- Amazon.co.jp ・本 (221ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309025254
作品紹介・あらすじ
小国ナスミ、享年43。その死は湖に落ちた雫の波紋のように家族や友人、知人へと広がり――命のまばゆさを描く感動と祝福の物語!
感想・レビュー・書評
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R3.6.16 読了。
しみじみ良い本ですね。言われて改めて、人は大小、多少、深浅、善悪の違いはあれども、誰かに影響を与えながら、そして誰かに影響されながら生きているんだなあって思いました。
柱に書かれた眼の中のダイヤって神秘的な感じがしますね。
・「生きとし生けるものっていうのはさ、自分も入ってるんだよ。」
・「よいことも悪いことも受けとめて、最善をつくす。」
・「私がもどれる場所でありたいの。誰かが、私にもどりたいって思ってくれるような、そんな人になりたいの。」詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ひとつの命が、水面(みなも)で ぽちゃんと音を立て
美しい波紋をいくつも描きながら、静かに沈んでゆく。
14話からなるこの物語。
ナスミの視線で、自分の命が終わるまでが語られる 第1話。
2話から14話で繰り広げられるのは
周りの人たちが ナスミと関わることで見た世界。
広がる波紋が描かれる。
43歳という若さでこの世を去るナスミ。
けれど、決して悲しい物語ではなく
むしろ祝福に満ちている。
ふと、黒澤明監督のオムニバス映画『夢』が浮かんだ。
最後の「水車のある村」
村人が華やかに行なう葬儀の話だった。
亡くなった人が良い人生を最後まで送ったことを祝って
お棺を取り囲んで笑顔で行進する映像は衝撃だった。
これを観て、死生観がガラリと変えられた。
ちゃんと生きた命の終わりは
祝福で満たすべきなのかもしれない、と。 -
43歳で亡くなったナスミ。皆んなが思い出すナスミの姿がなんとも大らかで器が大きくてカッコいい。いつでもガハハと笑っていて、皆んなの背中を押してくれる。微笑む、くらいじゃなく、ガハハと笑って生きていけたらいいなと思う。笑子ばあさんの「笑子」って名前が楽しい一家の血を表してるような気がする。
ナスミが小泉今日子、笑子ばあさんが片桐はいりでやってたドラマのエピソード0的な小説。この配役見ただけでも楽しい一家なのは分かるよね〜。ドラマも最高に面白かった。木皿泉さんのドラマはいつもホロっとさせ過ぎずガハハと笑わせてもらえて大好き。
この小説も何回も読み返したくなるようなすっごくいいお話でした。 -
第一話で亡くなる”ナスミ”に関わる人達を描いた連作短編集。
死がテーマになっている小説ですが、悲しい物語という訳でなく、ナスミさんの生きている時の力強い言葉や行動にパワーをもらうような小説でした。彼女が残した、思いや影響が残る限り、存在は無くならないのですね。波のように繋がっていく。感動したし、誰かと一緒にいる時間を大切にしたいと思いました。
タイトルも素敵です。さざなみの音や振動が、ゆっくりと誰かに影響を与えていくような。真っ暗ではなく、あちこちに希望や優しさの光が灯る夜を連想させます。 -
昨年末に実父が他界した私にとっては、いろんなことを思い出し、涙を流しながらの読書となった
富士山を背景に、仁王立ちになって
「よいことも悪いことも受けとめて、最善を尽くすッ!」
と言い放ったナスミ。思い通りにならぬこともあったはずなのに、いつも笑いとばして、その言葉通りに43歳の人生を生き抜いたナスミ
自分が亡くなった後、悲しむであろう人のことを考え、いろんなことを画策して亡くなった
柱につけた目玉のダイヤモンド
夫の日出男に遺した自撮りのビデオメッセージ・・・
かっこよすぎる! 悲しすぎる! 自分のことだけ考えていればいいのに・・・
「今は、私がもどれる場所でありたいの。誰かが、私にもどりたいって思ってくれるようなそんな人になりたい」とナスミが言ったように、ナスミが亡くなっても、みんなの心にちゃんとナスミは居て、折につけてみんなナスミに戻っている
これだけたくさんの人の心の中に優しさや勇気や笑いを遺していったナスミ
寺地はるなさんの「夜が暗いとは限らない」の中に
「死んだ人間は天国にもどこにも行かん。死んだら小さいたくさんのかけらになって散らばって、たくさんの人間に吸収される。生きてる人間の一部になってとどまり続ける」
というおじいちゃんの言葉があり、それがずっと心に残っていたが、まさしくこの通りだなと思う
一人の人間の人生が終わっても、それは『完』でも『おわり』でもなく、『続けッ!」なのだ
いつまでもくよくよメソメソしていたら、ナスミに背中をバシッと叩かれ、「ガハハハ」と笑われそうだ
「いつまでメソメソしてんだよッ」と
夜空に点滅する飛行機の光がとても小さくチカッと瞬いたのを見て亡くなった義父がちゃんと生きていると気づいた利恵のように、私も夜空に光る飛行機の点滅灯を見て、父を偲びたい
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身近な人を亡くすということは、ただただ深い悲しみをももたらすことのような気がするけれど、それはもしかするとちょっと違うのかも、と。
誰か大切な人が「生きていた」ことによって、自分とその人の間に大きな変化が生まれる。その変化が今度はその人を亡くす時にまた大きく動く。自分がこの先その人のいない世界で生きていくこと、その意味と進むべき道を自分で見つける。それを見つけること、それこそがその人が生きていて自分と共にあった意味なのだろう。
「よいことも悪いことも受け止めて、最善を尽く」して生きたナスミに私も会いたかった。いや、私もナスミのように生きたい。がはははと大声で笑いながら最善を尽くして、そして逝きたい。
木皿さんの描く人を亡くす哀しみの向こう側。本当に大好きだ。 -
贋コンビニ[富士ファミリー]の三姉妹の次女ナスミが若くして癌でなくなるところからはじまる。
人がなくなるって、なんだかすごいことだよ。いろんなところで、いろんな影響を受けたりしてて、その人の生きざまはなくなったときに知るんだよね。
さざ波のように生きざまは受け継がれていくのかな。
じんと泣けたり、ププッとなったり、忙しい本でした。でも心はおだやかになる。
そんな優しいお話。
余談
ナスミの好きだった漫画の作者、
樹王光林さんに鷹子さんが最終回を教えてもらいに何度もいったとき、受付で先生のことをリンゴサンと口走ったところにツボってしまい。
バスの中でもこらえるのに必死。
ナスミのようにガハハと笑いたかったぁ➰ -
いい本だぁって思った。
ー 死後の世界、ってあの世ってことじゃなくて、この世こそたっくさんの人の死後の世界なんだ!
この本に寄せた片桐はいりさんのコメント。
死してもその人の生きた跡はこの世にたっくさん残る。
それは「亡霊」や「幽霊」と言って時に恐れられるけど、大切に大切に引き継がれてきたからこそ、我々はここにあるのだ、と当たり前のことを改めて感じた。
ナスミの亡くなる場面から始まり、読み進むにつれて、ナスミを取り巻く世界が徐々に広がって見えてくる。
画期的な小説だな、と思った。
生きていく勇気もたくさんもらった。
著者プロフィール
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