呪文

著者 :
  • 河出書房新社
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本棚登録 : 422
レビュー : 62
  • Amazon.co.jp ・本 (242ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309023977

感想・レビュー・書評

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  • 洗脳って、箱の外からみればその不条理さや整合性のなさが明らかすぎるほど
    なのに、多分その中にいればとてつもない痛みを伴うほど気持ちのいいものな
    のだろうな、とそう思った。
    特に「死」を伴う洗脳は日本人の気質にがっちりと当てはまってしまうのだろう。
    日常の中にある洗脳。もしかすると自分もその中にいるのかも、と思わず震えた。

  • こんな展開になるのかとびっくり。
    どなたかがレビューで「日常の中の洗脳」と表現されていたがまさにと思った。
    商店街再生ストーリーかと思いきや。
    集団心理の恐ろしさ。
    まさに洗脳。
    ここまで転がり落ちるようにいくものかと思うけれど、
    実際はもしかしたらそんなものなのかもしれない。
    人間関係のごたごたもある意味洗脳かもしれない。
    正しく疑うことの難しさをつくづく感じる。
    その後の商店街の行く末が気になる。

    2015年 河出書房

  • 2016.1.23.商店街の活性化の話しがなんでここまで飛躍するの?とついていけなかった。どういう意図で書かれたんだろう。霧生がメキシコでトルタに出会う過程や商店街にみせを出すまではとても面白かったのだが。それはこの作品の前半部分。わけがわからない展開になってしまった。

  • なかなか示唆に富んだ小説でした。
    商店街の若き店主はひょんなことから改革者として注目を浴びて・・・という内容で、展開としてはお決まりの親衛隊設立&独裁者ルートです。
    SNSやまとめサイトで誹謗中傷を受けるものの、それを巧みにコントロールすることで、かえって以前よりも客が増えるというのは、いかにもありそうなこと。
    また、「クズはクズなりに死ぬことで価値があるんだ」という一見めちゃくちゃな論理も、この小説の中では説得力をもって語られている。
    寂れかけた商店街を舞台にしたこの物語は、たしかに今の時代にありそうな話です。

    ちょっと残念なのは、この小説で語られる思想や理念といった肝心なものが漠然としていること。
    カリスマ図領がどのような思想や思惑を持っていたのかはよくわからない。クライマックスで語られる「流れに乗るな、風に逆らえ」という重要なテーマも、具体的に「流れ」や「風」とはなにかがわからない。
    言い換えれば、作者の政治性が曖昧なままというか。
    もちろん、それによって普遍性は高まっていますが、一方でアクチュアリティみたいなものは失われていると思う。
    とはいえそんなことは些細なことで、この小説の白眉はなんといっても7ページから展開されるトルタの調理描写です。こんなにもリズミカルで映像的で美味そうな料理シーンがあっただろうが?
    この場面には確かに「手応え」がある。こんな描写で作られたトルタは美味いに違いない。

  • 一言で言うと歪んでいく物語。現実にありそうでなさそうな物語だった。

    高齢化の波に消えゆく商店街。そんな商店街を改革しようとするカリスマ的リーダーの図領、質の悪いクレーマーに目を付けられたがしっかりと撃退したことをきっかけにしその勢いを増す。シンパである未来系と共に。

    そんな中、商才はないがトルタを作ることが純粋に好きな主人公は巻き込まれていく。店は火の車で資金も底をつく寸前。図領の考えた無尽という融資制度を強要されそうになる。

    行きすぎた正義を振りかざす未来系。先代たちはもはや老害とされ、センスのない若者はクズとされる。洗脳されたような未来系たちは「クズ道というは死ぬことと見つけたり」に引き寄せられる…前半は図領のカリスマ性が面白かったのだが、自警団の未来系の構成メンバーのクセが凄く、段々ときな臭くなっていく様が不穏で不快。

    老害的高齢者と、社会に居場所を求める若者的馬鹿者。現代日本の悪いところをうまく描いておられる。

  • 商店街の再生を描いているのかと思ったら途中から洗脳騒ぎに、、!結局何が言いたかったのか、私にはよくわからなかった。積極的にクズになるのも死ぬのも嫌だ。

  • 各所で高評価だったので読んでみたが、期待外れ。

    社会に活躍の場を持てない輩が、正義感や理想主義に触発されて狂気に染まっていく、という構図は、かつての内ゲバ極左やカルト教団、現代のネトウヨまで共通しているが、この小説はその現実をただなぞっただけ。
    なんら新しさを感じなかった。
    寂れゆく都会の片隅の古い商店街という舞台装置もあんまり有機的な効果を生んでいるように思えない。
    途中で興味を失った。

  • さびれる一方の商店街。ちょっとしたことで店に言いがかりをつけ、ネットにでっち上げ動画を投稿するクレーマー。それに果敢に立ち向かい、ブログに公表する勇気あるレストラン経営者、図領。まよいながらもそれに巻き込まれていくのは、長年の夢だった小さな料理店を開くが全く振るわず追い詰められている主人公の霧生。

    これは怖い小説である。自己実現への意欲、グループで語り合うこと、うまくいかない理由を人のせいにせずすべては自分が原因だ、という真面目さ、カリスマ性。こういったものって一歩間違うとまじで怖い。そう思わせる。

    登場人物の言葉はそれぞれある一面では正しい、共感できる。特定の「諸悪の根源」がいるわけでもない。なのになんでここまでずれていってしまうのか。何が自己増殖しているのか。

    なぜ正義感や誠意はときに暴走するのか、村上春樹はかつて、開かれた回路と閉じた回路、という言葉で人間が際限なく内向きに高速回転し、焼き切れていくことを活写した。閉じた回路(クローズド・サーキット)の論理に絡め取られることの闇から逃れるための手段、それが物語の果たす役割である、と。例えば、加藤典洋氏の評論を読むと、村上氏初期の短編のいくつかは学園紛争の「内ゲバ」を裏テーマにしていることが分かる(例えば「ニューヨーク炭鉱の悲劇」「パン屋襲撃」)。

    何から自由であるために、何をすればいいのか、混乱しながらも考えさせられる。この人の別の小説も読んで見よう。

  • 文学

  • ブラック企業のやり口と一緒

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著者プロフィール

星野智幸(ほしの ともゆき)
1965年ロサンゼルス生まれ。東京都立戸山高等学校、早稲田大学第一文学部文芸専修をそれぞれ卒業後、産経新聞社記者に。1991年産経新聞社を退職、1991年から1992年、1994年から1995年の間、メキシコに留学。1996年から2000年まで、字幕翻訳を手がけていた。
1997年「最後の吐息」で文藝賞を受賞しデビュー。『目覚めよと人魚は歌う』で三島由紀夫賞、『ファンタジスタ』で野間文芸新人賞、『俺俺』で大江健三郎賞、『夜は終わらない』で読売文学賞、『焰』で谷崎潤一郎賞をそれぞれ受賞している。

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