JR上野駅公園口

著者 :
  • 河出書房新社
3.27
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本棚登録 : 465
レビュー : 57
  • Amazon.co.jp ・本 (187ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309022659

感想・レビュー・書評

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  • 全米図書賞の最終候補作品になったということで、知ることが出来て読んだのですが、この機会に感謝しております。

    人生において、どんなに辛いと思っても、運命という言葉は信じたくないと、私は思っているのですが、この物語のあまりのやるせなさには、そう思ってしまいました。運が無かったと言いたくもなるよと。

    現実にホームレスの方が存在するのは確かだし、その裏側に潜む過去を想像したことなど、正直、私はありませんでした。でも、こういう人生もあるのだということを、終始、終わることのないような雨の描写も相まって、息が詰まるような思いで、一気読みしました。

    やっぱり、戦争も大災害も忘れちゃいけないよ。これだけは、今を生きている私が本当に書きたかったこと。

  • 「JR上野駅公園口」柳美里氏

    1.後書き
    著者柳さんの後書きが2014年。2011年の東日本大震災からしばらくしての著作であることがみてとれます。
    また、著者がなぜこの物語を執筆したくなったのか?その動機も記載されています。

    2.読み終えて
    主人公は、高度経済成長時代に、東北から東京に出稼ぎにきた男性です。
    二児の父親で単身赴任を続け、定年になり故郷へ帰るという人生でした。

    多くの建物、道路が作られた高度経済成長時代。
    おそらく、このような環境の方たちのあゆみによって、今の日本、そして東京の基盤が作られたのでしょう。

    日本、東京の表に見える繁栄と、その裏には見えない影、世界がある構造。

    それを知るという意味で、この書籍は現代を知る歴史書の類いなのかもしれません。

    3.人生という儚さ
    儚いとは、人が夢を描くと書きます。

    人は、自分だけの夢を描くのか?または、家族の夢を描くのか?

    年を重ねて、人は描けなかった夢に想いを馳せるのか?

    冬空のもと、そんなことを考えてしまう作品でした。

  • 世の中からこぼれ落ちてしまった人達の声。
    ただ同情的だったり、世間に刃を向ける感じだったりするのではなく、そこに生きる人々の姿を誠実に描いていると感じた。

    きっと好き嫌いが分かれる作家さんだと思うが、どんな人にもいつかどこかで手に取って欲しい本だ。

  • 全米図書賞の受賞ニュースを見て読んでみたくなった作品ですけど、私が知る昔のアンニュイで世に背中を向けるようだった柳美里ユ ミリさんの作風とは随分違っていて興味深かった。
    心ならずも愛する息子や妻や孫たちを喪い、とうとう最後まで人生や苦しみや哀しみや喜びに慣れることの出来ないままの73歳のとある南相馬出身のホームレスに焦点をあてた佳作小品です♪
    2014年の出版作ですが受賞ニュース後いきなり脚光を浴びるのもなんだかなあと思って居られるかも(笑)
    わたしも その口ですが(恥)。
    この作品が受賞したのはよほど翻訳者が巧みだったのでしょうかね☺️
    ともあれ、主人公のホームレス氏に思わず他人事ながら涙がこぼれそうになりながら読み終えました。

  • 主人公の目と耳に入ってくるのは、今を生きる人たちの日常の会話や仕草。そして普通の人生を生きていた頃の回想シーン。
    わたしには、この主人公が生きているのか、本当に今存在しているのか、終盤になるまでわかりませんでした。
    今までわたしは、そんな目でホームレスの人達をみていたのかも知れません。
    どこかで誰かがおなじ時間を生きていて、これしかないと思う道を歩く。時は、過ぎるようで過ぎない、終わってはいない。一人では抱えきれないものを抱えながら生きる。
    主人公の生きてきた記憶が、今のホームレス生活の中に散りばめられ、読んでいて胸が苦しくなりました。
    上野の森美術館でのバラ図譜展のあたり。繊細で美しく静かなバラと俗な生活の会話が交互に出てきます。
    作品全体に、他にも対比がたくさんあります。あらわしているのは、人生なのか世の中なのか。
    とても胸にささる作品でした。

  • 全米図書賞受賞と言うことで、ミーハーな私は読んでみました。まさしく行き場をなくした人の哀しさ、辛さをヒシヒシと感じさせる本でした。主人公が昭和8年生まれ、息子が昭和35年生まれ。ほぼ父と私と同年代、若干父と重なる部分もあるように思いました。これでもかこれでもかとやって来る不幸、打ちひしがれる主人公。いつしか行き場をなくしてしまう。今の世の中、誰もが主人公のようになる可能性があるように思えて、怖く悲しくなりました。この作品を英訳した方の感性に感服します。

  • 哀しい話。ノンフイクションとフィクションが混在して描かれている。柳さんは上野公園で実施に取材し、福島に住んでおられる。地方と都会。豊さと貧しさ。昭和の日本の地方は今以上に貧しかった事を思い出す。二回目のオリンピックが開催される。。。この時期に書かれたことも意味があるのだと思う。いつの時代も裏と表がある。柳さんは思い込めてこの小説を書いたのだろう。読んでいるうちに寒々した感覚が生まれる、現実世界の寒さがそう感じさせたのであろう。「暦には昨日と今日と明日の線が引かれているが、人生には過去と現在と未来の分け隔てがない。誰もが、たった一人で抱えきれないほどの莫大な時間を抱えて、生きて、死ぬ」。読み続けるのをやめようとも思ったが、最後まで読んだ。哀しい内容であるが、柳さんの文章には美しさがあると思う。薔薇の美しい描写がこの小説の寒さを際立たせている。戦争を風化させないことも大切だが、東日本の震災も色々な意味で風化させてはならないと改めて思った。マスコミの様に美化をさせてはならない。

  • 上野公園が社会から排除された人たちの居場所となっていることは意識しておらず、上野公園を通る多くの人は見ていないと思う。このように見えてない人たちは多くいるのではないかと思う。
    主人公は作中の通り運がないだけでホームレスになった。彼の身には理不尽なほど死という摂理が降りそそってくる。社会から疎外されていると感じる彼の目から見る上野公園は全く違って見える。西郷の話しなどもあるが、上野公園は思っている以上に広いのではないか。
    多分、月日が流れていることから逃げている彼が時間を経ったことを意識する瞬間が天皇の時報だと思う。上野公園にいないものとしてしまうほどのパワーを持っている天皇の影響を社会から疎外された人が受けてしまうのが数奇な人生だと感じてしまった。

  • 柳美里さんの本は初めて。
    詩のような文体で、わりとスラスラ読み進めました。
    ホームレスであっても、一人一人に人生がある。
    上野公園は時々行く場所。次に訪れる時、私は何を感じながら歩くのだろう。

  • 硬質で湿度が高い。素晴らしかった。

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著者プロフィール

柳美里(ゆう・みり) 小説家・劇作家。1968年、神奈川県出身。高校中退後、劇団「東京キッドブラザース」に入団。女優、演出助手を経て、1987年、演劇ユニット「青春五月党」を結成。1993年、『魚の祭』で、第37回岸田國士戯曲賞を受賞。1994年、初の小説作品「石に泳ぐ魚」を「新潮」に発表。1996年、『フルハウス』で、第18回野間文芸新人賞、第24回泉鏡花文学賞を受賞。1997年、「家族シネマ」で、第116回芥川賞を受賞。著書多数。2015年から福島県南相馬市に居住。2018年4月、南相馬市小高区の自宅で本屋「フルハウス」をオープン。同年9月には、自宅敷地内の「La MaMa ODAKA」で「青春五月党」の復活公演を実施。

「2020年 『南相馬メドレー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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