天野祐吉: 経済大国に、野次を。

制作 : 河出書房新社編集部 
  • 河出書房新社 (2014年8月26日発売)
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  • レビュー :8
  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309023205

天野祐吉: 経済大国に、野次を。の感想・レビュー・書評

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  • 晩年の天野さん、朝日新聞のコラム「CM天気図」が好きで良く読んでたな~。広告の人なのにいつも身の丈の日本、日本人について書いていたなという印象(“広告の人なのに”というのは、自分の中で広告業界の人は派手とか、右肩上がりとか、そういうイメージなので)。
    でも、本書を読むと、70年代からその姿勢は変わってなかったのかな、と。

    高度経済成長の少し後の頃でさえ、広告に莫大なお金が使われることに(当時で年間一兆八千億円とか)「これはどう考えても、もったいない話」と言う。金を使って派手なことやるよりも、「何を、どうすればよいのか。そのことをいま、みんなが知恵を出し合って考えることが必要」と、なにやら既に消費一辺倒の社会にモノ申していた(“広告の人”なのに!笑)。

    2010年以降のCM天気図で、何度か「賢い国」になろうと書いていたのを覚えていたが、それは自民党の「強い国」に対抗できる考え方として、なだいなださんが言い始めたことらしい。なださんが亡くなった時に「とても大切な人を失ってしまったという思いが強い」と書いていた。

    「本当のぜいたくは、おカネさえあれば手に入る、というもんじゃない。ぜいたくというのは、モノの問題でもあるけれど、それ以上にココロの問題である」

    これも見覚えのあるコラムだったな~。そんな印象的な「CM天気図」がところどころに紙面のままに再録されているのが嬉しい。

    そんな「CM天気図」だけをまとめて本も出ているのだけど、『広告批評』のころから氏の言動、記事、そして多くの関係者との対談、あるいは追悼の文などが掲載された本書で、“天野祐吉”という人物が改めて立体的に見えてくる気がした。

    もう少し長生きしてくれていたら、今の日本を、この報道が規制された世をどのように斬っただろうか。なにしろ、その昔、「日本の政府や軍部が宣伝下手だった」と、「今にして思えば、宣伝下手でよかったと」言い、80年代には、「鈴木さんが松下さんや豊田さんを抜いた」と政府広報(鈴木善幸首相・当時)の予算額ががPanasonic(松下さん)やトヨタ自動車等、民間の宣伝広告費を凌駕したことに警告を発している。告知広告と意見広告という違いがあるなんて、恥ずかしながら今まで意識したことなかった(政府が“意見広告”をすることは、民意を操作するから違憲の可能性もあるんだそうな)。
    そんな天野さんが、今この世を、どう嘆くだろうか。

    うん、やっぱり、嘆く気がする。

    本書には、氏に影響を受けたという業界人が多く寄稿している。天野さんの意志を継いで、権力から遠いところから、批判精神を天野さんのような柔らかなユーモアに包んで発信してほしいな。

  • 2015/06/21
    車中

  • 広告批評の記事の抜粋。本当に大事な人を失ったという実感だけが読後感として残ってしまう。

  • 杉浦日向子さんと天野祐吉氏の対談、
    「成熟社会人心得―パソコン背負って江戸へ行こう」
    を収録(初出は「調査情報」1998年10月号)。

    杉浦日向子さんの資料を収集するため図書館で借りてきたが、他のページも面白い。

    本書に転載されている、朝日新聞連載のコラム「CM天気図」から、印象的な部分を引用してみる。

    「本当のぜいたくは、おカネさえあれば手に入る、というもんじゃない。ぜいたくというのは、モノの問題でもあるけれど、それ以上にココロの問題である」
    (2006年5月1日 ぜいたくは素敵だ)

    「むかしの中国では、品評会などでの入選順位を、1等・2等・3等…ではなく、1品・2品・3品…と呼んだそうな。で、その審査のモノサシでははかれないが、すぐれて個性的なものを「別品」と呼んで評価したという。
     別品。いいねえ。世界で1位とか2位とか、何かにつけてそんな順位を競い合う野暮な国よりも、戦争も原発もない「別品」の国がいいし、この国にはそれだけの社会的・文化的資産もある」
     (2013年10月9日 「別品」の国へ)
    「成長」よりも「成熟」が必要。

    ひとつひとつの言葉は深いのに、語り口は軽妙でさらっとしているところは、タダモノじゃない!

  • 天野さんの「広告批評」前史の語り相手、博報堂東海林顧問曰く、「テニスの壁打ちがありますよね。天野さんってとても心地よい壁だったのです。制作者自身が気付いていない球を返してくる。その球がとても大きな勇気になるのです。教育しようとしてたわけではなく、迷いをなくしてくれる。「制作者の父」だったと思います。『広告批評』を改めて読むとわかりますが、天野さんの仕事には「経済」がなく、「文化」しかない。天野さんにとって、広告という壁は、経済ではなく文化の壁だった。常に、庶民感覚で広告を見て正しい方向と示していきたい、という感覚があった。広告の批評でありながらも、経済を完璧に省いている。でも経済を徹底的に省いたのがよかったんじゃないかと思います。『広告批評』は文化運動だったのです。」思いっきり納得。キュビズムやバウハウスのように『広告批評』は運動だった故に終わりを迎え、経済を徹底的に排除した故に広告との距離が生まれたのでしょう。しかし今「経済」は「文化」をCSR的な意味ではなくマーケティング的な意味合いで希求しているようにも感じています。それが顕在化した時に『広告批評』にかわる批評が必要とされるはず、と信じています。

  • 広告の作り手は、企業の黒子でも代弁者でもない。商品や生活を批評的に表現する、それ自身自立した存在である。
    いままでなかったような新しい欲望を人々の中から掘り起こして、市場そのものを大きくする仕組みを作って、他社の商品との違いを強調していく。
    広告批評、読んでみよう。
    広告って面白い
    自分にしかできない仕事をしよう

  • 2013年に亡くなった名コラムニスト・天野祐吉が残した言葉を厳選、『広告批評』の歴史と共に振り返る総特集。谷川俊太郎・橋本治・箭内道彦・横尾忠則・大貫卓也・川崎徹他。

  • 凄いメンバー!谷川俊太郎・橋本治・箭内道彦・横尾忠則・大貫卓也・川崎徹他

    河出書房新社のPR
    http://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309023205/

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天野祐吉: 経済大国に、野次を。はこんな本です

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