青が破れる

著者 :
  • 河出書房新社
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レビュー : 27
  • Amazon.co.jp ・本 (144ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309025247

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  • 【青が破れる】
    「いいのいいの、確率の問題だから、純粋に ー 死ぬとか生きるとか、わたしのは、健康と関係ないから」

    「気まずいごっこ」
    「気まずいごっこ?」
    「お見舞いにきても、気まずいでしょ? 会話とか、不自然になるし。だから敢えてさらに気まずくし、気まずさをモヤモヤさせることなく、お見舞い客を安心させるこころみ」
    「変わってますね」
    「変わった病気にかかるとね、どうしても」

    「ハルくんに、あいたいな」
    「でも、くるなっていったんですよね」
    「だって、ハルくんはかえるでしょ? 許せないの。死ぬこととか、病気に選ばれたこととかは、わりに許せるけど、許せるっていうか、許せる許せないのレベルじゃないし、『はぁー、まじか』って感じだけど、ハルくんがきたらかえっちゃうってことだけは、どうしても許せない」

    『だが、ほんとうのことなんていえない。だれしも嘘はいやがるのに、ほんとうのことを伝えないことはやさしいことだとおもっている。いつも。』

    『夏澄さんにあえた日、からまた次に夏澄さんにあえる日、を一日みたいに考えたい。その一日は不規則に伸び縮みする。前回あったのが一週間前だから、おれはまだおなじ一日を生きている気分だ。あえたよろこびに浮き沈みする期間をおえて、安定的にながれる一日の情緒を、なんとか生きているよ、って夏澄さんにつたえたい。』

    『あいたいなら、あいにいけばいい。でももうそれは、「おれの夏澄さんへの恋情」ではなかった。あいにいったら、それはおれの欲情であり、夏澄さんの孤独であり、それは情熱を装うけど、しんじつは空しい。』

    『ひとの感情に、いちいち対処しなくてもいい、とおれはおもった。それは途方もないから。』

    「とう子、ぼくらかえるで、またくるからな、とう子、起きひんか? 目さめたらさみしならんか? とう子、かえるで、でも、な、またくるやし…」

    【脱皮ボーイ】
    『もし女の子とつき合えたら、水族館とかプラネタリウムとか行こう。セックスの合間に、いっぱい行こう。』

  • 「青が破れる」
    ボクサー志望の青年秋吉、秋吉の友人のハルオとその難病持ちの彼女とう子、秋吉と不倫している人妻の夏澄、ジムの後輩梅生。ハルオに頼まれて、とう子の見舞いに行ったことから始まる、秋吉のひと夏の恋と死とボクシング。

    考えるボクサーである(が、同時にそれを嫌悪している)秋吉の思考の奔流と、それに相反するかのように平仮名を多用した稚拙な話し言葉が混在し、過剰にナイーブなのに、極めてドライっていう両極端な空気感を成立させてる。
    常にヒリヒリした死の気配と哀しみが漂っててどちらかというと陰鬱な話だけど、
    梅生の飄然とした明るさに救われる。

    他には交通事故を切っ掛けに恋に落ちた男女を描いた「脱皮ボーイ」、偶然電車でかつての恋人同士が隣り合って座るも女性の方は読書に集中していて気づかない「読書」の2編を収録。

著者プロフィール

町屋 良平(まちや りょうへい)
1983年、東京都生まれの小説家。「青が破れる」で第53回文藝賞を受賞してデビューし、同作で第30回三島由紀夫賞候補に選ばれる。2018年、「しき」で第159回芥川龍之介賞候補に選ばれ、続く「1R1分34秒」で第160回芥川龍之介賞候補になった。

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