家と庭と犬とねこ

著者 :
  • 河出書房新社
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本棚登録 : 194
レビュー : 25
  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309021881

作品紹介・あらすじ

『ノンちゃん雲に乗る』『くまのプーさん』『ちいさいおうち』などを世に送りだした作家・翻訳家の生活随筆集。これまで単行本で読めなかった貴重な随筆を多数収録。

感想・レビュー・書評

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  • 読んでいる間ずっと、「暖かいもの」に満たされていた。

    石井桃子氏は『クマのプーさん』など児童文学の翻訳を数多く手がけた人。
    そして自宅に児童文庫を開設し、子供と本を結びつける仕事をした人。
    この世界に「暖かいもの」を手渡す仕事をし続けた人の根底がどこにあったのかがこの本を読むと良くわかる。

    東北の山奥での女性たちだけで暮らし。
    厳しい農作業の日々の、その豊かなこと。

    -学校のことよりも映画の事に詳くわしい学生や、電気冷蔵庫をもっているおくさんが、農村の人たちより、えらくもなんともないことは、だれにだってはっきりわかる。(p23)

    -私たちも知らず知らず、いつのまにか、この「文化生活」にひたって、音楽会に数多くいき、画家の名前を多く知っている人間のほうが、えらいようにうぬぼれがちだからである。(p23)

    こういう石井桃子さんが翻訳したからこそ、その物語を読む私たちは作品の世界に入って安心できるのだと、心底納得できる。

    このシリーズは装丁も出色。
    表紙は可愛らしいピンク色のベースに、機械で描かれたのではないパターンのデザイン。
    中の文字色の青さも字体も、ほっとさせてくれる。
    もう一冊の『プーと私』は表紙デザインの柄がところどころミツバチになっていた。
    それに気づいた時に胸に広がった暖かいもの。
    こうして目の前には居ない誰かのために「暖かいもの」をたんねんに作り、届けてゆく事を、わたしたちはできる筈なのだし、続けてゆく事もできる筈。

    この世の中がどんな風になっていっても、あきらめないで暖かいものを守ろう、作って手渡そう、とそう背中を押してもらった一冊。

  • 装丁とタイトルが素敵で思わず手にとりました。何がどうという内容ではないけれど青い文字が美しく、この時代の人々の生真面目な感じが伝わってきます。エッセイだけど中島京子さんの「小さいおうち」に読了感が似ています。

    カンジンこよりの作り方のエピソードが何故か胸に残りました。

  • 「幼ものがたり」(福音館書店)を再読しなきゃ、、、
    今思うと、石井桃子訳に育てられました。いろいろな翻訳ありがとうございました。。。

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    「季節のうつろい、子ども時代の思い出、牧場での暮らし……偉大な功績を陰で支えた日々のささやかなできごとを、活き活きと、女性らしい細やかな筆致で綴る、初の生活随筆集。貴重原稿多数収録。)」

  • 豊かな生活というのは
    豊かな時間を持つこと
    豊かな時間というのは
    自分のすぐそばのモノたちと
    ちゃんと気持ちを通じ合わせられること
    家も畑も猫も犬も
    すぐそばの木も草花も
    ちゃんと 自分の目と耳と心を全開にして
    取り込むこと

    私たち 日本人は
    何を捨て去って
    何を取り込んで
    どこに向かって行こうとしているのだろう
    そんなことを
    考えてしまいました

  • 弱いのにたくましく、優しいのにちゃっかり、・・・いろんなギャップの魅力が随所に見え隠れする。日本語が美しい。ハタンキョウ?→巴旦杏=すもものことだったのですね。プーさんやうさこちゃんを訳された方。装丁のピンクと本分の青い文字が温かい。

  • 家にいた犬デュークの話が好き。声に出して読んだ。牛乳屋さんに付いて歩く姿が目に浮かぶ。
    一人でいる有り難さについての自然な語り方を好ましく感じた。
    著者のように率直に話したいと思った。

  • 文章が素敵なのはもちろんのこと,不器用だというその生き方の慎ましさ,確かさ,力強さがそこかしこに表れる.猫との犬とのはたまた親しい友人との交流の中にそのおずおずと差し出される優しさがとても素敵だ.

  • 多くの人には児童文学者として知られている、石井桃子氏の随筆集。
    この本の出版は2013年だが、作品は、最後の数点を除けばほとんどが、戦後20年くらいの間に書かれている。

    著者を検索すると、たくさんの大きな仕事をされて、児童文学界の重鎮でもあったようだ。
    しかし、この本には、そういった『功績』とはまた別のところにある、筆者の真実や魂が語られている気がする。

    対象が、人であれ、動物であれ、土地という名の文化だったり、ものの考え方だったりするが、自分の感性とシンクロするもの、しないものをこまごまと綴る。
    ちょっとした会話のやり取りの中に潜む、お互いが思う意味の齟齬や、暮らしが離れることが長くなるに従い、古い友との間に生まれる見えない隔たりにどうすることも出来ない焦燥を感じたり。

    特に、終戦から四年間を農村で過ごし、時々上京するたびに感じる東京の変化への驚きと嘆き、農村を蔑ろにすることについての憤りが印象的。

    感性を研ぎ澄まして読みたい。

  • 「地に足をつけた生活」
    ってなんだろう? と思った。

    読みやすいのは、文字が青いから?
    ひらがなが多く、またそれは
    「ひらがなだから」
    いいのだ。

    例えば、
    「私は、たべ物で、何が一ばんすきかと聞かれると、こまってしまいます」(「しゃけの頭」より)
    漢字で書くと
    「私は、食べ物で、何が一番好きかと聞かれると、困ってしまいます」
    となる。

    直接、石井さんの声はしらないけど、石井さんのひらがなの多い文章から石井さんの息づかいが立ちのぼってくるように感じる。

    が、乱暴な言い方をすれば、後者は、アナウンサーがニュース原稿を読んでいるように感じる。
    翻訳者である石井さん。言葉そのものはもちろん、漢字とひらがなから受ける息づかいまで
    気をくばった人なんだろうな。と思う

  • なるべく本を残さないようにしている。
    図書館で借りたり、買った本も読んだら手放す。
    でも、この本は手元になくてはならない本だ。
    落ち込んだり、心がささくれたりざわついた時にはこの本を読もう。
    もちろんふくふくと落ち着き、満たされた気分の時に読むもよし。

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著者プロフィール

作家、翻訳家。『クマのプーさん』『ちいさいおうち』「うさこちゃん」シリーズなど数々の欧米児童文学の翻訳を手掛けながら、『ノンちゃん雲にのる』等の創作も行い日本の児童文学普及に貢献した。2008年没。

「2018年 『新しいおとな』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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