赫獣(かくじゅう)

著者 :
  • 河出書房新社
3.67
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本棚登録 : 65
感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309022864

感想・レビュー・書評

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  •  1984年、長崎市。鍋冠山頂上付近で保健所が仕掛けておいた檻が食い散らかされていた。現状報告を入れた職員も連絡後、消息を絶ってしまった。
     派出所勤務の植木警官の所へ、職員の同僚が駆け込んできた。「殺されたかもしれん。」その証拠にと見せられた切り取られた人間の手。警察の捜査を嘲笑うかのように次から次へと人が消息を絶つ。
     正体不明の者に蹂躙される山。殺された者を想って立ち上がる者。仇を撃とうと行動する兵隊あがりの老人。
    山に何が起こっているのか。
     
    __現代版、吉村昭【羆嵐】じゃないでしょうか。次から次へと死体の山を築いてく者。後半に行くにつれて地獄絵図は拍車をかけていく。現場で戦う者の躍動感がものすごくリアル。また戦争で戦っていた老人の回顧を通じて、戦争の醜さを映し出し、また過去の記憶を、現在で清算するかのような老人の勇ましさ。
     引き込まれ具合がすごい。満足感があります。
     個人的に、久々のヒット、って感じな作品でした。

  • とんでもない拾い物!
    まずパニック小説として間違いなく超弩級。これほどまで桁外れに凄まじい怪物小説は読んだ事が無いと断言できる。獣に蹂躙される人間たち。肉体の紙屑のような脆さと、魂に巣食う孤独の重さ。その対比が悪夢のように鮮やかだ。海外ホラー小説、クーンツやキング好きにもぜひお奨めしたい押しの一冊。

  • 文教堂書店 函館テーオー店にて。珍しく発売日に入荷していたので、即購入。「とんでもない作品に出遭ってしまった」という思いで一杯です。 
    人間の精神的強さと物理的脆さを突きつけられる展開に、鼓動、鳴り止まず。この感覚、初めて『寄生獣』を読んだ時もそうでした。はやる気持ちを抑えつつ、休憩がてら舞台である長崎市・鍋冠山の景色を調べたり、登場する銃火器を確認したり。読了して本を閉じた時に改めて見た、山川直人氏の装画の見事さ。この感覚は、読み終えた者だけが味わえる御褒美。この作品を買うことができる。読むことができる。これは「事件」です。

  • パニック映画的。案外グロさを抜いて映画にしたら面白いかも。思いのほかグロでもなかったけど。

  • 2016/12/2

  • この手のお話は色々読んだけど、描写がしっかりしていて、しかも長崎の町並みを自分が知ってるせいもあってか、かなりリアルですごかった。本当にこんな生物兵器が作られているのだろうか。だとしたら・・・怖すぎる。

  • Amazonのリコメンドに表示された小説で、岸川真という作家はもちろ
    ん初。いくつかのカスタマーレビューを読む限り、かなり凄い怪獣小説
    という感じがしたので手に入れてみたのだが・・・。

    80年代前半の長崎を得体の知れない怪物が襲う、というアイデア自体は
    すばらしい。ただ、タイトルであり主要キャラでもある赫獣の全体像と
    か存在理由が、最後まであやふやなままなのはいただけない。
    そして登場人物の人数があまりに多く、更にほぼ全員が語り部をこなす
    ため、物語としてのまとまりに著しく欠け、状況が散漫なまま。
    ハッキリ言って、読んでいて疲れる(^^;)。

    初期設定は良いのに、構成力の弱さがそれを台無しにしてる感。
    残念ながら他の作品を読もうとは思わないなぁ、この作家。

  • 1984年、長崎市大浦町を襲った「鍋冠山獣害事件」を描いた怪獣小説。米軍の開発した生体兵器の事故により誕生した怪物によって住民の大量食害事件が発生。在日米軍の関与という性格上、政府は自衛隊の出動を拒み地元警察に対し『食害事件』として県警内での処理を厳命する。未曽有の獣害事件に苦慮する県警の警察官、知人を屠られ仇討に乗り出す老兵、恋人を喰い殺され復讐に燃える教師らは、故あって個々に魅かれる「死」と執念にも似た「生」は想像を絶する獣との≪戦争≫の中に作者は日本人の戦争、死と生を読者に問う。大人が読む怪獣小説。
    プロローグで、この物語の起点となるのは1954年。この年は、東宝の第一作の『ゴジラ』(本多猪四郎監督)が公開された年。そして物語の舞台は1984年、後の平成ゴジラシリーズの起点として、人類の宿敵としてのゴジラがスクリーンに復活したリメイク版『ゴジラ』(橋本 幸治監督)の公開された年という時代設定にも洒落が効いており、ストーリーでキーを務める「誠」少年は作者の名前の「真」のアナグラム。出身の長崎市は海と三方を山に囲まれ、坂が多く、少ない平地に密集した街の佇まいは何処か逃げ場のない閉塞感があり、作者が少年の頃に夢想した怪獣の暴れまわるストーリーだったのかもしれない。
    ジャケットのデザインもなかなか。メルヒェン漫画家の山川直人氏を起用してオランダ坂の石畳、大浦天主堂。満天の星空。と、なんともメルヒェンチック。ストーリーと真逆な装丁?いや、いや、よくよく見れば街の家々に明かりは無く、怪しげで大きな影が石畳を覆い、赤く彩られた景観はまさに「怪物の視点」。上手い!      

  • あらっぽさ、荒唐無稽さが微笑ましい。描写も◯。テーマの力があればスマッシュヒットあり。

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著者プロフィール

1972年長崎市生まれ。山口大学人文学部中退。日本映画学校卒。著書に、『蒸発父さん』『赫獣』など。

「2018年 『暴力』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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