人間の解剖はサルの解剖のための鍵である

著者 :
  • 河出書房新社
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本棚登録 : 220
レビュー : 19
  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309027081

作品紹介・あらすじ

「人間」ってなんだっけ? ロボット、人工知能、ナッジ、認知バイアス、利己的遺伝子…ポストヒューマン状況に生きる私たちの診断書。

「人間の解剖は、猿の解剖のためのひとつの鍵である」……カール・マルクスの断章をタイトルに借用した本書は、もし人間から学ぶことができる猿がいたならば、その猿は人間の犯した誤りを回避できるかもしれないと考える。コペルニクス、ダーウィン、フロイトによって三度自尊心を傷つけられた人類は、進化と認知にかんする諸科学によって、いま四度目の試練に直面している。主体性と合理性が切り崩された先にある「人間の定義」とはなにか。前著『理不尽な進化』以降の諸論考を集成。稲葉振一郎、大澤真幸、橘玲、千葉雅也、山本貴光との対談・鼎談も収録。

感想・レビュー・書評

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  • 科学の進化によって、いままで人文系の学問が前提としていた「人間」のとらえ方が揺らいできている。進化論や行動経済学の知見の蓄積、人工知能の発展、功利主義の道徳化など、人間のあり方を考える上で欠かさないトピックについて、網羅しているのが本著だ。

    友だちの実験系の心理学者から人間の認知メカニズムの話を聞くと、やたらと「進化」の話になりがちで、それが不思議だった。本著を読み、いまの科学による人間理解の基礎には進化論があることがわかり、謎が解けた。

    あと、数十年前から人間活動の影響で、地球が地質学的にあらたなステージに入ったという「人新世」はショッキングな考え方だったな。

    現在、人間のあり方を考えるうえでキーとなるコンセプトをうまくまとまめて、そこから問題提起をしている一冊。おすすめ!

  • ふむ

  • 本の紹介レビューとしては星4つ。筆者の論考は星2つ。平均して星3つ。レビュー本として読めば満足できる内容。

    筆者も書いているように、独自の論考はいいところの寄せ集めにしか見えない。本として読みたいのは筆者のアイディア・視点から事実を再構築する世界観であり、そこが根本的に欠けている。

    逆に他の本の解説はとても魅力的でどれも読みたいと思わせる。筆者の本領発揮である。

  • 対談とかはハイコンテクストで何が問題になってるのかいまいち分からなかった。まあ評論なのだが、各々、専門の人からするとどうなのだろうか。

  • 認知科学(認知心理学、行動経済学、人工知能研究)と進化論(社会生物学、行動生態学、進化心理学)を中心とした評論や書評を集めたもので、ブックガイドとしての価値もある。スタンスは「読まなくていい本の読書案内」に似ており、橘氏との対談も、よくかみ合っている。

    ヘルダーは「人類歴史哲学考」において、自然だけでなく人類の歴史をも神のあらわれとみなし、自然と歴史の発展を統一的に捉えるスピノザ主義的な歴史哲学を提唱した(大村晴雄「ヘルダーとカント」)。

    神話を歴史が自然へと変換されたものとみなして分析する手法は、カントの批判哲学の継承・発展だった。18世紀の批判哲学者は、20世紀において神話学者として生まれ変わった。

    共有地の悲劇は、1968年に生物学者のG.ハーディンが資源管理の重要性を訴えるために唱えたもの。とはいえ、現実の世の中は、町内会から労働組合、国家間同盟まで、人間は種々の協力体制を考案し、維持しており、悲劇を防ぐために様々な工夫がなされている。

    人間の道徳感情は、共有地の悲劇を避けるために発達したものであるため、同じ常識を共有するグループのみ奉仕し、同じ常識を共有しないグループ外には攻撃性となって表れる。ジョシュア・グリーンは、これを常識的道徳の悲劇と呼び、問題の種類に応じて、問題が共有地の悲劇に関わるものなら、感情の道徳的直観に従い、常識的道徳の悲劇に関わるものなら、思考を理性に切り替える二つのモードで対応することを提案する(モラル・トライブズ)。

  • 道徳心理学の原理
    ・まず直感、それから戦略的な思考。
    乗り手(思考)は象(直感)に使える召使い

    昔流行った未来学、今は通信の延長に未来を想像する
    人が作ったAIが残ることは人類滅亡と言わないのでは
    進化論ではなくダーウィンは適者が生き残る

  • 人文書に関する記事がまとまった雑誌みたいな本。

  • 人間とは、の考察の原点から最新情報をおしえてくれる本。
    読みたい本がひたすら増えた。

  • 2018年11月読了。
    日経ビジネスで小田嶋隆さんが紹介していたので読んだ。
    哲学書。
    冒頭で「現在生じている人間観の変容に関する調査報告である」とことわられているように、これまでの人間に対する捉え方が通用しなくなりつつあるということに、少しく思いを致す一冊。
    普段読みつけないジャンルの図書であるためか、
    読み終わるまでだいぶ時間を要した。
    「思考を飛躍させる」、「思考を掘り下げる」とか「思考の幅を広げる」ためには、今まで所与の前提としていた物事にこそメスを入れるようなことが必要だなと思った。

  • 意外と面白い本だった。
    哲学寄りのサイエンス系の一般読み物だが、自然科学の最新の知見が迫る哲学の更新について強調しており、特に進化論によるパラダイム転換を打ち出す。
    著者が科学者でないということもあって科学的知識に関してはさほど深く詳述されていない印象。むしろ包括的な概論であり、入門書的である。後半に新しい科学の成果をさぐる読書案内として活用できるブックレビューがあり、どれも面白そうで、読んでみたいと思った。ドーキンスの「利己的な遺伝子」も、あまりにも有名なためおおよその内容を先に知ってしまい読まずに済ませてしまった本も、やはり読んでおくべきと感じた。
    そのようなブックガイドとして、知の道案内として有益な本だと思う。

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著者プロフィール

1972年生まれ。慶應義塾大学総合政策学部卒業。国書刊行会、ヤフーを経て、文筆業。
関心領域は哲学、卓球、犬猫鳥、単車など。著書に『理不尽な進化』(朝日出版社)、
『人間の解剖はサルの解剖のための鍵である』(河出書房新社)、
『問題がモンダイなのだ』(山本貴光との共著、ちくまプリマー新書)、
『脳がわかれば心がわかるか』(山本との共著、『心脳問題』の増補改訂版)などがある。
訳書にジョン・R・ サール『MiND』(山本との共訳、ちくま学芸文庫)など。「哲学の劇場」主宰。

「2020年 『その悩み、エピクテトスなら、こう言うね。』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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