ひんやりと、甘味 (おいしい文藝)

  • 河出書房新社
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感想 : 59
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  • Amazon.co.jp ・本 (203ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309023915

感想・レビュー・書評

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  • 各界著名人の「夏に食べたいひんやり甘味」の思いで色々。
    無類のアイス好きの私としては、いろんな方のアイスの思い出が一番共感をもって読めた。
    食べ物エッセイは、世代が如実に出るのも面白い。そういえばそんな味あったなぁとか、よく親がいってたなぁとか。
    やはり「食」は共感を呼びやすいテーマだ。

  •  近頃珍しくもない、食べ物アンソロジーに過ぎないといえば過ぎないが、『ひんやりと、甘味』、じめじめじわじわじりじりと暑くなる今の季節、甘いもの好きの私にはぴったりの本だった。
     本自体は二〇一五年出版。著者の中のいちばん若い人は朝吹真理子(一九八四年生まれ)、いちばん古い人は久保田万太郎(一八八九年生まれ)、という振れ幅の中での短文集で、「幼い頃、まだ日本が貧しかった時代に食べた、なんてことないアレが美味しかった」という系統の昔話が多かったような印象が残るが、海外ネタを入れてくる人もあれば、当世風で軽やかに決める人もいて、彩り豊かで楽しかった。全体の構成も、名前順とか年代順とかではなく、順々に読んでいったときの読み心地へのこだわりが感じられる。
     思ったのは、俳句で言う「類想」というのか、内容だけ要約したらだいたい似たりよったりなことを語っている話が少なくないのだ。それなのに、作家(に限らず文筆家)というのは何でもないことを面白く、その人らしく書くから本当にすごいよなあ、ということ。
     以下、全部は無理だけどお気に入りをいくつか、自分のための備忘メモ。
    ・江國香織『スイカシェイクとひろみちゃん』
    昔いくつか恋愛小説を読んだきりだけど、なんだか懐かしい。
    ・池部良『みつまめ』
    父と母とみつまめやにふりまわされる、少年時代の夏の日の思い出、落語みたいでおもしろい。
    ・向田邦子『水羊羹』
    「水羊羹を四つ食った、なんて威張るのは馬鹿です。」
    「水羊羹と羊羹の区別のつかない男の子には、水羊羹を食べさせてはいけません。」
    ・久世光彦『ところてん』
    ところてんを「食べたことがない」という話でこの場に参戦したところが面白い(って久世光彦は参戦したつもりはないだろうが)。すぐ「女を知らない」みたいな話に喩えたがるところは好きではないが、でもそこも文章術だなあと思う。
    ・内館牧子『アイスキャンデー』
    体が弱くて食べさせてもらえなかった系の話はたくさんあったが、やるせなさがとても伝わってきた。
    ・川上弘美『八月某日 晴』
    このアンソロジーの大トリなのだが、短さ、なんでもなさ、八月の夜、すごくいい。川上弘美さんもいいけど、これで締めた編者のセンスがいい。

     奥付によると編者は、杉田淳子、武藤正人(go passion)。

  • 季節柄、今読んでも惹かれる内容ではなかった。
    それでもやはり、みつまめはおいしそう。
    塩豆と寒天。シンプルなこの組み合わせがたまらないよね。

  • アンソロジーは本当は苦手だ。まったく頭に入らず眠くなってしまう。
    でも、こうも毎日暑いと、本にもひんやりさを求めてしまった。
    「おいしい文藝」は他にもあるから読みたいとは思うけど・・・

  • 酷暑にぴったりでした。
    川上弘美さんの「おいしいガリガリ君を売る店」が気になりました…そんなお店があるんだ。。
    冷たい甘味とひとまとめにしてあっても、氷水、アイスクリーム、蜜豆、心太、ゼリーなどと様々なお菓子がありました。
    京都で一度だけ飲んだことがある「冷やし飴」はとても美味しかったです……冷たいものばかり飲んでて微妙に体調が悪いので冷やし飴飲みたいです。これぬくいので良かったです。九州には無い……
    しろくまとマンゴープリンも面白かったです。おじさんのかわいさ。

  • アイスクリームとかかき氷の話ばかりでいつ他のスイーツが出てくるのかと思っていたら、半分読み終わったぐらいに、タイトルが「ひんやりと、 」なことに気づいた。もう半分は夏に読む。

  • 様々な作家さんの著作から氷菓にまつわるエッセイを抜き出し集めたアンソロジー。ポップな装丁とはウラハラに大御所の藤沢周平、吉行淳之介がいるかと思えば安野モヨコさんまで、大変贅沢な一冊でした。

    お気に入りは久世光彦さんの、ところてん。

    氷水、アイスクリン、アイスキャンデー、多分私の世代が本書に描かれている懐かしの氷菓をかろうじて経験している最後の世代なのではなかろうか。

    一つ一つが短く、ゆったりした読み口なので、夏の夜のお休み前に少しずつ読むのにちょうどよかった。困ったことに、読んでいるとわざわざクーラーを切って夏の空気を部屋に呼び込みたくなる。

    みつ豆が無性に食べたくなりました。

  • 表紙のポップなカラーから、
    現代作家さんの甘やかなエッセイかと思い
    手に取ったけれど、
    幅広い年代の、「おお、この方のも」と
    ページを捲るのが楽しかった。

    ひんやりとした美味しさに包まれる。
    今度は夏に読み返したい。

  • 読むと猛烈にアイスやところてんなどの冷たい甘味を食べたくなる一冊。色んな作家さんの冷たい甘味についての短いエッセイがまとめあげられていた。
    遠藤周作から安野モヨコまでと描かれた年代も幅広い。
    ただしくおいしい文藝だった。

  • タイトルを見て、冷たいスイーツの紹介本かなと手に取りました。時節柄冷たいものが欲しくなってきます。

    違いました、冷たいお菓子をモチーフにしたエッセー集でした。それぞれの作家が子のために書き下ろしたのではなくて、今までどこかに書いていたものを、編者の方々が一生懸命探してまとめられたものだと思われます。
    川上弘美、江國香織から獅子文六、植草甚一など年代はバラバラ、大変な作業だったろうなと思われます。

    さて内容はというと・・・おかしい。
    良いお年を召した殿方たちが、氷菓を求め右往左往する様子がおかしいのです。ある方は鹿児島に行き、本場シロクマアイスを熱望するも、声高に口にできず悶々とするうちに熊本に移動してしまい、シロクマはぱったり姿を消してしまった。(浅田次郎)
    ある方は、今まで甘いものは食べないと自分で思っていたのに、香港で食べたマンゴープリンのおいしさに目覚め、あの店のあのマンゴープリン、を求め以来何度も香港を訪れ、今や幻となったマンゴープリンを探し歩く。(馳星周)(あの風貌とのギャップにクスッとする)
    年配の方は幼少期に食べたアイスクリームの思い出だったり、ところてんに関するものも多かったです。
    私事ですが、もっぱら井村屋のあずきバーを愛食しております。2・3年前人に勧められ食べ始めました。
    今までじっくり見ることのなかったパッケージを見て吃驚!
    原材料は砂糖・小豆・水あめ・コーンスターチ・食塩これだけ。
    何と潔ぎよいこと、余計な添加物が何も入っていないのです。今時貴重なことです。
    多分、発売当時から大して変わっていないのでしょう、ですから長く愛される所以だと思われます。
    毎年、何らかのキャンペーン
    をされていて、パッケージにあるアズキキングというキャラクター?を切り抜き張り付けて応募するべく応募はがきが印刷されているので、それらを切り取って貯めておきます。
    ある程度たまったら応募すればいいのに、気が付いた頃には応募期間は過ぎていて、ため息をつきながらそれらをばさっと捨てて、私の夏は終わるのです。
    因みに東海林さだおさんも猛烈なファンだそうで、今度東海林さんのあずきバーの食べ方を試してみたいと思います。

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著者プロフィール

1951年東京生まれ。1995年『地下鉄に乗って』で「吉川英治文学新人賞」、97年『鉄道員』で「直木賞」を受賞。2000年『壬生義士伝』で「柴田錬三郎賞」、06年『お腹召しませ』で「中央公論文芸賞」「司馬遼太郎賞」、08年『中原の虹』で「吉川英治文学賞」、10年『終わらざる夏』で「毎日出版文化賞」を受賞する。16年『帰郷』で「大佛次郎賞」、19年「菊池寛賞」を受賞。15年「紫綬褒章」を受章する。その他、「蒼穹の昴」シリーズと人気作を発表する。

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