葬偽屋は弔わない: 殺生歩武と5つのヴァ二タス

著者 :
  • 河出書房新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (318ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309024158

感想・レビュー・書評

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  • 実に面白い設定。

    「葬儀屋」ではなく、「葬偽屋」。

    自分の死後の反応を見たいという人のため、偽の葬儀を行う殺生歩武(せっしょうあゆむ)。

    保険調査員だった高橋セレナは、仕事をしくじったり、家族のトラブルを抱えたり、さらに追い打ちをかけるよう、恋人を事故でなくしてしまう。

    セレナは絶望の中、歩道橋から飛び降りて死のうとする。それを止めたのが歩武だった。彼はセレナに「四カ月間、おまえの命、俺に預けてみろ」と声をかける。

    セレナの葬偽屋としての日々が始まる。

    5つの偽儀が描かれる作品。

    死に向き合うことは生を見つめること。死を意識し生を語る。

    一見、軽めのミステリーだが、テーマはなかなかに重い。
    だが、重いばかりではなく、未来に光が感じられる結末だった。

  • 博識な男性の描写が本当に自然で厭味にならない。今回は絵画。わくわくする。
    すき。
    晶麿さん作品のちょっと捻くれた雰囲気にすっかりやられている、、。

  • 残念ながら合わなかった。

  • 「シャボン玉、消えた」
    旅に出た彼女の相手は。
    現実を受け入れられないのはとてもよく分かるし、たった少しの出来事で自分の中の命が消えてしまったとなると悲しみや苦しみが強すぎて幻想に頼りたくなってしまうのかもしれないな。

    「蝶々、遊べや止まれ」
    彼の本当の目的とは。
    地位や現家族の事を考えると認める事は難しかっただろうが、そこまで彼女に執着していたのであれば全てを捨てる覚悟で自らの過ちを認めるべきだったのだろうか。

    「砂時計、さようなら、こんにちは」
    幼少期のあだ名しか分からない彼。
    最初から何かに気付いていたのであれば彼女にも少しは情報を共有していれば、あんな怖い目に会うことは無かったのかもしれないが或る意味心中穏やかでは無くなるだろうな。

    「頭蓋骨のためのレクイエム」
    自分を殺そうと目論む者は。
    職種上敵対する相手や恨みを買う相手も多い中、身内からの裏切りにまで目を光らせなければいけないなんて常に神経がすり減って疲れそうだな。

    「貝殻鳴らそ」
    偽の葬儀をする本当の狙い。
    確かに突然居なくなるよりも事前に予行演習をしておいたら少しは心の負担は軽くなるのかもしれないが、本当にその日が来た時前回と同じ様に嘘だよと出て来てくれる事を期待してしまいそうだな。

  • こんなことで他人の気持ちを確かめようとするのは何だかなと思ってしまうけど、疑っている状態のままよりは一歩前進しているのかもしれない。

  • 偽の葬儀を営むことで、その人の本音や背中を押す手助けをしていく。
    セレナ自身も様々な思いから浄化されていくのだろうか。続きが気になる

  • 争議ではなく、偽の葬儀をおこなう葬偽屋。
    保険金とか、借金からの逃避とかじゃなく、偽装すを希望する人って商売になるほどいるのかな?

    親や会社からの理不尽な要請に疲れ果てていたところに、元恋人の死で、人生投げ出したくなっちゃうのかな?

    深夜ドラマとかになりそう。

  • 依頼を受けて、偽の葬儀をおこなう<葬偽屋>。
    死を考えていたセレナは殺生歩武に拾われて、四ヵ月間、彼に命を預けながら<葬偽屋>の仕事を手伝うことに。
    けれど、<葬偽屋>を訪ねる人々は誰しも複雑な事情をかかえていて……?

    死と近しい話だが、割とあっさりしている。
    ミスリードもわかりやすく、セレナの一人称にツッコミを入れたくなることもしばしば。
    悪くなかったけど、著者の他の作品のほうが楽しめたかな。

  • 偽シリーズなんですかねぇ?
    サクッと読めました。
    ストーリーはおもしろいけど、2人をラブ方面に持っていかなくてもよかったんじゃないかと思います。
    出会い方から2人とも気持ちが傾くまでのこともよくわからない。

    2017.6.9

  • 葬儀ではなく、葬偽なので、偽の葬式を金にがめついお坊さんと、死体を作る喫茶店マスターと、彼に先立たれ自殺志願者が協力し、執り行います。依頼人はさまざまな思いをかかえてやってくるので、鋭い歩武でも最終的に思いもよらない結果になることもしばしば。4ヶ月働くことになったセレナ嬢は巻き込まれながらだんだんと歩武を意識しだして、によによします。続きがあってもよいのではという少しあっさり目な終わり、ヴァニタス風味?でした。

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著者プロフィール

1979年、静岡県浜松市生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。日本大学大学院芸術学研究科博士前期課程修了。ライターとして漫画脚本などを手掛けながら小説の執筆活動を続け、『黒猫の遊歩あるいは美学講義』で第1回アガサ・クリスティー賞を受賞(早川書房刊)。同作は続刊も刊行され、「黒猫シリーズ」として人気を博している。ほか、『名無しの蝶は、まだ酔わない』(角川書店)の「花酔いロジックシリーズ」、『ホテル・モーリス』(講談社)、『偽恋愛小説家』(朝日新聞出版)、『かぜまち美術館の謎便り』(新潮社)などがある。

「2021年 『使徒の聖域』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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