さざなみのよる

著者 :
  • 河出書房新社
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本棚登録 : 4570
感想 : 515
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  • Amazon.co.jp ・本 (221ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309025254

感想・レビュー・書評

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  • ナスミが亡くなる。その死が周りの人にさざなみのように広がり、一人一人の愛情の物語が語られる。一つ一つ暖かい、随所に出てくるナスミの言葉や物語の雰囲気に励まされたり癒されたり。まさしく、読後も心にさざなみがたどり着いたようで緩やかに暖かく。
    ナスミの言葉は心に響くなあ。死は誰にでもある。突然やってくる人もいる。それを忘れてはいけない。精一杯行きたくなった、そう思う一冊。

  • 木皿泉氏は ”昨夜のカレー、明日のパン”以来。
    あれは だいぶ前に亡くなった夫を抱えるようにして暮らす 妻とギフがメインだった。
    ドラマもよかった。 すごくゆっくりだけど ひにち薬が効いていく感じが沁みた。

    本作は、現在進行形で ナスミが亡くなっていく。
    40代、癌。 
    そんな知り合いが幾人かいた。

    ナスミはなかなかに自由に意志的に生きた人で、あちらの世界に行くのもわりとさっぱりと。
    彼女に近い人たちも、割合に準備がでてきているというか。

    もうちょっと彼女とは遠い人たちの話は、だいぶ寓話的なイイ話。ちょっと定型的かと感じたけれど、日常的には会っていない過去の人の訃報に、突然今の自分の姿を映してみる。

    なんだかやっぱりむしょうに寂しくなる話だった。

    • kohei1813さん
      ドラマは見損なっています、富士ファミリーでよかったでしょうか?TSUTAYAで借ります。
      ドラマは見損なっています、富士ファミリーでよかったでしょうか?TSUTAYAで借ります。
      2018/07/31
  • 小国ナスミ、享年43歳

    主人公が危篤になって亡くなるところから、始まる。


    生きていたときには、気づけなかった
    大切な人の死や
    こんなにもいろんな人に思われて惜しまれる
    ナスミさんの人生に嫉妬した。

    曲がったことが嫌いで、自分のためじゃなく
    同僚のために上司を殴っちゃうような男前。

    こんなに人を愛し、際される人生に憧れます。

  • 柱に光るダイヤモンドの瞳。
    涙を集める漫画家と涙型のバッグ。
    カメラのフィルムケースに入った、折れた歯。
    何気ない会話からもらった明日へ向かう力。
    生きること、死ぬこと。
    受けとること、渡すこと。

    なんて愛おしい物語か。
    どうしてこんなに心の柔らかい部分を震わせる小説が書けるのだろう。改めて著者の作品がだいすきだと思った。

    日々は大きな事件がなくとも、なかなかままならない。
    誰かといるときでさえ、どうしようもなく寂しくなることがある。
    誰かを傷つけて悔やんだり、傷つけられてやりきれなくなることがある。
    木皿泉さんは、そんな私たちの日々の延長上で温かい物語を紡いでくれる作家だ。

    私も日々の誰かからなにかを受け取り、僅かながら渡している。
    ナスミさんの言葉や記憶で心を温めるこの作品の登場人物たちのように、何気ない会話で時に救われたりしながら。

    それを大切にしたいと思えた。
    それは、毎日を大切にすること、すべての人を大切にすること、生きることを大切にするってことなんだと思う。

    「昨夜のカレー、明日のパン」と根底にあるテーマは繋がっているととても感じた。

  • 最初から涙止まらず。
    人が死んでからの物語とは言えホラーでもファンタジーでもなく人間味があってすごく良かった。死んでからも人の心に残り続けるってすごいことだな。

  • ナスミは亡くなってしまったが、それぞれの人の心の中でとてもいきいきと生き続ける。
    そのナスミがとても魅力的。
    亡くなってしまっても、ずっと一緒に生き続けているのだなと心が少し軽くなり暖かくなる物語。

    私がとても好きなところ
           ↓
    〜にっちもさっちもゆかなくなって、自分はゴミみたいな存在になってしまうのだ、と好江は思っていた。そんな好江にナスミは、あーすればいいとか、こうしろとか一切言わず、絶望するなと言ってくれた。ただそれだけを言い続けてくれた人だった。

  • 木皿泉はデビュー作であるドラマ『すいか』で持っていかれた。小説はそんなに出しておられないようだが、今回初めて読んでみて、何とも言えない気持ちにさせてくれるのは相変わらずでうれしくなった。読むたびに様々な感情が入り乱れ、交錯する。ある登場人物の視点や感覚に共感したら、それがとんでもない罠だったり。時間と人間関係が織りなす一枚のタペストリー。何度でも読み返したくなる作品でした。

  • ゴールデンウィークの、朝の8時に、手にとって読み始める本じゃなかったなぁと反省(笑)

    涙がじわりじわり出てきてしまって、ティッシュで拭いて、また、じわりと滲んできて、また拭いて。
    そんな繰り返しなので、すでに目の周りが腫れてきていて、とても外には出られそうにありません。
    (Stay Home週間だからいいのか)

    小国ナスミという女性の死と、その彼女と関わった人々のお話で、各章ごとに語りの主人公となる人が移り変わっていきます。
    それとともに、物語の中の時間もナスミが死んでから少しずつ進んでいきます。

    「死」というものの存在は、私には、ある日グワッと自分に向かって吹き上がってくる時もあれば、すごい遠くにあって冷蔵庫の中の忘れられた食品のようになっている時もあります。

    非常に不安定なものだけど、歳を重ねたり、知っている人がなくなるたびに現れる頻度が高くなる気がします。

    まだ、両親も妹も生きているし、親しい友達も生きています。数人、向こうの世界にいってしまった友達もいるけれど、それはなんとか受け入れられる範囲で私は生きてきているとは思っています。

    しかし、本当に両親や妹の死に直面したら、時間の解決を待つしかないのかもしれないな。その人の思い出をもって、一つずつ昇華していくしかないのかもしれない。

  • 温かく、死んだ後も続いていく物語。
    ちょっとファンタジー。

  • ナスミの死の間近から始まる。
    カラッとしたナスミの語り口から、じわじわと切なくなる。死に直面すると優しくなって、切なくなる。

    それから皆の中に宿るナスミが描かれる。
    おんばざらだるまきりくそわか(生きとし生けるものが幸せでありますように)、私がもどれる場所でありたい(支える立場へ)、(ナツミを)そっくりそのままあげる、うまくやんなよ。はたから見るとさざなみのような出来事でも本人にとっては越えれるかの瀬戸際。その時に背中を押して、乗り越えさせてくれる言葉。

    そして光へ。
    いのちがやどる、図書館の本を借りて返すような、の表現では唸った。

    リンゴさんのくだりは笑えた。

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著者プロフィール

夫婦脚本家。ドラマ「すいか」で向田邦子賞、「Q10」「しあわせのカタチ~脚本家・木皿泉 創作の“世界”」で2年連続ギャラクシー賞優秀賞。他に「野ブタ。をプロデュース」等。著書『二度寝で番茶』など。

「2020年 『さざなみのよる』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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