アルタッドに捧ぐ

著者 :
  • 河出書房新社
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  • 本棚登録 :138
  • レビュー :46
  • Amazon.co.jp ・本 (144ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309023373

作品紹介・あらすじ

それは、予言されざる死だった——
著者の意図せぬ主人公の死、その少年に託された「アルタッド」という名のトカゲとの生の日々。
選考委員の保坂和志氏、大絶賛!
衝撃の第51回文藝賞受賞作。

感想・レビュー・書評

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  • 若い、若いなぁ。
    というのが一番の感想。

    書いていた小説の主人公の少年がある日、勝手に死んでいた。原稿用紙の上に血のようにインクの流れる左腕だけ残して。物語を書いていた本間が腕と原稿を埋葬しようとした時、そこから這い出てきたのは作中で少年が育てているトカゲのアルタッド。
    ファンタジーとしか思えない粗筋と出だしだが、驚くことにファンタジーではない。
    大学院浪人の本間の、アルタッドとアロポポル(同じく作中のサボテン)の飼育・栽培の毎日と、「死」と「生」、そして「書くこと」についての彼の想いが延々と書き連ねられるのだ。

    人は生を受けた瞬間から死に向かっている。
    なのになぜ生きていかなければならないの?
    歓喜や恍惚の境地を書き表したいという欲求と、それゆえの不安と問い。

    「書くこと」についてそれにあたるものは人それぞれだろうが、誰もが一度や二度は考え、思考の迷路に迷い込んだことがあるのではないかと思う。
    自分や近しい人の死を想像しては、涙したり恐ろしくなったりした子供の頃。
    生きる、ってなんだろう。死ぬ、ってどういうことなんだろう。と繰り返し考えてため息をついた日々。
    自分の存在意義について考えては、虚しくなったり斜に構えて周りに知ったような口をきいていた思春期の頃。
    読んでいると、甘酸っぱいよりも、香ばしいな(フッ)となってしまう若かった自分を思い出してこっ恥ずかしくなってしまうのだ。でもって「(作者さん)若いんだなぁ」と呟いてしまうのだ。
    もちろん自分は、本間(金子さん)のように小難しい言葉をこねくりまわすのではなく、もっと粗野で単純な言葉や思考だったけれど。

    大学生活を終え、大学院受験までの1年間の意味を「書くこと」に求めたが、求めるところが高すぎて(なんといっても“天上”だもの)止まった手をアルタッドとアロポポルの世話に費やす。
    結局のところ、モラトリアムの延長を描いただけの物語、なのかもしれない。
    だけど、真っ向から「書くこと」論をぶつけてきた作者に、気恥ずかしさを感じながらもいっそ潔さも感じる。
    モラトリアムの終わりが近いと予期させるラストシーンは朝の光のように明るく、読後感はよかった。



    献本企画でいただいたプルーフ版にて読了。
    Booklog様、河出書房様、ありがとうございました。

  • 物語の主役、ソナスィクセム砂漠のエニマリオ族の少年モイパラシアの死から始まる物語。その死をきっかけにトカゲのアルタッドが本間の生活にゆるやかな変化をもたらす。

    二重三重の物語になっていて手のひらの上で、ゆらめく3D物語を見ているようで面白かった。小難しくしクドクドしてないから読みやすい。

    モイパラシアの墓に向かって語りかけるシーンはじわ~っときた。アルタッドはなにもわかっていないだろうけど、アルタッドのいまを生きるという姿勢は健気で光ってみえた。

    アルタッドとは真逆に今だけを生きられない(それだけに集中していたら逆に生きていけない)ヒトって悲しい。物語を作る苦しみがひしひしと伝わってきた。けどそこで物語を終わらせないで感覚や本能でガガガーっと書いて、切り開いてみればいいのにいいのに…って思ったりして。本能やエゴとの葛藤に悩む本間。若くてまぶしい。高校生とか20代にオススメ。

    それだけにアルタッドと一緒に神殿を巡る旅に出る(想像)シーンは美しく感じた。あと亜希と一緒に点描画に没頭するシーンも神話みたいで素敵だった。表紙もよく見ると、なるほど…輝くコーンがあったりして可愛らしい。

    うちの猫や鳥をみていると本当に今、この一瞬一瞬だけを感じて本能で生きている。人間はそうはいかないところがもどかしい。けどだからこその人間なのかな。幻想脳内巡礼作品。

  • 表紙が、点画だったら良かった。未熟の芸術。

  • 今年の文藝賞受賞作。献本企画で頂き、光栄にも
    読ませて頂きました。

    難解なお話、というのが最初の印象。

    読み進めてゆくと、村上春樹さんの
    「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」
    をどういうわけか思い出しました。
    作者様がお好きなのかもと、ふっと考えついたり。

    主人公は、何故か物語の中で死んでしまった人物から
    アルタッドというトカゲを譲られます。

    自ら紡ぐ物語の中からやってきたトカゲ。
    アルタッドとの、現実か夢のあわいか…と思うような生活。

    そういう側面を見れば、これはもちろんファンタジーで。

    主人公が小説をものしようといろんな着想や言葉、
    世界観を自分の中で形にしようとする経過を見れば
    これは現代小説で。

    まとまった作品世界を生み出すまでの、ふわふわとした
    思考の塊を、何をするでもなく捻り続ける、小説家の脳内
    を垣間見させることと、作品世界が書き手にとっては、

    「紛れも無いもう一つの現実」

    だと知らしめるような、言葉の世界から具現化してきた
    アルタッドとの生活。

    異質な二つの世界を、「死」を夢想するということで
    繋ぎあわせたのが、この作品です。

    このお話を練りながら、作者の金子さんもこういう思考や
    心理状態を辿ったのかな、と深読みもしましたし。

    二つの側面、どちらかに重点を置いて描いていたら、
    もっと分かりやすいお話になったのでしょうね。

    アルタッドという同居人を小説世界で自在に動かすために
    一見停滞しているような日常の中で考えを尽くす主人公。

    振り返れば「現実」にまでやってきてしまったアルタッドとの
    日々は、主人公が原稿用紙の上で活写したいことなのだから
    愛しくも心和む時間になるのは当然かもしれません。

    いいですよ。トカゲ。うん。

    実際には主人公、なかなか筆は進まないので
    その閉塞感が難解さとか、なんとなく作品を覆う
    疲労感になっている気がします。

    魅力的な世界を生むために、こんなにも閉塞した中で
    降りてきたインスピレーションと付き合うのはキツイ…と
    そんな納得の仕方をさせてもらいました。

    これが作者様の現実ではなく、小説だというのだから
    なおすごい。

    実際にこういう経過を辿って作品が
    生まれてくるとしたら、本当はもっとシンプルな
    掴みどころのない感じなのでしょう。

    それを小説にしたら文章がドラマチックになった、という
    解釈を私はしました。

    書いた経験のない読者には、少々難しい感じがしますが
    解りにくいからと放り出さずに、じっくり二度読みがいいかも。

    次回作はどんな感じなのでしょう。
    意外とガラリと違うものをお書きかもしれないと
    何故か思わせる作品でした。

  • 文藝社の企画本で当たりました。なかなか物語の中に入りこむまでに時間がかかりましたが、最後まで読みきるまでも長く感じました。死を常に感じる文章で、所々に興味深い言葉を見つけることができましたが、一度読めば良いかな、という感想を持ちました。
    文章力はすごいな、と思うし真似できることはない分、個性的な作品。

  • 表紙も内容も、何だかわからない。

  • この小説に歓喜や恍惚が存在していないことを非常に残念に思う。カーヴァーの「大聖堂」のようなものを書けというのは非常に酷なことではあるのだが、それを期待させるような小説だった。
    とはいえ、体験的にではなく、技巧的に書こうとしていたように読めるので、「詩的」から離れたところで恍惚を描こうとする試みだったのかもしれない。もしくは、「詩的」に憧れつつも棄却せざるを得ないなにかがあったのかもしれないが、そこまで読めなかった。

    アルタッドの存在が、あるいはフィクションを書く/読むことが私たち(本間)の生活に必要なのは、フィクションが私たちを形づくっているからだ(というのも私たちは言語世界に生きているから)。
    だからなぜ書くのかという問いには、生きているからだ、と答えるほかなく、それを真っ向からこの小説は描いているのである。

  • 小説家を目指すニート青年が「書く」ということに向き合う話。う~ん、ちょっとイマイチというか、全くよく解りませんでした。なんか哲学みたいな感じ?
    最初に、主人公の描いていた小説の登場人物がいきなり勝手に死んで、その腕が現れるという始まり、その死んだ登場人物が飼っていたトカゲ?(小説の中の動物なので実在しない)が原稿用紙から飛び出してきて、それの世話をするって・・・ついでにサボテンも・・・
    ???のままラストはなんとなく良かったかなあ~みたいな終わり方で。う~ん、わからん。

  • 勝手に死んでしまった小説の中の少年からトカゲとサボテンを託された作者。
    あらすじだけではさっぱり意味のわからない不条理小説のようなのに、内容はむしろ現実的であわあわとしている。
    小説を書かなければいけない、まだ書くべきではないとせめぎ合い、1年もの何者でもない期間を、トカゲとの生活に費やす。
    ひいてはなんのために生きるのか、と。
    モラトリアム期の鬱屈を陰鬱に書くでなく、ユーモラスに書くでなく、ただ淡々と、ありのままに書いている感じ。
    面白いけど、あともう少し、何かが欲しい。
    最初の数ページの、アルタッドが現れる辺りが一番面白かった。

  • トカゲの話。トカゲ好きじゃないのになんで借りたんだろ…

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