小松とうさちゃん

著者 :
  • 河出書房新社
3.45
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本棚登録 : 261
レビュー : 65
  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309024394

感想・レビュー・書評

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  • 中編「小松とうさちゃん」短編「ネクトンについて考えても意味がない」掌編「飛車と騾馬」
    まずは「飛車と騾馬」。酒場での2人のおっさんの”今の若い人は”的なちょっと愚痴っぽい会話。飛車が蓄電業界でバリバリ働く宇佐美(うさちゃん)で、騾馬が大学の非常勤教師で結婚に縁遠く子を持たない(一代雑種に例えられる)小松。

    この二つのキャラが絲山さんの中で消し去れず、中編になったのが「小松とうさちゃん」です。
    主題は新幹線の中で知り合った長崎みどりと小松の52歳同士の恋。そして恋愛に不器用な小松になにくれと助けを出す宇佐美。伏線にうさぴょん名乗り、既にマンネリ化したゲームから抜け出せずにいる宇佐美とゲーム仲間のやり取り。もう一つがみどりを見舞い屋というちょっと怪しい稼業に引き込んだ社長・八重樫のみどりに対する屈折した愛情。最後にこれらが一点に集約されて行きます。
    主題は良いですね。”小太りの中年男”小松の決断が格好良かったり、離婚歴のあるみどりが良い意味で純情っぽかったり、そこに意外にやり手の宇佐美の友情が上手く絡まって。中年らしくゆったりと暖かでちょっと微笑ましい。
    しかし伏線はどうかな。主題だけでは薄っぺらくなるのでしょうが、それにしても結構ボリュームが多い。確かに最後に一点に集約はして行くのですが、特に宇佐美のネトゲ場面はもう少し減らして、主題を膨らませた方が良かったような気がします。

    あらためて過去の絲山作品についての自分の感想を読みなおすと、そこかしこに「困ってしまう」「悩んでしまう」と書いています。良いのだけど、どこが良いのか掴めない。言いたい事が掴みきれないのだけど、しっかり読まされてしまう。この作品はむしろ判りやすい方なのかな。ともかくも上手い作家さんです。

    • ばあチャルさん
      わたしもここをお借りして
      よろしくお願いいたします。

      Todoさんのブログに本棚をリンクなさってて、きれいでいいなあ、とまねをしたか...
      わたしもここをお借りして
      よろしくお願いいたします。

      Todoさんのブログに本棚をリンクなさってて、きれいでいいなあ、とまねをしたかったのですが楽天ブログは狭量なのか、貼り付け不可能でした。

      自分が楽しめばいいのですけどね。

      2018/10/19
  • 【内容紹介・引用】
    ーー「小松さん、なんかいいことあった?」
    52歳の非常勤講師小松の恋と、
    彼を見守るネトゲに夢中の年下敏腕サラリーマン宇佐美の憂鬱

    52歳の非常勤講師小松は、新潟に向かう新幹線で知り合った同い年の女性みどりが気になっているが、恋愛と無縁に生きてきた彼は、この先どう詰めればいいか分からない。一方、みどりは自身の仕事を小松に打ち明けるかべきか悩んでいた。彼女は入院患者に有料で訪問サービスをする「見舞い屋」だったのだ。小松は年下の呑み友だち宇佐美に見守られ、緩やかに彼女との距離を縮めていくのだか、そこに「見舞い屋」を仕切るいかがわしい男・八重樫が現れて……絲山秋子が贈る、小さな奇蹟の物語。

    この表紙はあれか?小松か?怖いじゃないか。やくざか?
    この本の中の小松さんは薄給の臨時講師で生徒を愛する温厚な紳士。50才オーバーの恋の話ですがエンタ-テイメント性よりも穏やかで人間味に溢れた中編です。
    飲み屋仲間の宇佐美(うさちゃん)もなかなかいいキャラですが、濃い演出とかは無いので結構薄味。この濃い味を求める感覚はもしかしてエンタメに毒されている僕?
    この関係性結構魅力的なので続編あったら読むかもしれない位には気に入りました。

  • 絲山秋子にしては珍しく洒脱な味わいの、軽妙な作品。

    導入部から物語の視点(語り手)がこまめに変わり、最初(登場人物が確定するまでの間)少し戸惑うのだが、それさえも小気味よいリズムに感じられ、期待感をもってページを捲る手がとまらなくなってくる。

    この小説のいちばんの魅力は、主要登場人物である小松、みどり、宇佐美の3人のキャラがそれぞれに素敵であるところだと思うのだが、その中でも特に宇佐美の存在がこの物語の彩を豊かなものにしている。

    宇佐美は40代にしてネトゲにはまり、また家庭はバラバラでかつ適当に外で遊んでいる、かなりいい加減な感じの男であるが、実は仕事はかなりデキル風である。

    本社から出張で大阪支店で会議に出席して業績不振の営業所を叱責するくらいだから、支店長と同格か格上の営業本部長くらいのポジションなののだろう。

    またネトゲで配下に冷静かつ的確な指示を下しているのをみても、デキル感は滲み出ている。

    そんな彼が、ぶつぶつ言いながらも友達の小松のために相談に乗り、また最後みどりの窮地を救う。

    またエンディングのオチも彼らしくて微笑ましい。

    そんな愛すべき「有能ないい人」.......絲山作品では今まであまりいなかったキャラだと思うが、彼のおかげでシリーズ化をファンとして強く望むくらいに素敵な小説になったのは間違いない。

    「離陸」とはまた違った意味で新境地を拓く作品といえるだろうが、わたしはこっちの方が好きである。

    ただ一点だけ気になったことがある

    物語の後半、みどりが宇佐美の LINE をみつけて情報提供したことが明かされるのだが、小松から得た「いつも話してる宇佐見君って友達」って言う情報でだけで、宇佐美の LINE にたどり着けることができるのだろうか?

    LINE には友達の友達をサジェストする機能はないので LINE 単独ではおそらく不可能。

    可能性として有り得るのは、3人とも Facebook をやっていて、小松とみどりが友達で、みどりのアカウントに共通の友達1名として宇佐美のアカウントがサジェストされて、プロフィール欄見たら LINE_ID が掲載されていた......ってところだろうか?

    下らない突っ込みで恐縮だがちょっと気になったので.......

    言いたかったことが途中に埋もれてしまったので、もう一度まとめる。

    キャラ設定が素晴らしかったので、肩の力を抜いて書いたら、そのキャラ達が自由に動き出し、結果として新境地を拓いてしまった......と言ったら作者に失礼だろうか。

    わたしはこの作品、大好きである。

  • このあったかさは何なのか…
    ネットの中の人格と現実の姿は違う。でもいい人はどこでだってつながれる。
    不器用で真面目な小松。しっかりしながら可愛いとこあるみどり。そしてうさぴょん!あなたはそのままでいて。
    ずぅっと付き合い続ける縁を感じて嬉しくなるお話でした。
    「ネクトンについて考えても意味がない」は、一緒に笑うのって楽しいね…の一文だけでじんわり。あぁ深いとこでつながりたい、と思ってしまう。
    この本は好きです。

  • 図書館にてたまたま目に留まって借りた本。ゲームの世界を織り込んであるあたり、抵抗感じつつだったけど最後に収まったのにはヤラレタw

  • 52歳の冴えない非常勤講師小松と、行きつけの飲み屋で仲良くなったお堅いサラリーマンでネトゲにはまっている40代の宇佐美、そして小松と同年代で新幹線の席がとなりだった縁で小松が惚れ込んでしまうみどり。小松の恋の進展の遅さと初々しさ、みどりの自分が生業とする見舞い屋への鬱屈と小松への少しずつ進む思い、宇佐美のネトゲの盟主としての飽きと責任感と。事態はみどりの雇い主の小松への接近から、それを撃退するための小松と宇佐美の一芝居まで鮮やかに進展し。最後の和やかな居酒屋で宇佐美とみどりの奇縁が明かされるところまで、なんだかいいなあこの人たち、ずっと見ていたいなあ、大好きという思い。本を閉じても、この物語が好きだったという余韻に浸りつつ。著者が、巻末の「飛車と騾馬」でさらっと書いて、もっと書きたいと思ったのもむべなるかなと。併録の「ネクトンについて考えても意味がない」は、たゆたうクラゲに瞑想する女性の精神だけが降りてきて対話をすると言う設定。静かな一編。以下備忘録的に/「こういった関係は最初に持った好感の瑞々しさ以上のものには発展せず、摘み取った花のように容易に枯れてしまうことの方が多いのを彼女は知っていた」/日本のミケランジェロと呼ばれる石川雲蝶/水の流れに逆らって自力で泳ぐことができるのがネクトン、自分から泳ごうとしないのがプランクトン、ずっと海底で暮すのがベントス/七十年も八十年も生きる人がいると聞いて、「そんなに生きて、何をするんだ」と驚く、平均寿命が一年のミズクラゲ/「誰でも最後には等しく梯子が外されることを知っていて、それでも毎日、当たり前のように生きている。野菜や草花のように、いつ実り、いつ枯れるかがわかっていたら面倒臭い小さな社会など必要ないのかもしれない」

  • 全体に流れる滑稽さとシリアルさになんともいえずひきこまれる。そして、気持ちの奥のほうでざわざわと落ち着かない居心地の悪さのような感覚がまた癖になる。

  • マイペースなおじさん小松、ネトゲ中毒サラリーマンのうさちゃん、秘密の仕事をしている彼女。
    三人が入れ替わりに語り物語は進んで行きます。目まぐるしく入れ替わるため慣れるのに
    時間がかかるかと思ったが、案外すんなりと入ってきた。中年男の恋模様を描いてはいるが
    それよりも、キャラクター個々の存在感に惹かれた。何てことないんだけど、何かいい。

  • 小松とうさちゃんのやりとりにふふってなる。

  • はっきりとした章立てしないまま
    人生に限界を感じ半ば諦めがちの大学非常勤講師 小松
    ネトゲの盟主をやりながら日々の生活をキチンとこなす
    宇佐美ことうさちゃん

    見舞い屋というややグレーな仕事に若干の負い目を感じながら何とかやり過ごす みどり

    この3人とみどりの仕事斡旋者 八重樫で
    短くトントンと話が進んでいく。

    人生に疲れきった人は
    美味しい話が目の前にあっても
    そう簡単には飛びつかない。

    それでも飛びつきたい心の揺れを
    ヤキモキしながらも楽しめた。

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著者プロフィール

絲山秋子(いとやま・あきこ)
一九六六年東京都生まれ。二〇〇三年「イッツ・オンリー・トーク」で文學界新人賞を受賞しデビュー。二〇〇四年「袋小路の男」で川端康成文学賞、二〇〇五年『海の仙人』で芸術選奨文部科学大臣新人賞、二〇〇六年「沖で待つ」で芥川賞、二〇一六年『薄情』で谷崎潤一郎賞を受賞。

「2019年 『掌篇歳時記 春夏』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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