感想・レビュー・書評

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  • 短編やインタビューや、皆川作品を愛する多くの小説家や編集者たちの寄稿文など。
    皆川博子さんにまつわる色々が詰まっていて、これは堪らない。
    読みながら、ずっとふわふわした気分だった。

    収録されている短編では、「美しき五月に」が好きだ。
    ご本人インタビューはもちろん、皆川さんと関係のある方々の寄稿文もよかった。好きな人の外堀を埋めるような感覚か。
    作品をたくさん読み込んでいる方のコメントに、これ私も分かるなあと思える喜びといったら。
    編集者たちによる編集後記も楽しかった。

    そして、すごい数の著作リストには圧倒される。
    まだまだこんなに読んだことがない本があって嬉しい。

  • 「本の雑誌」7月号で、日下三蔵氏が「小説の女王の巨大な山脈」と題して「皆川博子の十冊」を紹介している。おお、なんてタイムリーな(私には)企画、最近読んだ初期作品集「夜のアポロン」がとーっても良かったので、「死の泉」以前のものを何から読んでいこうか考え中だったのだ。どれも面白そうでワクワクするが、まずは帯に「皆川博子完全ガイド」とある本書から始めることにした。

    いやまったく、帯の惹句に偽りなし。短篇やエッセイの再録、ロングインタビュー、全著作リスト、ブックガイド、年譜などなど、みっちり濃い内容で、装幀や口絵も美しく、心から堪能した。最も強く感じたのは、ここまで多くの出版関係者から尊敬と憧れの念をこめて絶賛される作家って、他にあるんだろうかということだ。とりわけ、編集者による文章は、「あられもない」なんて言葉がちょっと浮かんでくるほどに、心酔ぶりを隠さないものばかり。いやあ、すごいなあ皆川博子。

    私が一番気に入ったのは、早川書房編集者の小塚さんが書いていたエピソード。ある作品が刊行されてまもなく、後輩から「もしかして山の上ホテルで皆川さんと打ち合わせしてました?」と尋ねられたそうだ。「友だちが、解剖と殺人事件について生き生きと話す品のいいご婦人と女性がいて、あれは作者と編集者だったんじゃないかと言うんですけど」とのことで、まさにその通り、タイトルはもちろん「開かせていただき光栄です」。ホテルでの打ち合わせを耳に挟んだ方は、さぞ驚かれただろうよ。

  • 素敵。短編1話目から胸を撃ち抜かれた。
    読んではいけない本を読んでいる気分になる。

    名だたる方々が皆川博子の作品を解説していて、ガイド本としても贅沢な本。

  • 皆川博子氏の作品世界に耽溺する身にとって、垂涎の宝物がぎっしり詰まったおもちゃ箱のような、とてつもなくゴージャスな本だこれは。
    改めて選り抜かれた珠玉の短編に加え、単行本では読むことのできないエッセイ、さらには米寿を超えられた皆川氏のこれまでの歩みの一端が濃く窺い知れるインタヴュー記事など、もちろん皆川氏から発せられた言葉もたっぷり収められている他、皆川作品あるいは皆川氏自身のキャラクターが生み出す底なしの沼地にどっぷりとハマり込んでしまった同業者であるプロの作家や編集者たちによる、あまりにも正鵠を射過ぎた賛辞がこれでもかとばかりに並んでいるのだから。
    これまで、あまりこのようなファンブックめいたものに手を出した経験はないが、そのような類書とはまったく異なる次元に立つ書籍だろうと思う。
    私は2004年刊「薔薇密室」で初めて皆川博子という作家を知り、それ以来もうずぶずぶのフリークを自認するが、歴僅か15年の私ごときを無論遥かに凌駕する先達たちの称賛を読むのはただただ気持ち良く、皆川氏の世界に対する憧憬と未読の作品に対する思慕を悉く強化するばかりだった。

    小説に限らず、クリエイターの手による作品を味わう場合、私見だが、大抵はその作者自身のパーソナリティーにまつわる情報というものはどちらかというと鑑賞の助けになるというより、邪魔になる。
    作品には感動したのに…とややがっくりくるケースも少なくはないが、皆川氏に関してはまったく逆で、なるほどこの時期の境遇があの作品を生んだのか、作風の変遷に至る裏にはそんな事情があったのか、へ~あの小説の執筆に向けてそんな下準備を、などなど、それぞれの作品を理解する、あるいは感じる上において、邪魔どころか大変有益な知識となってくれる。

    私自身が単に寡聞だったに過ぎないわけだが、皆川氏にハマり始めた最初の数年間は、なぜ皆川博子の扱いはこんなにも小さいんだろう、作品の露出が少ないんだろう、と意味不明の義憤に少々駆られていた。
    既に直木賞や柴田錬三郎賞、吉川英治文学賞などを受けられていたから、もちろん私が出遭った時点で高名な作家であったことは間違いないが、だとしても格別の本好き以外もほとんどが知っている、というところまでではなかったように感じる。
    やはり転機は2011年の「開かせていただき光栄です」になるのだろう。
    あの作品で弾けて以降、明らかに読者層は広がり、一般紙や雑誌などでお見掛けする機会も増えたように思う。
    90歳間近(!)になられても精力益々盛んに筆を進められているはずの皆川博子氏、まだまだ末永くご活躍していただきたいと、心の芯から祈念する。

  • 皆川博子のファンブック!ムック本なのに単行本風の装幀で凝っている。中身は大きく分けて三部構成。一部はご本人の短篇、エッセイからのセレクトと、最新ロングインタビュー。短篇どれも好き系のえぐめのやつで嬉しい。インタビューでは現在執筆中の次回作についても言及されており、とりあえず『アルモニカ・ディアボリカ』の続編(!)新大陸アメリカに渡ったエドとクラレンスのその後、と、後はハンザ同盟についての作品が控えているとのこと。どうか100才までも生きて書き続けて欲しい。

    二部は色んな作家さんやイラストレーターその他からのコメント等。合計39人かな?とにかく寄稿人数が膨大で、皆川ファンの多さを再認識。

    三部は解説や分析中心。東雅夫による「皆川博子を読み解くキーワード20」、日下三蔵による「皆川博子作品ガイド」などの分析、解説のほか、二部での寄稿者他に聞いた「私の愛する皆川作品3」、今までの作品を担当した編集者からの寄稿集「編集後記」、そして作品リストとバイオグラフィーももちろん収録。

    それなりに満足度は高いものの、半分以上が寄稿の類なので、他人のファンコメントよりはご本人の対談とかインタビューを増やして欲しい気はちょっとした。あとは単なる我侭だけど、長編と短編は分けて語って欲しいというか、長編については歴史的背景やキャラクター紹介的なミーハーめのコンテンツも欲しいと思ってしまう。イラスト化やコミカライズがあってもいい。全体的に真面目、な本だったので、もうちょい「ゆるめ」のコンテンツが欲しいな、と個人的には思った。

    それにしても作品リストの膨大なことよ・・・。絶版本も多いので、あれも読みたいこれも読みたいがほとんど入手できないジレンマもあり。ここ数年の再評価、ブームもあることだし、もっとどしどし復刊してくれたらいいのにな。

    ※収録
    <短篇精華>
    風/砂嵐/お七/廃兵院の青い薔薇/ひき潮/美しき五月に(宇野あきら画)/水引草
    <随筆精華>
    時代の歌/楽屋の鏡/無人島へ持っていく本『江戸語辞典』/絵と私/暗号の旅/『酩酊船』/幻想作家についての覚え書き

  • およそ9年かけて既刊を読破したので、ついに満を持して手に取りました。
    (今年刊行の『天涯図書館』は置いといて…)

    17年刊行だからか、『夜のリフレーン』『夜のアポロン』がどれだけ多数の単行本未収録作品を収録したかがよく分かる。
    それでもまだたくさん未収録作品があるって…マジで皆川先生…バケモンだな…。

    「しらない おうち」や「Fragments」など、一般には手に入らない掌編が収録されていてお得感割増。
    インタビューや皆川博子を偏愛する人々からの寄稿が収録。あの人もあの人も、皆川博子に魅了された人々。
    なんだろうな…実在する大魔女様への賛美に添えるお供え物みてえな雰囲気すらある…。

  • 皆川博子ガチ勢による皆川博子本。寄稿しているのは文字どおり「プロ」達ばかりなので、内容や熱量も濃い。いい大人たちが(自分ふくめ)こんなにも骨抜きにされていてニヤニヤしてしまう。みんな皆川先生に恋をしております…。

    氏の熱烈なファン層にとってはもちろん、自分のような皆川作品初心者にとっても贅沢な作品ガイドとしても最適な1冊。

  • 短篇7編。ロングインタビュー。随筆7編。皆川愛にあふれた作家様の寄稿や愛する皆川作品…。図書館でお借りして、毎日少しずつ堪能しましたが、やっぱり手元に置こうと購入しました。未読作品の方が多いファンと名乗るのもおこがましい私ですが、作家様の推薦本はこれからの道標にとても役に立ちそうです。なにより嬉しかったのが、怪談えほん「マイマイとナイナイ」を上梓されたとき一緒に生まれた短編「しらないおうち」が載っていたこと。限定三部で豆本を作って著者にプレゼントされたそうですが、これは是非作って一般販売してほしいです。

  • 皆川博子さんファンは必読。ファンじゃなくてもこれを読めばファンになります。ちなみに私はファンだとは思っていますが。著作の半分くらいはまだ読んでいないかもしれない……ので、あれもこれも読みたい、そして読み返したい、という思いでいっぱいになりました。でも手に入りにくいのもあるんだよな(そもそも単行本に収録されていない作品も多すぎやしませんか)……いっそ全集出していただけませんがどなたか。
    ちなみに私の皆川作品ベスト3を選ぶとしたら。「死の泉」「聖女の島」「たまご猫」かなあ。たぶん短篇にもお気に入りものすごく多いのだけれど。読んだのが昔すぎてあまり覚えていなかったりします。「死の泉」「聖女の島」も大好きだし、素晴らしかった記憶はあるけれど細部を覚えていないので。再読の楽しみがまだまだ残されているのだなあ。

  • ひい、知識が浅いとおっしゃっている…!確実に溺れるので浅瀬でぱしゃぱしゃしていたのですが、少しずつ潜ってみようと思います。「皆川博子コレクション」の存在、有難い。

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著者プロフィール

皆川博子(みながわ・ひろこ)
1930年旧朝鮮京城市生まれ。東京女子大学英文科中退。73年に「アルカディアの夏」で小説現代新人賞を受賞し、その後は、ミステリ、幻想小説、歴史小説、時代小説を主に創作を続ける。『壁 旅芝居殺人事件』で第38回日本推理作家協会賞を、『恋紅』で第95回直木賞を、『薔薇忌』で第3回柴田錬三郎賞を、『死の泉』で第32回吉川英治文学賞を、『開かせていただき光栄です―DILATED TO MEET YOU―』で第12回本格ミステリ大賞を受賞。2013年にはその功績を認められ、第16回日本ミステリー文学大賞に輝き、2015年には文化功労者に選出されるなど、第一線で活躍し続けている。

「2023年 『天涯図書館』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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