少年聖女

著者 :
  • 河出書房新社
2.62
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本棚登録 : 274
感想 : 13
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  • Amazon.co.jp ・本 (242ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309025001

感想・レビュー・書評

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  • だいたいにおいて鹿島田真希の作品は難解ではあるけれど、これは難解さよりも設定の過激さのほうに目がいってしまい、逆に作者本来の難解さを設定の過激さで煙に巻いてしまったような印象を受けた。性的に過激なことを前面に出しておけばむしろそれを取っ掛かりにして読む人も意外といるでしょという計略なのかもしれないけれど、逆にそこしか読まれなくなってしまったらこの物語の真意は伝わらないだろうし、うーむ、どうしたもんだかな、という感じ。

    Aquaというゲイバーで優利という青年に恋した「僕」は、優利からその店でかつて働いていた伝説のようなタマという人物の話を聞かされる。次々と新しい恋人を連れ込む母親とその恋人たちに幼少時から性的虐待を受けて育ったタマは、女の子だけれど男装してゲイバーで働いており、お客たちは彼女をオネエっけのある少年だと思っている。差別用語かもしれないけれど精神薄弱、ちょっと白痴的なところのあるタマは、タイトルどおり少年の姿をした聖女、鹿島田真希作品では定番の「聖なる愚か者」のバリエーションのひとつでしょう。

    それにしてもそんなタマを一目見て女性だと気づき、恋に落ちる中年男・武史の、タマに対する言動の幼稚さ、自己中心的さがとても気持ち悪くて序盤は相当不愉快だった。しかしやがて武史は、タマの聖性に感化され、自らも聖人への階梯を昇り始める。つまりそれは、他人から見下され蔑まれ蔑ろにされる愚か者に成り下がることだった。やがてタマのルームメイトオルガの産んだ赤ん坊をタマと武史は育てることになり、聖ゲオルギイから名前をもらったその子はユーリィと呼ばれ成長し・・・。

    もともとさえない中年男ながらそれなりに仕事にやりがいを見出していた武史がタマに感化されどんどん「バカになっていく」ことがおそらく一番の読みどころだと思いますが、あまりにもタマの生い立ちが不幸で、それを可哀想と同情するのはあまりにも自分が傲慢で、そのくせはやり別世界の人種として距離をおきたいし自分が何かしてあげられるとも思えないしできれば関わり合いになりたくない。タマのいる場所まで堕ちた武史を素敵だとも羨ましいとも思わないし、優利も僕も結局欲求不満のただのホモだ。

    作者の言わんとすることは何となくわかるのだけれど、それよりも登場人物たちが無駄に見世物的な世界に身を置かされていることへの嫌悪感のほうが自分の中で勝ってしまって、物語そのものに心を動かされるところまでいかなかったのが残念。

  • これまたすごいもの書いたな…と苦笑しながら読んだ。
    男は女を知った。そこから始まってそこで終わる感じが好きだな。最後の終わり方は鳥肌立った。

    やがて男は、今まで自分の一切について知らなかったことに気づいた。こうして主人公は自分を知った。

    • きわさん
      スマートモテリーマン
      スマートモテリーマン
      2017/06/19
  • 最初に読んだのは随分前。号泣しながら。こんなに人に寄り添う文章を描ける方なんているんだと驚きとともに。

    2回目の読了。
    難解だった。

  • ”最も汚辱に塗れた俗なるものが一転して聖なるものと化す”というのは古典以来の一つの文学などにおけるテーマであるが、そのテーマを現代において描こうとした労作・・・と言えないこともない。

    女でありながら男性と偽ってゲイバーで過激なショーを演じるタマと、偶然にきっかけから彼女に魅せられ結婚することになる武史という2人の関係を軸に、俗なるタマが武史の目にとって徐々に聖者へと転化していく様子を描く小説。そのテーマ自身は頭では理解できるのだが、なぜそのような転化が発生するのか、という理屈が正直伝わってこず、作品に入り込めなかった感が強い。

    こういうアナーキーなテーマを描こうとする心意気は非常に買うし、決して面白くないわけではないのだが、これが傑作と言えるかというとそれは違い、もっと別の作品を読んでみたい、という気はわずかにさせられる。

  • 男は女を知った。

    ゲイバーAquaに通う僕にユウリが教えてくれた話。
    かつてこの店で男として舞台に立ち働いていたタマ。

    どんなに観客に罵声を浴びせられても平然としていた彼女が
    女であることを見破ったのは、オーナーの親友の武史だった。

    つかみどころのないタマと
    彼女にのめり込み時には暴力すら振るってしまう武史。

    タマは幼少期に性的虐待を受けていたが故に
    大人になった今でも自分を痛めつけることでしか
    存在する理由を見つけることができず

    さらに彼女自身がそれに気づくことができず
    武史という存在を拒否するように舞台は過激になっていき
    周囲の人の混乱の渦に陥れていた。

    タマのかつてのルームメイトのオリガの赤ちゃんを
    育てることとなり
    赤ちゃんだった男の子のユーリィは、Aquaの店に立つほどの青年となって育ての親たちのことを語り始める。

    とんでもない話だな!

    彼らは周囲にどれだけ蔑まれようとも
    そんなことには頓着せずに自分の人生を懸命に生きてる姿が幸福で清々しさすら感じる。

    退屈しのぎに誰かを傷つけることは決して許されることではない、ということ。

  • あまりおもしろくない

  • い……意味がわからない……

  • 結局武司は離れることで何をどうしたかったのか(まあそこはちょっとわからなくはないけど)、で結局何がどうなったのかがイマイチよくわからなかった。ユーリもなぜそうなるかなあ…。

  • 難解な読み物苦手なんだよね...と思いながらも、訳が分からないながらも読了できた文章の雰囲気は好きなのかも。え‍?この世界好きなの‍?と自分にツッコミを入れつつ。

  • 叡智、とか難しいことはわからないけど
    先が気になる話 201704

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著者プロフィール

1976年生まれ。1999年、「二匹」で第35回文藝賞を受賞しデビュー。2004年、『白バラ四姉妹殺人事件』で第17回三島由紀夫賞候補、2005年『六〇〇〇度の愛』で三島由紀夫賞受賞。2006年「ナンバーワン・コンストラクション」で第135回芥川賞候補。2007年『ピカルディーの三度』で野間文芸新人賞受賞。2009年「女の庭」で第140回芥川賞候補、『ゼロの王国』で第5回絲山賞を受賞。2010年『その暁のぬるさ』で第143回芥川賞候補。

「2011年 『小説家の饒舌 12のトーク・セッション』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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