JR上野駅公園口

著者 :
  • 河出書房新社
3.17
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本棚登録 : 168
レビュー : 23
  • Amazon.co.jp ・本 (187ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309022659

感想・レビュー・書評

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  • 全米図書賞の最終候補作品になったということで、知ることが出来て読んだのですが、この機会に感謝しております。

    人生において、どんなに辛いと思っても、運命という言葉は信じたくないと、私は思っているのですが、この物語のあまりのやるせなさには、そう思ってしまいました。運が無かったと言いたくもなるよと。

    現実にホームレスの方が存在するのは確かだし、その裏側に潜む過去を想像したことなど、正直、私はありませんでした。でも、こういう人生もあるのだということを、終始、終わることのないような雨の描写も相まって、息が詰まるような思いで、一気読みしました。

    やっぱり、戦争も大災害も忘れちゃいけないよ。これだけは、今を生きている私が本当に書きたかったこと。

  • 主人公の目と耳に入ってくるのは、今を生きる人たちの日常の会話や仕草。そして普通の人生を生きていた頃の回想シーン。
    わたしには、この主人公が生きているのか、本当に今存在しているのか、終盤になるまでわかりませんでした。
    今までわたしは、そんな目でホームレスの人達をみていたのかも知れません。
    どこかで誰かがおなじ時間を生きていて、これしかないと思う道を歩く。時は、過ぎるようで過ぎない、終わってはいない。一人では抱えきれないものを抱えながら生きる。
    主人公の生きてきた記憶が、今のホームレス生活の中に散りばめられ、読んでいて胸が苦しくなりました。
    上野の森美術館でのバラ図譜展のあたり。繊細で美しく静かなバラと俗な生活の会話が交互に出てきます。
    作品全体に、他にも対比がたくさんあります。あらわしているのは、人生なのか世の中なのか。
    とても胸にささる作品でした。

  • 世の中からこぼれ落ちてしまった人達の声。
    ただ同情的だったり、世間に刃を向ける感じだったりするのではなく、そこに生きる人々の姿を誠実に描いていると感じた。

    きっと好き嫌いが分かれる作家さんだと思うが、どんな人にもいつかどこかで手に取って欲しい本だ。

  • 柳美里さんの本は初めて。
    詩のような文体で、わりとスラスラ読み進めました。
    ホームレスであっても、一人一人に人生がある。
    上野公園は時々行く場所。次に訪れる時、私は何を感じながら歩くのだろう。

  • 硬質で湿度が高い。素晴らしかった。

  • 読みながら、切なさや、なんとも言えない哀しみや怒りやもどかしさや共感や恐怖や…色々な感情が湧いてきた。
    これから、ホームレスの人を見たり上野公園に行ったりする度に、この作品を思い出す気がする。

  • 上野公園が社会から排除された人たちの居場所となっていることは意識しておらず、上野公園を通る多くの人は見ていないと思う。このように見えてない人たちは多くいるのではないかと思う。
    主人公は作中の通り運がないだけでホームレスになった。彼の身には理不尽なほど死という摂理が降りそそってくる。社会から疎外されていると感じる彼の目から見る上野公園は全く違って見える。西郷の話しなどもあるが、上野公園は思っている以上に広いのではないか。
    多分、月日が流れていることから逃げている彼が時間を経ったことを意識する瞬間が天皇の時報だと思う。上野公園にいないものとしてしまうほどのパワーを持っている天皇の影響を社会から疎外された人が受けてしまうのが数奇な人生だと感じてしまった。

  • 全米図書賞受賞おめでとうございます。
    大分前、さらっと読んだ記憶があって、再読。さらっとは読めるけれど内容は重たい。

    家族、震災、福島、そしてホームレス。
    このコロナの時代、ますます沢山の方々に読んでもらいたい本です。

  • 自殺した人の悲しみは肉体が滅びても消えることなくさまよっているんだろうか。
    上野のホームレスの悲しみ、福島の悲しみ、日本の悲しみに、柳美里はそっと寄り添う。

  • 正直に言って期待はずれだった。
    駄目な小説だとは思わないが、物語の題材があまりに魅力的すぎたため、それに見合って面白い小説だとは思えなかったのだ。
    「上野、ホームレス、南相馬、出稼ぎ、
    天皇とお同じ日に生まれ皇太子と同じ日に息子が生まれた男」
    否が応でも惹かれる題材を扱っているが、作品そのものは文庫にして200ページ程度の小説なのであまり多くのものを求めて読むべきではなかったのかもしれない。
    特に、ラストは冒頭の描写につながる含みをもたせた締め方だが、自分はもっと具体的なラストが欲しかった。

    その一方で、上野という土地が抱える近代史のドラマ(戊辰戦争の戦場、彰義隊と西郷隆盛、東京大空襲、美術館とホームレス)が、主人公カズさんのホームレス仲間のシゲちゃんの口を通して自然に語られるのは上野の土地の縁起に詳しくない人にも丁寧な書き方だと感じた。
    このあたりの話は森達也の「東京番外地」の上野に関する章でも取り上げられているため、興味がある方はぜひ。

    メモ
    上野のホームレスは東北出身者が多いという。上野駅は東京の玄関口。上京して初めて東京の地を踏んだのが上野なのだ。
    死に際を考えてはいけない。良い死に方・悪い死に方は生者の判断になってしまう。苦しまずぽっくり逝くのは多くの人にとって理想的だが、時間が経つと少しぐらい看病する時間が欲しかったとなる。そうした生者の判断で良い悪いが変わることを考えて悩むべきではない。
    鍋島藩=佐賀藩
    「日雇いをやろうとする意欲がある者は、コヤを畳んでドヤに移るだろうし、福祉事務所に頼って生活保護をもらう手立てを探すだろう。だが、この公園で暮らしている大半は、もう誰かのために稼ぐ必要のない者だ。自分の飲み食いのためだけに働けるほど、日雇いは楽な仕事ではない。」
    「容姿よりも、無口なことと無能なことが苦しかったし、それよりも、不運なことが堪え難かった」
    「人生は最初のページをめくったら次のページがあって、次々めくっていくうちに、やがて最後のページに辿り着く一冊の本のようなものだと思っていたが、人生は本の中物語とはまるで違っていた。文字が並び、ページに番号が振ってあっても筋がない。終わりはあっても終わらない。残る。」

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著者プロフィール

柳美里(ゆう・みり) 小説家・劇作家。1968年、神奈川県出身。高校中退後、劇団「東京キッドブラザース」に入団。女優、演出助手を経て、1987年、演劇ユニット「青春五月党」を結成。1993年、『魚の祭』で、第37回岸田國士戯曲賞を受賞。1994年、初の小説作品「石に泳ぐ魚」を「新潮」に発表。1996年、『フルハウス』で、第18回野間文芸新人賞、第24回泉鏡花文学賞を受賞。1997年、「家族シネマ」で、第116回芥川賞を受賞。著書多数。2015年から福島県南相馬市に居住。2018年4月、南相馬市小高区の自宅で本屋「フルハウス」をオープン。同年9月には、自宅敷地内の「La MaMa ODAKA」で「青春五月党」の復活公演を実施。

「2020年 『南相馬メドレー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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