日本怪談実話〈全〉

著者 :
  • 河出書房新社
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本棚登録 : 25
レビュー : 5
  • Amazon.co.jp ・本 (349ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309026350

感想・レビュー・書評

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  • 面白そうなものを拾い読み。
    時代の世相を反映し、戦争、関東大震災から果ては写真やタクシーまで人々の関心事を扱ったお話が多かった。

    怖い話というよりは変な話といった感じで、気味悪かったり不可解だったり。解決のないものもあり、「実話」っぽい。また、ときどき「枯れ尾花」的笑い話が入ってくるのも箸休めに良かった。
    ツボを押さえた簡潔な文体でとても面白く読むことができた。泉鏡花のする話や谷崎潤一郎と編集者の話などなど、業界での友人知人の話もちらほら、怪談がより身近に感じられて楽しい。

    以下良かったもの
    「煙草を喫む」「死人の船室」「海坊主」「飯坂温泉の怪異」「書物を返しに来る」「手を洗う亡者」「隧道内の怪火」「丸髷の美女」「女の出る蚊帳」

  • 同著者の「戦前の怪談」を先日読んだが、それと被らずに他にもこれ程話を集めたのかと思うと頭が下がる。
    とにかく沢山の話が時代や場所を取り混ぜて収録されているが、何となく似た題材のものは続けて並べるようにしてあるようだ。
    怪談と言っても人を怖がらせる為に書いたのではなく、実際おこった事を記録したもの。
    自分は「天井からぶらさがる足」のような現象系の話が好みだが、この本には幽霊が出た話も狐が化かす話も因縁話も収録されている。
    著者の出身の為か、東京から西寄りの話が多い。
    有名な、大蔵省の将門塚の話や泉鏡花等が参加した怪談会の話も入っていた。

  • 明治以降の実話怪談の集大成にして決定版、だそうです。こういった先人の苦労があってこそ、怪談が失われず語り継がれていくんでしょうね。現在の収集家の方々もそうだし、読者もそう。
    タクシーの乗客の怪談って、戦前からあったのだなと感心しきり。場所が青山墓地というのもね。王道なんだな。
    知らず知らずに刷り込まれた記憶が、周囲の雰囲気と合致して虚像を作り出すという現象が怪談だ、なんてことも耳にしますね。この本に収集された怪談と、現在での語られる怪談の類似を思うと、無意識が作り出した、という話もなるほどと思ってしまう。
    ただ、長く語り継がれたり、広い世代で出現していること自体が、存在証明になったりするのではないかな、とも思ったりします。
    噂が現実になる、という都市伝説みたいなさ。ゲームの話ですが。

    読んでいて思った事もう一つ。恐怖感がありませんでした。
    「語る」より「集める」の人だったのかな。

  • 実話系怪談、とはひと味違う。
    なぜならこれは、出版年が「1938年」つまり戦前に編まれた本なのだ。
    ここには著者田中貢太郎(高知出身の著述家で・郷土史家)で、著者が個人的に交流のあった人から直接聞いた話や、新聞に掲載されていた話を採話している。
    時代としては幕末から戦前まで。

    現代の実話怪談と大きく異なる点は、軍隊の物語がかなりの点数にのぼる事だろうか。
    当時は徴兵制があって、今のように軍隊を蔑んだり忌避したりするような社会的背景はなかった。むしろ軍人は尊敬されていた。そういった時代の違いというものが感じられる。
    軍隊に関する怪談には、松谷みよ子編の現代民話集のなかに一巻を占めているが、他にはほとんど聞いたり読んだりした事がない。
    ……自衛隊の中にも色々あるんじゃないかと思うんですけどねえ(硫黄島に関する怪談はかなりあるらしい)。

    最初改造社から上梓されたものを電子書籍化してあるのだが、ひとつ残念なのは、明らかな誤変換や誤入力が頻出している事だ。
    たとえば、明らかに時代の「大正」であるべきところが「対象」であったり。
    古い時代の文章なので、今とは違う漢字の用法などもあり、どれが誤変換なのかはわかりづらいところもあるが、それだけにわかりづらい文章となってしまっており、これは非常に残念な点。編集段階でもう少し手厚いチェックがあれば良かったのではないかと思う。

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著者プロフィール

1880-1941。高知県出身の伝記作家、怪談文芸の大家。代表作に『日本怪談全集』など。

「2018年 『霊能者列伝』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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