消滅世界

著者 :
  • 河出書房新社
3.23
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本棚登録 : 1408
レビュー : 190
  • Amazon.co.jp ・本 (253ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309024325

感想・レビュー・書評

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  • タイトルがすごい。少しずつ消滅して世界の壁が薄くなって何かが消えていってしまうような…。

    「大切なものは、他人に見せると簡単に踏みにじられる。」これはすごくよくわかる。

    帯の中村文則のコメントのある部分に共感した。『殺人出産』の衝撃が凄すぎて『消滅世界』は薄い膜が張った密室世界に閉じ込められたみたいで、もやもやしてひたすら気持ちが悪かった…。もしかしたら私が閉じ込められてしまったのかもしれない。それが目的だとしたらすごいのかも。性やセックスがテーマの一つなのだけど、それよりも深い深い見えない部分(根幹)で母娘問題がうずいている。それがバーンと出てくるところがすごいと思った。

    『殺人出産』の延長上でもないけど実験都市が出てきて、少し『トリプル』っぽい感じもあって、『殺人出産』よりも進んだ未来なのかもしれないと想像しながら読んだ。

    読んでいると何か狂ってしまうようで…。(二)が、とにかく気味が悪い。うまく言い表せないけど歪んでいる。何が正しくて何が間違っているのか価値観がマヒしてしまう。

    ページが多いわけじゃないけど読むのが進まなくて短編の方が好きだな~と感じた。

  • 雑誌に紹介されていて気になっていました。
    初村田沙耶香さん。
    超好みの話のうえ、読みやすい。
    さくさく読めて一気読み。

    今この日本で起こっていることと地続きなのでは...
    と思わせる絶妙なSF感が素晴らしい。
    若者の草食化、絶食化やお友だち夫婦、二次元愛など、ニュースやなんやを見ていると
    「もしかしたら本当にこんな世界になるかも...」
    と思ってしまった。
    村田さんにしてやられたかも。

    文章はあっさりしているのに、深部に蠢くドロドロが凄そう。
    一気に村田さんファンになりました。

    • 5552さん
      LUNAさん、こんばんは。

      この作品は『殺人出産』と世界観が似ているというか地続きかなー?という感じの作品です。
      けっこうタブーに切...
      LUNAさん、こんばんは。

      この作品は『殺人出産』と世界観が似ているというか地続きかなー?という感じの作品です。
      けっこうタブーに切り込んでますよね(^-^)
      作者ご本人の‘クレイジー沙耶香’っぷりも面白かったです。昔『メレンゲのきもち』というバラエティにゲスト出演してたんですよ。
      一気にファンになりました。
      まだ三作品しか読んでないけどまた読みたいです♪

      コメントありがとうございました。
      2018/02/01
  • 雨が降った日の読書はいいですね。
    随分前に新聞で書評を読んでから気になっていたのですが、非常におもしろかったです。
    常に変化し続ける世界は、「正常」と「狂気」の境目すら曖昧です。今の世界は変化の途中。そのスピードは年々速まっています。

    「恋愛」「結婚」「家族」「出産」、私たちが当たり前と思っていたものも、いつしか当たり前じゃなくなっていて。

    例えば、性交でなく、人工授精で子を成す。今や、珍しいことでなくなってきました。ニュースどころか、身近な友人もしていたりする。
    一歩進めば、むしろ人工授精がスタンダードになるかもしれない。あらかじめ障害因子なども取り除くことができれば、よりその傾向は高まるはず。いつでも一定の拒否感を抱く人はいるだろうけど。

    私の世代ですら、若い人を見ると随分違う、と思ってしまう。恋愛をしない人が増え、まして結婚なんてしなくても、と話す人も少なくない。
    人との繋がりは、自宅のリアルタイム配信で手軽に得られる。煩わしさがどんどん排除されている気がします。

    「結婚したいのか」「子どもはほしいのか」自問自答することが多い未婚の私には、考えさせられることも多かったです。
    まるで友達みたいな、兄弟みたいな、恋愛によらない夫婦の形もいいかもしれないですね。今の世界では外に恋人を作る(=不倫)が咎められますが、子どもができてしまうリスクが皆無であれば、心情としてまた違うのかもしれない。

    本書では子どもに焦点が当てられていましたが、少子高齢化が進む中、高齢者(年老いた親)だって「自宅で家族が面倒をみる」という形は風化しつつあります。社会全体で支えていくのが、一般的。
    同じように、生産人口も減り共働きが基本となれば、子どもを預けるのは当たり前に。
    便利な世界では、どうしても煩わしさへの耐性が減るからこそ、それに合わせて世界も変わらざるをえないんでしょうね。

    非現実的だと一笑するのは簡単ですが、私にとっては、今の世界と地続きな部分が多くて考えさせられる1冊でした。

  • 村田氏の著作は例外無く気持ち悪く不快だ。然しこれこそ安きもの楽なものに何の抵抗もなく、まさに「正常化」に順応してしまうヒトというものへの挑戦だと思える。
    「お母さんは、きっとどこの世界でも違和感がある10%くらいの人間なのね。私は、どこでも違和感のない人間なんだと思うわ」私もこの母のような精神で生きて行きたいと思う。

  • ついにここまできたか、という感じ。
    性についての作品が多い人だが、性が無くなる世界を描くことになるとは。
    性欲と生殖と繁殖をバラバラにして、ヒトという生物は、どこへ行くのか。

  • 性交、生殖、セクシュアリティ、恋愛、婚姻、家族等のテーマにつき、相対主義的視点からの視座を示す作品。

    下記は読書中にまとめたもの。読後の思索はここには記さない。

    …………

    人工授精技術が発達
    セックスではなく人工授精により子作りをする
    発達した人の性器は避妊器具がつけられる
    但し、物理的にはセックスが可能
    自慰に対する抵抗感はほぼない
    性欲解消(や恋愛)のための商品が多数販売(p.51, 117、224)
    恋愛対象は同性からアニメのキャラクターまで様々

    セックスという行為自体が下火(p.119)
    性欲は専ら自慰で処理(実験都市での処理態様につきp.241)
    同性愛への抵抗感は残ってる(cf. p.29)

    夫婦でのセックスは"近親相姦"としてタブー視(p.153)

    一瞬違和感を感じた(※)が、夫婦関係を恋愛と完全分離することは、浮気による嫉妬etc. を防ぐから、家庭の維持に資するのだろう
    設定の趣旨は、恋愛と婚姻が分離され、恋愛+セックスは、生殖とは無関係に自由になされる点にあろう。
    これは、人生設計で重大な意味を持つ婚姻を恋愛と分離し、専ら理性的に行うことに資する
    (「恋は恋、家庭は家庭」(p. 69)という言葉にも、家庭を今でいう仕事のように捉えていることがわかる。また、cf. p.71、85)

    実験都市の子育てシステムは、子育てへの参加を強制する点で不合理とも思える。しかし、子育てを通じて孤独感が解消されるため、合理性がある。

    ラストシーンでのセックスらしき行為は、新たな変化への兆しとみるべきか


    当初思ったこと
    夫婦でのセックスは"近親相姦"としてタブー視につき、

    何故夫婦間のセックスがタブーなのか。確かに、恋愛と婚姻を分離するなら、夫婦間に恋愛的感情が無という状況も一般的となるだろう。しかし、彼らの間に恋愛感情が育つこともあり得るのだから、タブー視するのは行き過ぎ。ストーリーの要素として異物感

  • 『夜なので、水たまりは墨汁のように見える。街灯に照らされた場所だけが、ぼうっと、明るいグレーに染まっている。まるで、水墨画の中を歩いているようだった。』

    『恋愛という宗教に苦しめられている私たちは、今度は家族という宗教に救われようとしている。』

    「お母さんのやってることはそれと同じ。時代は変化してるの。昔の正常を引きずることは、発狂なのよ」

    『正常ほど不気味な発狂はない。だって、狂っているのに、こんなにも正しいのだから。』

    「お母さんは洗脳されていないの? 洗脳されていない脳なんて、この世の中に存在するの? どうせなら、その世界に一番適した狂い方で、発狂するのがいちばん楽なのに」

  • 近未来の日本では、性愛と生殖が完全に切り離されている。セックスを行う事は殆どなく、性欲は自慰で処理し、出産は人工授精でのみ行われる。夫婦はその子供を育てるただの器で、それぞれの恋愛対象は二次元のキャラクターや家庭の外で作った恋人に向かう。それが「正常」な世界で結婚した雨音は、夫と共に千葉の実験都市に移り住む事を決意。そこは抽選で選ばれた人間が「おかあさん」となり、男女問わず人工授精で妊娠し、生まれた子供を「こどもちゃん」としてコミュニティ全体で育てる場所だったのだがー。

    異性と恋に落ち、20〜30代で結婚し、子供をもうけること…それが当たり前だという価値観も、既に古びてきているのかもしれない。物語の間中、「気持ち悪い」という感情がベットリと張り付いて拭えないのだが、もしかしたら我々の子孫も逆に今の「常態」を気持ち悪いと揶揄する日が来るのかもしれない。ジェンダー間の平等を技術の力で達成した世界の一つの可能性として、異様に現実感が伴う物語だった。

  • セックスが無くなり、子どもを産むために100%人工授精をするようになったデストピアの話。夫婦間でのセックスは近親相姦と言われ忌避され、家族という制度が無くなろうとし、結婚するのも恋愛感情ではなく、合理的理由によりおこなう世界。さらにその世界を発展させ、自分自身の子どもという概念さえ無くし、全員が同じ日に受精し、同じ月に出産、幼児はすべて施設に預けられ、街に住むすべての人が、「おかあさん」であり、「子どもちゃん」であるという実験都市を千葉に作り(千葉に作る辺りなんとなくありそうで笑)、その世界の中で暮らしていく主人公。という、なんだかすごい世界の話。

    セックスとは何かを問われているように思う。感情が入る行為がセックスで入らない行為は自慰であると考えている。この世界では恋人同士がセックスをしなくなりセックス自体を良しとしない。この主人公はそんな世界で恋人を作り続け、その度にセックスをおこない、2次元の相手と行う行為もセックスと表現すること、それを私は正しいと思う。色んな世界の色んな正常があるが、それは決して多数決の世界ではないと思う。感情があり、その声に従うセックスが正常であり、その声は人の数だけあるので、2次元とする事も、だれともしない事も正常であるように思う。

    いずれにしてもイヤな世界の本である。

    この作者の本は3冊目だが、今のところある特定の世界の秩序とその破壊を書こうとしているように思う。

  • 読後感よくないけど、面白かった…。100年後、夫婦のセックスが近親相姦としてタブー視されている世界で、変化(進化?)し続ける家族、妊娠、出産、親子、恋、性欲の概念。物語のなかでも過渡期であり、登場人物たちのライフスタイルや考え方もみんな違って、でもそれぞれの言い分がよくわかる。ディストピアなのかユートピアなのかそれともただの地続きの物語なのか。自分の価値観も当然メビウスの輪みたいに反転をつづけ、読んでいるあいだじゅう、車酔いしている気分だった。でもページをめくる手が止まらず、冒頭より一気に読了。最後は本気で気持ちが悪かった…、もうホラーの域。読み終わってもぬるぬるした粘膜から逃れきれず物理的に吐き気がするし気持ちもどんよりしている…けど、読んで良かった。なんでこんなに気持ちが悪いと思うのか引き続き考えつつ、著者の他作品も読んでみたい。

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著者プロフィール

村田沙耶香(むらた さやか)
1979年、千葉県印西市生まれ。二松學舍大学附属柏高等学校、玉川大学文学部芸術学科芸術文化コース卒業。
2003年『授乳』で第46回群像新人文学賞優秀賞を受賞しデビュー作となる。2009年『ギンイロノウタ』で第22回三島由紀夫賞候補及び、第31回野間文芸新人賞受賞。2010年『星が吸う水』で第23回三島由紀夫賞候補。2012年『タダイマトビラ』で第25回三島由紀夫賞候補。2013年、しろいろの街の、その骨の体温の』で第26回三島由紀夫賞受賞。2014年『殺人出産』で第14回センス・オブ・ジェンダー賞少子化対策特別賞受賞。2016年『コンビニ人間』で第155回芥川龍之介賞受賞。
2018年8月末、『地球星人』を刊行。

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