きょうのできごと、十年後

著者 :
  • 河出書房新社
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本棚登録 : 396
レビュー : 58
  • Amazon.co.jp ・本 (196ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309023236

作品紹介・あらすじ

あれから十年。30代になった男女が飲み会に集まった。行定勲監督で映画化された名作のその後を描く、感動の芥川賞受賞第一作!

感想・レビュー・書評

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  • 全部新しい物語とは思っていなかった、びっくり、たまたま手にとってよかった。きょうのできごと、を映画で復習のあと、十年後を読んでとても楽しめた。
    お勤め人世代の物語で、生きづらい感じが分かる。比べて、大学生のときの物語の感じが尊いと感じられた。京都なのがとても良くて、意味があった。

  • 前作の「きょうのできごと」のメンバーの10年たった話。学生だったメンバーも転職や別れ、引っ越し、カフェ経営など様々な道を進んでいきながらも、同じ場所に来て、様々な思いで「この1日」を過ごす。前作を読んでると読んでないとは評価は大きく変わる作品だけに、前作を読んでほしい。そして、この1日を読んでほしい。何でもないけど、印象に残る1日。特に最後のページの足元の文章はいいな

  • 十年。大学生から十年。短いようでとても長い、あっという間の十年間であることを身をもって知った今のわたしにぴったりな1冊だった。おどろくほどに。わたしは真紀とリンクして思わず泣きそうになった。
    十年間も中沢と別れたりくっついたりしていた真紀に、いまのわたしととても境遇が似ていたからだ。
    十年。二十代からの十年はほんとうにあっという間でそれなのに十年間という期間は重くのしかかる。
    子どもとは言えない。中途半端な、けれどどうみたって大人である年代。
    かわちくんのあのどうしようもない感じとかとっても好感もてた。
    その後的な物語はがっかりすることが多いんだけど、よかった。変に夢みさせないところがよかった。十年経って主人公がいまだに交際してたり結婚して家庭もったりするのはわりと非現実的。大学生のときの恋なんて夢見たいなもの。ふわふわとしていて。ずっとふわふわしたままでいるとあっという間に十年が経過している(わたしはまだ7年ほどだが)
    リアルすぎて、身震いした。しょうもない感じ、でも前へ進んでいく様にとても好感を持ちました

  • 10年前、京都で一夜を共にした人たちが、10年後、京都である一夜を共にする物語。学生時代には、迷いはあってものびのびと自分のペースですごしていたけれど、今では気を使えるようになったり、疲れた顔をしていたり、どこか距離を感じたり...。変わっていないとは思っても、やはりどこか変わりつつあったり。学生時代とは違い、仕事や結婚、パートナーなど、様々な問題や選択肢が増えている。そんな日々。10年前と同じように、取り留めもない毎日なのかもしれないけれど、真紀やけいとが、以前よりも、のびのびとできない中で、自分のペースで道を切り開いていく姿が凛々しいと思う。
    キカやイトウは10年前の真紀やけいとの自由奔放な姿と一致する気がした。

  • 十年も経ったらいろいろ変わってしまうしさみしいけど、十年たっても変わらないものもあることをわたしは知っている。

  • 今年読んだ本でいちばん好き、というか、ぐっときている。
    正直、十年前の「きょうのできごと」を覚えていない。それでもこの再会のかんじをわたしは受け取れる。
    なんだろうなあ、ベンツ燃えるところなんて映画的で、けいととかわちの話すところなんてもう、もう!
    今まで柴崎友香ってそんなに、特別、好きだって思ったことはなかったけれど、それでも追いかけ続けたことへのほとんどご褒美のような読書だ。それともようやく彼女の文が、ありようが、わたしに染み込んできたんだろうか?

    文庫より単行本のほうがしっくりくる本だ。余白が、紙厚が、大きさが、内容の含む時間になじんでいる。

    **以下、内容にも触れる。

    たとえば。
    20ページ、「鴨川ってこんなに水が、たくさん、速く流れていたのか、と感心した。たぶん知らなかった。」と正確な語感のけいと。
    129ページ、それから194ページで大破するベンツとカフェはすごく絵になって、あほらしくて、居着きの、居着きからの拒否みたいでもある。つまりまだここから「十年後」が、想像もつかないそれがくるんだ。

    186の「彼女は機嫌がよくなったのか、小さな声でなにかを歌っていた。まだうまくしゃべれないセキセイインコがぶつぶつ言ってるみたいだった。」てすごく愛おしさに満ちた言い方だね!

    十年前のきょうと比べてみる。
    移動する車内で、けいとの目が覚めるところから始まる。十年前は光で目覚めてからすぐ中沢との会話が始まるけれど、いまは、音で目覚めてから、痛覚、視覚、体感が弱いながらも彼女を刺激する。その弱さは、パラグラフ最後の「京都も大阪も、遠い。」と呼応する。

  • 『わたしが今のわたしじゃないとあかん理由なんて、ほんまはないんちゃうかな、って。べつのわたしやった可能性もあって、そしたら、わたしがどんな人間かなんてわたし自身にもわからへんよなーって』ー『空の青、川の青』

    何か断定的なことを口にしてみた時、いつも違和感を覚える。自分自身の言葉に対して。頭の中にそんな考えがあったのか、それは本当に自分が考えていたことだったのか、と。よくよく自分の頭の中を見回してみても、はっきりと輪郭を整った思考や、きちんと整理された論理のようなものはいっかな見当たらない。見つかるものは、ぱらぱらと散らばった思考の破片のようなもの。必要に応じてそれを組み合わせてみているだけ、子どものブロック遊びのように。

    柴崎友香の小説を読むと、そんなあわあわとした情けない気分を、実は肯定的に受けとめても大丈夫なのだ、という根拠のない思いが湧き上がる。なんでもない日常を埋めるものは大上段に構えた理屈や、秘かに張られた伏線などではなく、シナプスの活動を支配する定まるところのない細々とした思い、脳の活動なのだと改めて知る。

    そういう日常の他愛もない、けれども確かに誰しもが自分自身を形づくるように続けている大袈裟なところのない思考のようなものを、輪郭も定めず掬いあげることができるのが柴崎友香の文体と言えると思うけれど、その、らしさ、を代表するのが「きょうのできごと」ということなのだろう。

    その小説の主人公たちの十年後を描くこの作品は、主人公たちが経験した十年を通して、作家自身が重ねてきた年月の澱のようなものも自然と伝わる作品。単純に続編としての面白さもあるけれど、もともと「ある一日」を複数の主人公たちの視線を通して描くことで「きょう」という「点」の持つ可能性、あるいはそれを三次元的拡がりと表現してもよいと思うけれど、現実の世界の奥行きを感じさせてくれた元の作品に、さらに時間というもうひとつの次元が加えられた面白さも感じられる。他愛もない思考は自分をどこへも連れていってくれないようでいて、やはり自分自身を押しやる原動力なのだと気付かせてくれる作品だと思う。

    オムニバスという様式には、個人に焦点が当たりつつ並列する逸話によって偶然というものが如何に日常に影響するのかが自然と強調される特長があるけれど、柴崎友香はそれを巧みに利用して小説の持つ嘘臭さを払拭する。その嘘なのに嘘臭く思わせない文章を支えているのは、作家の動体視力の高さなのだ、といつもの結論にまたしてもたどり着く。何も起こらないことにこそ、現実の面白さがあるということ、それをいつも教えてくれるのが、柴崎友香という作家だと改めて知る。

  • 仲良しとの再会、いいな。
    京都の雰囲気とマッチしている。
    『きょうのできごと』という作品があるけれど、それの十年後なのだろうか? 『きょうのできごと』を読んでいないのでわからないが……。
    普通にありそうな普通の出来事が書かれているところがいいな。
    懐かしい人に会いたくなっちゃう。

  • 「きょうのできごと」から読めばまた違ったかも。社会人(30)になったからこそ感じる部分も多かった。学生の頃の心の機微がなくなったように思う。残念だけど大人になって得たものも多い。カワチになんとなく感情移入。イケメンじゃないけどね。

  • 本編よりは、大きな事が起こっていた。
    本編がほんとにしょーもないことすぎて、時間も経っていたからか登場人物のことをほとんど覚えていない。
    でも、ちょっとした心の声とか、それぞれのキャラの個性とか、これほど大したことない出来事の中でよくあれだけ広げられるな、という驚きはある。

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著者プロフィール

柴崎友香(しばさき ともか)
1973年、大阪府生まれ。大阪府立大学総合科学部国際文化コース人文地理学専攻卒業。大学卒業後4年OLとして勤務。1998年、「トーキング・アバウト・ミー」で第35回文藝賞最終候補に残る。1999年、「レッド、イエロー、オレンジ、オレンジ、ブルー」が『文藝別冊 J文学ブック・チャート BEST200』に掲載され、同作が収録された『きょうのできごと』が2000年刊行、単行本デビュー。その後同作は2003年に行定勲監督により映画化された。2007年『その街の今は』で芸術選奨文部科学大臣新人賞・織田作之助賞大賞、2010年『寝ても覚めても』で野間文芸新人賞、2014年『春の庭』で芥川賞を受賞。
主な著作に『次の町まで、きみはどんな歌をうたうの?』『わたしがいなかった街で』『週末カミング』『パノララ』『かわうそ堀怪談見習い』『千の扉』『公園へ行かないか? 火曜日に』など。『寝ても覚めても』が東出昌大主演、濱口竜介監督で映画化されカンヌフェスティバルに出品された。2018年9月1日公開。書籍の増補新版も刊行されている。

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