はテツコが一樹のことを骨が無くても「忘れない」と言いきったところと、岩間さんの話、タカラの話が好きです。
      2013/08/15
    • 円軌道の外さん

      ゆりさん、ここにも
      コメント
      ありがとうございます(^O^)


      「感性のカタチ」って
      なんかいい匂いのする(笑)
      素敵...

      ゆりさん、ここにも
      コメント
      ありがとうございます(^O^)


      「感性のカタチ」って
      なんかいい匂いのする(笑)
      素敵な表現ですね!

      映像的なのは
      分かるなぁ〜♪

      読んでると容易に
      一つ一つのシーンが浮かんできますもんね(^_^)v


      木皿さんは
      義理と情のある
      懐かしいホームドラマを
      今の感覚で描くのが
      ホンマ上手いんですよ(笑)

      あと有川さんと同じく
      会話がリアルで
      嘘臭くないのが
      いいんスよ(笑)♪


      自分もテツコさんのような
      揺らがない強い愛を
      最愛の人に注いでいけたらって
      ホンマ思いましたね(笑)


      あとタカラのエピソードが
      かなりグッときたなぁ〜(>_<)


      大きな事件が起きなくても
      波乱万丈な人生でなくても、

      自分はこういう
      ちょっとした心の機微を細やかに描写してくれる、
      何かが起きた時に、人の心がどう動くかを
      丁寧に扱っているストーリーに
      惹かれるのかもしらないなぁ〜(^_^;)


      2013/08/18
  • 最後の最後で、タイトルの理由を知る。
    なるほど、そう来たか!うーん、素敵♪
    読み終わった後におなかがポカポカしてくるような感覚。
    この本の暖かさ優しさが体の隅々までしみじみと染み渡る。
    うん、元気が出てきた。
    明日からまた頑張れそうだ。

    図らずもこの本の前に読んだ山田詠美の作品とテーマは重なっていた。
    大事な人を亡くした後をどう生きるか。
    一見重いテーマのように見えるが、この本には暗さはみじんもない。
    28歳で亡くなった一樹、その妻のテツコ、父のギフ、そして3人にかかわる人たち。
    それぞれのエピソードに死の影がちらついてはいるが、悲しさはそこにはない。
    むしろおかしみがある。

    身近な大事な人を失って、途方に暮れて悲しむばかりが人生ではない。
    生きている限り前に進まなければならない。
    それは決して死者を忘れるわけではない。
    決して忘れない。忘れないけれども前に進む。
    そうすればきっと新しい未来が開ける。
    そんなメッセージを感じた。

    ああ、いい作品だったな。
    木皿さん、有名な脚本家らしいけれどまったく知らなかった。
    たまたま図書館の新刊コーナーに並んでいて、ブクログ仲間さんの素敵なレビューを思い出し手に取ってみた。
    誰も借りてない、一番乗り。
    この本が私を待っていてくれたのか。
    運命的だな、とひとりごちだりして・・・。

    • vilureefさん
      nobo0803さん、こんにちは!

      この本、私の中では今度の本屋大賞を狙っています!!(笑)
      だってブクログ評価、今のところ☆4.4...
      nobo0803さん、こんにちは!

      この本、私の中では今度の本屋大賞を狙っています!!(笑)
      だってブクログ評価、今のところ☆4.4ですよ。
      これってすごいですよね~。
      これは誰に勧めても間違いない本です!!

      そうですか、nobo0803さんご利用の図書館にはないのですね。
      私もたまたまですよ。
      タイミングが良かったのでしょうね。
      今をときめく池井戸潤さんの本も直木賞受賞のずっと前に新刊コーナーにひっそり置いてあるのを手に取ってハマりました。
      その時も一番乗り。
      新刊コーナー、何気にあなどれません(笑)

      nobo0803さんのレビュー楽しみにしています♪
      2013/06/03
    • 円軌道の外さん

      こんばんは(^O^)
      いつも沢山のお気に入りポチとコメント
      ありがとうございます。

      ちょっと体調を壊してしまい
      お返事遅くな...

      こんばんは(^O^)
      いつも沢山のお気に入りポチとコメント
      ありがとうございます。

      ちょっと体調を壊してしまい
      お返事遅くなってすいません!


      自分は普段は新刊には手を出さず
      文庫化するまでじっと我慢の子なんですが、
      木皿さん初の小説は
      是非とも読んでみたかったので
      珍しく買っちゃいました(笑)

      それにしても毎回驚かされるのは
      vilureefさんの的確で
      意志のこもったレビューの数々。

      この本に関しても
      自分が言いたかったことを
      簡潔にうまく言葉に表してくれていて
      『そうそう、そういうことなんよなぁ〜』って
      レビュー読みながら
      終始頷きまくってました(笑)(^_^;)


      いつも思うのは
      映画にしても小説にしても音楽にしたって
      表現って、

      悲しみをそのまま悲しく描くより
      淡々とした一見幸せな日常の中にこそ
      悲しみはあるのかな〜って思うし、

      死をあたかも特別なもののように捉えてはいない
      木皿さんのスタンスに
      個人的には
      スゴく共感したんですよね。


      木皿さんは沢山の傑作ドラマを手がけてきた
      夫婦で共同執筆している脚本家ですが、
      オススメは
      『二度寝で番茶』という
      エッセイ集です(笑)

      片っ端からメモしたくなるほど
      含蓄溢れる名言が続出する深くて
      笑える内容なので(笑)
      機会があればまた読んでみて下さいね。
      2013/06/25
    • vilureefさん
      円軌道の外さん、花丸&コメントありがとうございます。
      しばらくお見かけしないと思ったら体調崩されていたのですね。
      もう大丈夫ですか!?
      ...
      円軌道の外さん、花丸&コメントありがとうございます。
      しばらくお見かけしないと思ったら体調崩されていたのですね。
      もう大丈夫ですか!?
      あまりご無理なさいませんように。

      なんだかお褒め頂いてこそばゆいのですが、私のレビューなんてまだまだです(^_^;)
      でも私のつたないレビューでも一人でもいいから感動を伝えることが出来たらいいなと思って試行錯誤で頑張ってます♪

      さて、私こそお礼を言わねば。
      円軌道の外さんのレビューを思い出してこの本を手に取ったのです。
      実は図書館の新刊コーナーにこの本と伊坂さんの「ガソリン生活」が並んでいて、最後まで悩んだのですが結局この本に決めました。
      果たして大正解!!
      ありがとうございます。

      『二度寝で番茶』ですね、さっそくメモメモ( ..)φ
      本屋さんで『木皿食堂』と言う新刊も見かけたのでただいま図書館予約中です。
      楽しみ~♪
      2013/06/26
  • テツコはギフ(亡夫の父)と二人暮し。真夜中,夫の病院からの帰り道,焼き立てのパンの匂いで悲しいのに幸せになる回想が心に染みる。幸せのあり方は人それぞれ。

  • 何の情報も無く、手に取った初めての作家さん。
    カタカナの名前がやたら出てきて読みにくいな〜と思っていたが、どんどん引き込まれていった。
    登場人物1人1人が弱さも強さも持ちながら、それを人への優しさにかえていく。そして会話やエピソードが本当に面白くてニヤニヤ笑ったり、ジーンと涙したり。
    本の題名について、やっと最終章で納得。
    あまりに面白すぎて、作家さんについて調べたらご夫婦なのか!?そして脚本家?あ!ドラマ私も見たことある!とますます興味を持って大好きな作家さんになりました。
    この本のスピンオフがあればいいのにな。
    次は何を読もうか楽しみすぎる!!

  • 今朝、NHKの「あまちゃん」を見ていたら、
    20年ほど前、家を出て東京に旅立つ日に母親が駅に見送りに来てくれなかったことを、
    今になっても「母親から認められなかった」と感じているキョンキョンが、
    「実は鉄橋の下から大漁旗を振って見送っていたんだよ。」と
    その当時を知る人から教えられ、絶句しているシーンに出くわした。
    キョンキョン、よかったね。
    当時、自分の目で見ることができたなら一番よかったけれど
    それでも今、知ることができて本当によかった。
    教えてくれた人がいて、ようやくその日の2人がつながったんだなぁと思った。


    TVドラマの人気脚本家の作品ということで、とても楽しみにしていた本です。
    「野ブタ。をプロデュース」も「Q10」も見ていたので。
    どちらも旬のアイドルが出演するということで見始めたけれど、
    とてもよかった。
    何気ない一言にずいぶん泣かされた。
    押しつけられた感動ではまったくなく、見入っているうちに涙がすーっと流れるような。
    人の寂しさ、無常感、相手を思う気持ち、友人、親子の情。
    見終わったあとに、余韻が残るドラマだった。


    それと比べると、ずい分抑えられているなあと思う。
    淡々と穏やかな筆致で描かれているが、印象に残る言葉はもちろん多い。

    「無駄ってものがなかったなら、人は辛くて寂しくて、やってられないのかもしれない」(P151)
    「動くことは生きること。生きることは動くこと」(P236)
    「この世に、損も得もありません」(P236)

    7年前に亡くなった一樹の嫁のテツコと、一樹の父のギフは今も同居を続けていて、
    親子のような、同志のような、友人のような・・・。
    7年たって当時の深い悲しみからは解き放たれているように見えるけれど、
    時折寂しさとともになくした人をが思い出される。
    2人につながる人たちが一樹との別れで感じた寂しさや後悔と、
    その後の彼のいなくなった暮らしぶりを描いていく。
    そこには目に見える、またはまだ気づかない繋がりがある。

    人がつながっていく話は希望が持てる。
    人との別れがあっても、穏やかで明るい気持ちが湧いてくる。
    それでも、先のキョンキョンではないけれど、
    つながらない気持ち、気づかないままの気持ちのなんと多いことか。
    本やドラマでは、すれ違いや誤解の場面を見るたびに歯がゆい気持ちになるけれど、
    現実には気づいていないだけで、そんな事ばっかりなんだろうね。
    近すぎて見えないことも多そうだし。
    もうちょっと目を凝らして、人の気持ちに思いに馳せないと、
    もったいないなと思った朝の出来事でした。

    • nico314さん
      vilureefさん、こんにちは。

      日テレ土曜21時のドラマは、結構好きなんですよ。その中でも、「野ブタ」と「Q10」は、一見突飛な設...
      vilureefさん、こんにちは。

      日テレ土曜21時のドラマは、結構好きなんですよ。その中でも、「野ブタ」と「Q10」は、一見突飛な設定のように見えて、学校や家庭生活に普遍的に存在する問題に焦点を当てていたのが、とても印象に残っています。
      気になる作家さんです。
      「木皿食堂」のレビュー楽しみにしています!
      2013/06/24
    • jyunko6822さん
      nico314さん、おはようございます。
      レビューいつも見せていただいてました。
      この本には家族として暮らす人と人のつながりが素っ気ないよう...
      nico314さん、おはようございます。
      レビューいつも見せていただいてました。
      この本には家族として暮らす人と人のつながりが素っ気ないようでいて実は密なんだよということが描かれてるように私は感じたのでしたが、先程読み終えた「たんぽぽ娘」にも夫婦の親密具合が感じられ今、ほわ~んとした状態でおります。
      これからもたくさんの本のレビュー楽しみにしてます。フォローさせていただきますね。
      2013/06/25
    • nico314さん
      jyunko6822さん、こんにちは!

      jyunkoさんの本棚に遊びに行ったら、好きな本や読みたい本がいくつもありました。
      どのよう...
      jyunko6822さん、こんにちは!

      jyunkoさんの本棚に遊びに行ったら、好きな本や読みたい本がいくつもありました。
      どのような感想を持たれているか、順に拝見させていただきますね♪
      楽しみ!


      2013/06/25
  • テツコとギフ、それに加えて岩井の関係性は、なんとも不思議。
    普通はなかなか成立しないものだと思うけど、それが自然に描かれていて、心地良かった。
    ドラマの存在は全く知らなかったけど、観てみたかったな。

  • 何だろう?この感覚。大きな事件が起きるわけではない。言ってみればある人々の日常。
    どの人にも生きている限りは物語りがあるんだな…と、思える。
    さっぱりしてるけれどしっとりと染みてくる。居心地(読み心地?)がいい感じ。

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著者プロフィール

夫婦脚本家。ドラマ「すいか」で向田邦子賞、「Q10」「しあわせのカタチ~脚本家・木皿泉 創作の“世界”」で2年連続ギャラクシー賞優秀賞。他に「野ブタ。をプロデュース」等。著書『二度寝で番茶』など。

「2020年 『さざなみのよる』 で使われていた紹介文から引用しています。」

木皿泉の作品

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